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終焉のアルス・ノトリア ~天使の守護者~  作者: 七坂綾人
第一章 二人の食卓、謎の美少女
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1-1 起床

 

side-A



「……うぅん」


 目覚ましの音で目を覚ます。時計の針は朝の六時半を指していた。

 まだ目を半分閉じたまま体を起こすと、ベッドからのっそりと立ち上がる。


 目覚めは悪くない。だが、なぜか胸にぽっかりと穴の空いたような虚しい気分だった。この広いマンションの一室に、一人で住んでいるせいかもしれない。

 しかしそれも今さらだ。一人を寂しがるような歳でもない。


 朝食はいつも通り簡単に済ませた。食パンと野菜ジュース、スクランブルエッグとウインナー。味気ない食事を終えると、制服に着替える。

 そして学校へ行く支度を終えると、マンションを後にした。



 外へ出るなり、俺を待っていた小柄な女の子と目があった。


「おはよう、悠一。今日はいつもの時間より早いわね。何か良い事でもあったのかしら?」


 彼女はにやりと微笑むとそう言った。大人びていて知性を感じさせる声だ。


「うっす、彩華(さいか)。別に何もねえよ」


 すると彩華は、その長い黒髪を靡かせて、上品な微笑を浮かべる。


「あら、それじゃあ私と一緒に登校するのが待ち遠しかったのかしら?」


「はっ、まさか。単に早く準備出来ただけだ。それより、律義に待ち合わせの時間より早く待ってたお前こそ、この俺との登校を楽しみにしてたんじゃないのか?」


「それこそまさかね。妄想もいい加減にしなさい。むしろ、遅れても置いて行かずに気長に待つ私の健気さに土下座して感涙してほしいくらいだわ」


「朝に弱いんだから仕方ないだろ。大体、俺だっていつも待ち合わせの十分以内には来てるんだ。お前は細か過ぎる」


「人生の時間には限りがあるわ。貴重な時間をあなたに一分でも費やすのは惜しいのよ」


「それなら彩華が起こしに来てくれるか? 歓迎するぞ?」


「馬鹿言わないで。どうして女に飢えたケダモノの巣窟に私が入らないといけないの?」


「だれがケダモノだ」


「それに、私は別にあなたが時間にルーズなことを責めているわけじゃないわ。私はあなたのその自惚れた思考を訂正しただけよ」


「自惚れてるのはお互い様だろ」


 相変わらず口の達者な奴だ。しかも負けず嫌いで口が悪い。美少女なのが勿体ないくらいだ。だがそんな彩華の性格にもとっくに慣れた。今ではこのやり取りも含めて朝の挨拶みたいなものだ。


 軽口を叩き合いながら彩華と一緒に学校へと向かう。

 彩華はとても背が小さい。そして胸も小さい。俺と同級生なのだが、並んで歩いていてもそうは見えない。中学生どころか小学生と言われても違和感がない。


「……なに?」


「いや、何でもない」


「本当に? あなたの視線が私の胸にいっていたように見えたのだけれど」


 彩華は自分のまな板のような胸に視線を落とす。やはり体型のことになると鋭い。


「気のせいだ。存在しないものを見ることは出来ないだろ?」


「悠一、あなた死にたいの?」


 殺気を感じて思わず首を横に振る。


「そ、それにしても、今日は良い天気だなぁ……」


「わざとらしい……」


 あからさまに話題を逸らすと、彩華はジト目で俺を睨む。が、結局、呆れたように溜め息を付かれるだけに留まる。

 危ない、危ない。あまりからかうのはよそう。お互いに深いダメージを負いそうだ。


 

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