〆 下弦夜月
前回までのあらすじ。俺と柚樹はファーストフード店で優雅に午後のティータイムをしていたのだが、なんだか外に必死に何かを探しているツインテールの女の子がいたので様子を見に行くことにした。以上。……で俺も前回までの内容を思い出すことが出来ました、とさ。メタ発言は賛否両論があるらしいけれど、内容覚えてる人いないだろうから説明した方がいいと俺は思うんだよなあ。
というガチメタ発言はおいて、閑話休題。
ありがとうございましたー! と可愛いお姉さんのスマイルとともに外に送り出された俺と柚樹は探し物をしている彼女にすぐ声をかけるわけではなく、その子が落としたであろうものを目で先に探すことにした。理由としては勝利した優良生徒として顔バレしている柚樹を引き連れているわけだし、制服を着ている高校生だったら優良生徒の可能性があるので、急に声をかけるのはやめるという判断を下した。なにかあったらただの人間である俺では対抗できないから…。
「夜月くん」
通行人A . Bの振りをして通り過ぎながらナニカを目で探していたら柚樹が声をかけてきた。何かを見つけたのかもしれない。
「あそこのお店美味しそうだわ」
「ああ…パンケーキ屋? 確かに美味しそうだな……………って違う! もう俺のしようとしてることに少し興味を持ってくれ」
「え? 嫌よ、ほかの女のことなんて興味ないわ」
「恋人みたいな言い方! 図々しい!」
「酷いわ…あそこまでやっておいて……」
「なんの話!?」
どこまでやったことになってるんだかしらないけれど、俺は柚樹と勉強くらいしか一緒にやってない。本当、本当だから。柚樹が楽しそうなのはいいけれど、俺じゃなくてもっといい人を見つけるべきだと思うんだよなあ。神無月高校でいい人見つけられればそれでいいんだけど。いつまでも、葉月高校に依存してるのはこれから先良いことないだろう。……彼女の幸せは彼女が決めるものだけれども。
今はそのことじゃなくて、困ってる目の前の女の子のことだ。
「夜月くん」
「美味しそうなお店は今度行こうな」
「じゃなくて、あの子校章つけてないわ」
「ん……? いわれてみれば」
言われて、彼女の制服をみる。確かに校章はついていない。……でもしかし、この時期ブレザーを着ていない生徒がほとんどだから校章なんてつけてないだろう………。という俺も夏の間はなにかの儀式でもない限り校章なんかつけない。
あたりまえだがそれが優良生徒の判断材料だなんて一般生徒は知らないのだから、無くしたら怒られるめんどくさいやつ。くらいの認識だろう。だから付けてるやつの方が今の時期少ない……だから校章なんていうすぐにバレそうなもので優良生徒が生き残れているのだろうな。
「まあこの時期なら校章は」
「でも夜月くん」
「なんだよ」
「パンケーキ屋今度行くっていつ?」
「なんのでもだよ! 流れ的に校章の話だっただろ!?」
「あら私にとってはそっちの方が大切よ? 次のデートの約束だもの」
ふふんと笑って柚樹がいった。
デート、デートなあ。生まれてこの方したことないけれど、何をするものなのだろうか。普通に遊ぶのと何が違うのだろう? こういうこと言ってると全国の女性の反感を買いそうだ。
「そう、夜月くん」柚樹がパンケーキ屋から目線をそらしていった。「そこに葉月高校の校章がおちてるのよね」
「葉月?」
「そう、私立葉月高校の校章」
「俺の?」
そう思って俺はカバンの中身を漁る。
「それはないわ、さっき私が奪っておいたもの」
「マジかよ」
「嘘よ、バックの内ポケットの左側に入ってるはずだわ」
いやそれはそれで気持ち悪いんだが。なんで知ってるんだよ。優良生徒特有の校章が透けて見える能力とかそういうものがあるのか? ないよな? あったらというかそんなもの出来たら学舎占争なんてしないもんな? というか出来ても使わないというルールができそう……。上の方々は何を考えてるんだか。……今更考えても仕方ないか。頭がいい人たちの考えは俺には不可解だ。
「あれが彼女の校章だとしたら、関係者だという確率か高いよな」
「マヌケね」
「俺がか? 考えが安直すぎるっていう…」
「夜月くんが間抜けなのはいまにはじまったことじゃないじゃない。今からわざわざ夜月くんに伝えないわ」柚樹は俺の腕に手を回しながらいう。「彼女が学舎占争の関係者だとしたらマヌケよねって話よ」
9月といえど腕に絡みつかれたら暑いのだが。ブラックジョークかもしれないが無理にはなそうとすると腕を掴まれて爆破するかもしれないので、ほっとくことにする。柚樹が恋人ごっこしたいのならばそれでいいだろう……。腕なんかいろんな人と組んできたしな、別に恋人の儀式でもないし。
……確かに、優良生徒にしてはマヌケかもしれない。マヌケだからこそ必死に探してるのかもしれないが。
「他校でいるのか知らないけど、恋人同士で校章交換してるやついるらしいしな。普通に恋人の校章を落として探してるだけなのかもしれない」
「まあ、私が拾ってあげればわかるんじゃない…?」
「そんな危険な」
俺が言い切らないうちに柚樹はあっさり組んでいた腕を離れて、校章が落ちてる方向へとまっすぐ歩いて行ってしまった。俺はついていこうかと迷ったがふたり固まっていたらいざというとき共倒れしてしまうかもしれないので一般人に紛れて柚樹を見守ることにした。………何かあったら走って間に合う距離に。
柚樹は探し物をしている女の子に目もくれずに校章だけを見ながらずかずか歩いていく。流石に急に至近距離を歩いてくる人がいて驚いたのかツインテールの少女は顔を上げた。ツインテールの少女からそこまで離れていない距離に校章は落ちており、柚樹は校章を拾い上げる。握らないように指先で校章を持ち上げ、それを柚樹は眺める。それをみていたツインテールの少女が何か声を発そうとする前に割り込んで柚樹は非常に興味がなさそうにツインテールの少女に話しかけた。
「長月高校の生徒さん、貴女、葉月高校の優良生徒?」




