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学舎占争  作者: 伏見 ねきつ
9月
49/49

〆 下弦夜月

 そこからツインテールの少女がとった行動は一瞬だった。目の前で校章を持っている柚樹の腕をつかみ、無理やり自分の方に引き寄せて(ここら辺から俺はふたりに向かって走っている)校章を奪い取り柚樹の手にそのままキスをした。


「な」


 ツインテールの少女がキスをしたところから柚樹は消えていく。


「柚樹っ!」


 俺は柚樹に向かって手を伸ばす。


「夜月く」


 キスをされた方と反対の手を掴もうとしたが柚樹はあとかたもなく消えてしまった。掴むところがなくなった手は虚しく宙に浮いたままである。

 ………見えないだけか? いや、本当に消えてしまったのだろうか。これは、なんだ? 人間を消す能力? あとかたもなく? 柚樹は? 今の騒動をきいてか周りに集まってくる人。人。人。周りなんか見てる場合じゃない。柚、柚樹が。こういう時は、どうしたらいいんだ? まず、まず? まずい、今、何が起こってる? 次は俺? この少女に消されてしまうのだろうか? そうしたら柚樹に会える? それならば悪くないかもしれない────


「あーあ」


 ツインテールの少女はつまらなそうに呟いた。

 そのつぶやきに俺は怒りを覚える。


「お前っ────」


「校章」


「は?」


「葉月高校の生徒なら持ってるでしょ。あんたが葉月高校の一般生徒なら手出しはできない」


「柚樹は」


「ユズキ? ……ああ今の」ツインテールの少女は非常に興味が無いように呟いて、周りを見渡した。「とりあえず移動しよう」


「移動ってお前柚────」


「お前の恋人はここにまだいる。騒ぎになる前にとりあえず逃げようって言ってんの」


「………………………………………わかった」


 俺は柚樹がまだいるときいて、彼女の言われるがままに動くことにした。多分、今の柚樹は人質状態だろうから逆らうわけにはいかない。ツインテールの少女と俺は人混みをかき分けて逃げるように裏路地に入っていく。……警察とか呼ばれていなければ良いけれど。いや、俺としては警察が動いてくれていた方がいいのか……。この学舎占争内では警察はどうなっているのだろうか。そもそもこの丘には警察なんかよりも強い権力の持ち主がいるのだろうか? ……いや、いなくても権力者12人揃っていたら大きな存在になりえる?

 今度満月にでもきいてみるか、と思考を放り投げた所で短い足を動かしてハイスピードで移動していたツインテールの少女が止まった。

 目の前に公園がある。


「まず、さっきも言ったけれど校章をみせて」


 そう言われて素直に俺は校章を取り出して彼女に投げる。投げるような距離ではなかったけれど、彼女の能力がよく分からないうちは近づかない方がいいと判断したからレディの扱いではないだろうが許して欲しい。

 ツインテールの少女は一切の迷いもなくそれを受け取ることなく避けて、少し先で落ちたやつを拾ってひと目確認して自分のスカートのポケットの中に入れた。返せと言おうとしたけれど一般生徒の俺にとっては校章なんていくらでも貰えるものだからとりあえずそのままにしておくことにする。

 彼女は公園の中へと足を踏み入れていってブランコに座った。俺はブランコを囲う棒に座ることにした。

 この侵入防止用のやつであろうこれは何のためにあるのだろうか…? なんて思いながら。


「まず、私にはユズキとかいう人を戻すことは出来ない」


「は?」


「だから助けを呼んだ。その人なら彼女を戻すことが出来る。……だからその人が来るまでの時間話をしよう。こちらからの彼女を戻す条件は以上。いいよね?」


 その状況で断る権利なんてそもそもないだろう。

 ツインテールの少女は、話をきかせてくれないのならば柚樹を戻すつもりは無いしなんなら加勢もすぐくるからお前も潰してやる、と交渉してる風にして脅しに俺にかけてきたのだから。………まあ、すっかり忘れていたが彼女が葉月高校の優良生徒ならばそもそもの話敵ではない筈だし、俺が知ってることなんて1パーセントにも満たないから断る理由もない、と。


「ここから先、YesかNoで答えて」


 彼女は俺の無言を肯定と受け取ったようだ。


「わかった」


「まず、貴方は私が何に関わってるか予測ついてる?」


「yes」


「学舎占争って知ってる?」


「yes」


「貴方は優良生徒?」


「no」


「貴方は劣等?」


「no」


「一般生徒?」


「yes」


「ユズキが優良生徒だということは知ってる?」


「yes」


「彼女から話を聞いた?」


「no」


「ふうん」


 ツインテールの少女はまたつまらなそうに呟いて小さな声で「庇うんだね」といった。

 実際のところ庇ってないし付き合ってもないのだが変な風に解釈してくれたのならばそれはそれでいい。YESかNOしか答えられないのだからバカ真面目に事実を補足する必要は無いだろう。


「あんた何年生?」


 YESかNOで答えろと言われているのに答えられない質問をされた。これは困る。


「…二年」


「私三年生、葉月高校の優良生徒」


「へえ…」


 ということはつまり優良生徒は各学校に三人ということならば、葉月、雛そしてツインテールの彼女で葉月高校の優良生徒全員って事か。彼女が嘘をついていなければ、だが。彼女が葉月高校の生徒で、その生徒が偶然校章を落として、偶然俺と柚樹がいて、偶然こんな感じになっているとしたらどんな運命か。


「あんた名前は?」


「ん?」


「あんたの名前」


「夜月とでも呼んでくれ」


「イヅキ、ふうん」彼女はまたきいてきたくせに興味がなさそうに呟いた。「私の名前は彩斗、朧月彩斗」


 これから宜しくするかもしれないからよろしくね。と手を差し出されたが俺はその手を握らなかった。

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