〆 月立葉月
恋愛ものの小説は良い暇潰しになる。
と私は思う。小説を読むことによって暇潰しになるし恋愛もの独特のドキドキ感やハラハラ感を適度に感じることができる。これは暇潰しとしては最高級なのではないのか? 私は小説をたまに読むのだけれどもそれは決まって恋愛小説で、他のジャンルをあまり読まない。だからと言って今はやりのケータイ小説を読む訳ではなく、純粋な恋愛小説家がかいた作品を読む。一時期はその小説家に一日、いや、それ以上の時間を裂いて読み耽った事もある。それは暇潰しの域を越えていて、もはや、中毒なんじゃないかとか思ったりするけれど………。
「やあ、葉月ちゃん」
「私をこの場所でその名を使って呼ばないでください」
私は後ろから聞こえてきた声に椅子を動かすことなく、そして後ろを見ることもなく答えた。両手はパソコンを操作している。
私のことを呼んできたのは粗蕋抄夜。見るまでもなく、わかる。
「じゃあ、何て呼べばいいのさ」
「私を呼ばなければいいんですよ」
「じゃあ、君って呼ぶけど」
私はどうぞお好きに。と答えて仕方がないので後ろを見た。そこには私の許可もなく椅子に座っている粗蕋抄夜がいて、私の方を見ることもなく片手でケータイをずっと操作している。
話しかけておいてケータイをやっているとは何様だ、とか思うけれど私の寛大な心で何もつっこまずに、何のようですか。と粗蕋抄夜に尋ねた。
「君、明日暇?」
「貴方ほど暇ではありません」
「じゃあ暇なんだね。本当は君にバレないようにストーカーをするつもりだったんだけど、雛ちゃんが松葉杖じゃない? だから歩くのがはやい君に雛ちゃんがついていけるような気がしないからいっそもてなして貰おうと思ってさ。ああ、大丈夫、副委員長は来ないから」
「…………」
あまりよくない予感がする。予感とかなんやらではなく、ここまで言われたらもう何を言いたいのか誰にでもわかるであろう。
「明日、雛ちゃんと一緒にここにくるね?」
「駄目です」
私は即答をした。
「君、元々は雛ちゃんを君側に引き摺り込もうとしてたんだよね? それを今さら駄目とかむしが良すぎると思わない?」
「…………」
「だから君はこれを断る権利は存在しない」
「思いません」
それとこれは別だ。私は月籠雛についてはもう諦めた話で今更蒸し返されても困る。そして、その内必要になったら月籠雛を私の方へ引き摺り込んでやろうと思っているのでこの現時点でこれをする必要はない。
「……ふうん、まあいいや」粗蕋抄夜はケータイの画面を見ながら興味無さげに呟いた。「僕は勝手に雛ちゃんをつれてくるよ、君が案内するしない関係なく、ね」
そういって粗蕋抄夜はケータイを閉まって席から立ち上がって扉に手をかけてから言った。
「君、葉月高校の制服よりその制服の方が似合ってると思うよ、セーラー服」
「………ありがとうございます」
私は嫌味であろう言葉に対して冷たい返事を返す。そんな返事に粗蕋抄夜は何の反応もせずに扉を開けて出ていこうとし、最後に思い出したかのように私の方をみてこう言った。
「じゃあね、睦月高校の優良生徒さん」
「さよなら、邪魔者さん」
そう私は、睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、師走とならぶ一連の高校の一番上に位置していて学舎占争には参加していなくて優良生徒がいない筈の高校の優良生徒。
私は存在しない筈の人間。




