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学舎占争  作者: 伏見 ねきつ
8月
29/49

〆 月立葉月

一日遅れてしまいました! 申し訳ございません!


「というわけなんだよ、葉月ちゃん」


 朝、雛先輩が私の教室の前で待っていたから何事かと思って場所を人気のない階段辺りに移動してから話をきいてみると比較的どうでもよい話題であった。内容をざっくばらんに言うと、夜月先輩が優秀生徒と知り合いである。と言うことと夜月先輩がその優秀生徒に交渉を自らしようとしている、困った。という内容で、私としてはのろけ話をきいているような気分になったのは言うまでもない。


「……ポピー先輩は、どうしたいのですか?」


「んー……………」雛先輩は悩むような動作をした。「僕が全部やるべきだと思うんだよね」


「でも、ポピー先輩も私も相手には優秀生徒だとバレているでしょうから、交渉? でしたっけをするのは困難かと思いますよ」


 私がそういうと雛先輩は目を伏せた。そんなに夜月先輩を巻き込みたくないのか? 私としては、死んで困るのは雛先輩の方なので夜月先輩にやって欲しいものなのだが……。これはどうにか煙に巻いて、夜月先輩がやるように私が雛先輩に言うしか無さそうである。


「これはやはり、夜月先輩にやってもらうしかないでしょう」


「校章の交渉を?」


「そうです、校章の交渉をです」


「交渉の校章を?」


「訳がわかりません。夜月先輩の事がどうしても心配ならば護衛がつけば良いのです」


「でも僕だけじゃ―――」


「私と雛先輩です」私は少しだけ間を開けた。「私ならば敵をよっぽどの事がない限り百パーセント操ることが出来ますし、雛先輩は本気で守りたいと思うならば自分の声を録音した物を夜月先輩にでも渡しておけばすぐさま動くことが出来るようになります………その場合はヒーリングソングがいいですかね」


「そんな手が………」


 雛先輩は驚き且つ、感嘆且つ、沈んだ声を出した。驚きの声はきっと私が作戦に参加することに対する驚きで、感嘆は録音についての感嘆で、沈んだ声はその使い方が思い付かなかったことに対してであろう。しかし、その録音した声が有効かどうかはやってみないとわからない。

 昔、私が自分の声を録音して人にきかせたときは有効だったので同系統の能力である雛先輩ならばきっと有効であろう。


「というか、葉月ちゃんは人を操れるんだから君がやればいいのに」


「私は私で、忙しいんです」


「言い訳になってないよ」


 言わなければ分からないようなことを。私が人を操れるから私がやる、なるほど何も間違いはないであろう。しかし、私はそういうことに直接関与するわけにはいかない。自分が定めたルールとかそういうわけではなく、そういう決まりなのである。のほほんと過ごしている葉月高校の生徒には到底わからないであろう、ルール。

 ルールは守るためにもあるし、守られるためにもある。故に守らなければならない。

 人権も何もない優良生徒(雛先輩がよく皮肉る言葉である)が人を守るためにある筈のルールに重きを置いているのは不思議な話ではあるが。いや、優良生徒の場合でも一応は人を守るためにあるルールなのか。じゃあ、私()()は…………?


「とにかく、私がやるわけにはいきません」


「……………ふーん」


 雛先輩は気のない返事をして松葉杖を中心にあわせて持ってから背中を壁に滑らせるようにしてしゃがんだ、というより座った。先程から階段付近で立ち話をしていたのだが、疲れたのであろう。その足で座ると言うことは私から逃げるつもりがないと言うことで、つまりは信用をある程度されている、と。悪くない。


「それにポピー先輩と夜月先輩がどの程度使えるかのテストとして私達ならばスルーしてもいい他校の優良生徒を相手しているのです」


「スルーしてもいい?」


「劣等達がどうにかする予定だった物を私がお借りしたのです」


「劣等……?」


「えっと……優良生徒にならなかった生徒の蔑称です。優良生徒として学校に招待され、断ったが中身まで知ってしまった生徒の一部が学校に雇われ学校に侵入している優良生徒、ないし、優良生徒を監視している」


「ああ………きいたことある」


「その仕事自体に命の危険はないので優良生徒にならなかった劣等達はその辺に落ち着きます」


 それ以外の優良生徒にならなかった生徒は卒業までこの丘の生徒としてすごす、と。

 その学校にいる優良生徒ではない人たちならばこの事を早く解決させていたであろうけれど、まあ、私は葉月高校のために働くが守りはしない。本心のところでは雛先輩には是非とも葉月高校を裏切ってほしいのだが、そうでないのならば私の個人的な感情を抜きにして雛先輩の安全やら生死やら関係がない。私は淡白であるべきなのだ。


「そんな話はきいたことがあるよ。まー、僕達優良生徒を監視すべきその、劣等…? だっけとは会うことがないだろうからそんなに気にしたことはなかったけれど」


「劣等生徒は優良生徒より優良なのです、とだけいっておきましょう」私は階段の端に座ることにした。「さて、其柯柚樹が優良生徒だというのならば作戦をたてなければなりませんね」


「作戦ね」


「策士は策に溺れる。そんな言葉無能が言う言葉です、策に溺れたのはその策が不完全だったからに違いない、つまり自分が悪い。ならば、策に溺れないようにはどうすれば良いか? それは簡単です。そんなことにはならないように―――」


「策士にはならない」


「ご名答、というより未来余地に近かったですよ、ポピー先輩。では、策を組まないように策組みに洒落込みましょう」


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