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学舎占争  作者: 伏見 ねきつ
7月
12/49

〆 下弦夜月

この辺から時間系列をきにしてくれると楽しく読めるのではないかと!

ぼくは! 信じている!

 時差が素晴らしく長くて申し訳ないのだが、昼休み。

 俺は、購買と言う名の、校内にあるコンビニエンスなコンビニストアこと、スーパーストアにいた。雛が昼御飯を持ってきていないというので「買ってやるから食えよ」といったら、雛が滅茶苦茶ムカつく顔をしながら「いらないもん、べぇえ!」といったので、俺は、珍しくとてもムカつき、意地になって勝手に買いに来ている。という、とても下らない現状である。

 雛は無駄にパン類が好きだった記憶があるので、ヤバイ感じに甘そうなパンを手に取りレジに並んでいるのだが、それはもう、混んでる混んでる。昼休みの購買はすごく混雑する、という鉄板は知っていたが、流石にこんなに混雑しているとは思いもしなかった。並んでいるのが生徒だけなので調子に乗った馬鹿が割り込みをしたりするし、色々最悪だ。

 あぁ、もう、その場の感情で動かなければよかった。と今になって後悔しても遅いのだろう。

 人間の滝に流され、流され、流され流され。どうにかたどり着いたのは、髪を一つに結んでいるいかにも貧相そうな(どの部分が? とか、聞くなよ?)女子がやっているレジだった。確か、この売店には生徒を雇う、救済制度のようなものがあったので、多分、ここの生徒なのだろう。学年で多分見たことがある。

 俺はヤバげなパンをレジに出して、元から出しておいた小銭を台の上に置いた。貧相な店員さんはパンを手にとってレジに打ち込んだ後(古風)にぼそりと何かを呟いた。


「…え?」


「……甘いの、食べるん、で――」


 後半のほうが聞き取れなかったが、多分「ですね」だったので会話に支障はないと思い、聞き返すことはしなかった。


「あー、いや」俺は、頭を軽く掻いてから答えた。「俺のじゃなくて、友達の分」


「あ、そうなんで――」


 彼女はそう言って、顔をあげてにこりと愛想がよさげな顔で笑った。声が小さい割には笑顔は素敵である。どこかの性格の悪いにこにこ笑っているやつとは大間違いだ。

 彼女から、パンを受け取ると彼女は「ありがとうごさいました」と長く丁寧にお辞儀をした。もしかしたら、この無駄に丁寧な対応がレジを詰まらせている原因なのかもしれない。こんなに混んでいる購買では接客態度よりスピードの方が大切であろうけれど、この店の店長(ぬし)は接客重視なのだろうか? ならば、方針が明らかに間違えているだろうから、変えた方が良い。

 俺は、ありがとう。といってパンを受けとり、人の波という名の戦場を潜り抜けて購買を抜け出した。ケータイを使って時間を確認すると、思ったより時間が経っていなかった。これなら、食べるのが遅い雛でも流石に食べ終わるだろう。この、ヤバげに甘い物体を食べきれるかは別の問題だが。甘さに溺れ死ぬがよい。

 そういや、雛はケータイを持っているのだろうか? いや、普通に学校に通ってる雛だったらそりゃ持っていないだろうけれど、学舎占争の物として持っているだろう。と、俺は考えたのだがどうだろうか? 雛は何かと連絡がつかなくてめんどくさい。糸電話でも伝書鳩でも何でもいいから、八割ぐらい連絡がつく何かが欲しい。そりゃ、昔だったらケータイなんていうものが無くても全然よかったのかもしれないけれど、現代の残念な社会では何でもかんでもケータイという閉じた世界で決める癖がどうやらあるようで。それで、決まったことを雛に伝えようとしてもわざわざ雛の家まで走っていかなくてはならなかったりする。中学まではそれでケータイで決める回数が多かったわけではないのでそこまで苦痛ではなかったが、高校生活を味わった限り、打上の連絡やらイベント事の練習時間まで、更には学校があるかないかまで、ケータイで伝えられる。それを全て雛に伝えるのはちょっとばかし、無理な話になってきている。というわけだ。

 俺が、最近一番驚いたのは「×××で伝えたでしょ」という最近流行っているケータイツールで伝えた。と怒り気味にクラスの女子が言った事である。それをやっていない人間には一切伝わっていない筈なのに然も、全員に伝えたかのように悠々と語るあの姿に多少のイラつきを感じたのを覚えている。

 見えている世界が狭すぎて周囲の少数派の人間のことなんて見えちゃいない。

 人間の残念な性質だ。

 俺には俺のストーリーがあり、また、雛にも雛のストーリーがある。クラスの女子にもストーリーがあり、知らない人にもストーリーがある。俺の知らないところでもその人は生きている。共有している僅かな時間で人間はその人の事を理解したと簡単に勘違いをする。

 例えば、選挙ポスター。

 俺達は、それを見ただけで名前を知り、やりたいことを表面上であるが、知る。それで、何となく、その人がわかったつもりになるだろう。それは確かにその人間を知っていることになるだろう。だがしかし、逆に言えばその事しか知らない。名前と年齢、そして、見た目。それ以外の何を知っているというのだろうか? 趣味は? 生まれた場所は? 少年時代は? 財産は? 何処に住んでいる、何を食べている、何を求めてる、何を思っている、恋人、家族、過去、今、友人友達知り合い他人見知らぬ人? 全て知らない。

 つまり、分かっているつもりの友人のことなんて何一つわかっちゃいない。

 秘密を共有する?

 なんだそれ。

 んなもん、豚にでも食わせておけ。

 だから、人間という弱い、愚かな人間は自分の知らない事、言わば、秘密が怖いのである。今も、俺の陰口が教室で飛び交っているのかも知れないと考えると、背筋が凍る。冷えきって震える。夜に震える鳥の雛のように。

 俺は、甘そうなパンを片手に持ちながら、階段をのぼろうと、段差に足をかけた刹那に上から、軽い踏み鳴らす音が聞こえた。その音に触発されて俺は、上を見上げた。

 そこには、制服を着た女子が薄い目で見下ろしながら俺の事をじっと見つめてきていた。髪は、セミロングぐらいで左右は編み込みをしている。不自然じゃない程度にうねっている髪が光に反射して、幻想的にすら見える。


「夜月先輩。貴方は何ができますか?」


 只でさえ、声が響く場所で歌うような声を出す女子はカツカツと音を鳴らしながら一段ずつ階段を降りてきた。その、妖艶的にも見える姿をみて、サキュバスを思い出しながらも俺の中では先日、ピンぼけした写真で見た顔を思い出していた。月立葉月。確か、そんな名前だった筈。学舎占争の参加者であり、数ヵ月で元の学校(こうこう)に帰ってきた、ある意味の異端者。

 何も答えない俺をみて、彼女は眉を潜めた。


「……どうして、初対面の筈なのにそんなに訝しげな目で見るんですか」


「………いや――」


 初対面の人に顔と名前を知られていたら驚くよ。と言おうとした所で彼女は、上から言葉を重ねるようにしていい放った。


「貴方は、次の生徒会長になるのではないかと、噂をされているのですよ? 品行方正の夜月先輩。いえ、次期生徒会長」


「夜月先輩でいいよ」俺は、少し言葉をつまらせながら呟いた。「次期生徒会長って呼ばれるような、善良の行為なんてしたことないからさ」


「貴方がそう呼ばれるような行動を取ったことがあるならば貴方はそうと呼ばれるべき存在なのですよ。そんなに、謙遜しないで下さい」


「謙遜? 謙遜って言葉はそれなりの実力を持っている人に対して使う言葉だよ、月立葉月さん」


 謙遜なんて言葉が使える人間なんて、粗蕋抄夜か姉かあいつぐらいしか知らない。広く見ても、満月がそれに含まれるか否かぐらいである。


「あれ」彼女は嬉しそうに笑った。「私の名前、知っているんですね。ふふふ、どの辺りまで調べたのでしょう? 雛先輩のためにどこまで、危険な情報を得たのでしょうか?」


「転校してきた生徒の名前は覚えてる」


「それだけじゃないでしょう?」


「それだけだよ、君と俺の関係は」


「それだけじゃないでしょう?」


 妖艶な笑みで近づいてきた彼女は、俺の顔のすぐ近くでそう言いった。

 ………なんだろう、この、思考が鈍る感じは。薬物を吸ったあとみたいな、強いアロマを嗅いだ後みたいな、うわんうわんと脳が揺さぶられる、吐き気を催す気持ち悪い感じ。


「それだけじゃないとしたら?」


「さて、どうするんでしょうね? 私、今、とある方にデートのお誘いを断られて傷ついているんで慰めてもらいましょうかね?」


「戯言はよしてくれよ」


「結構、本心でしたのに」


 残念です。と、彼女は言ってため息をついた。

 まず、この変な感じは何か考えてみよう。それが、先決だ。

 先程、アロマやら麻薬やらと考えたが、別段、彼女から変な匂いがするわけではない。別に、鼻が良いわけではない俺からすれば無臭である。無臭で人を酔わせる事が出来るならば、それはもう超能力か何かだろう。………あ? 超能力? 超能力。確か、学舎占争の参加者はオール超能力の持ち主じゃなかったか? 思考を鈍らせる超能力………? 考えれば考えるほど馬鹿馬鹿しくなってきたが、そんな能力が彼女にはあったと仮定しよう。Extrasensory Perception(ESP)に分類される物、だとして。

 因みに、ESPとは予知能力や読心術、第六感などを指し示すもので、Psychokinesis(PK)が少年漫画に出てくるようなサイコキネシス、超能力や念動力の事を指し示すらしい。

 彼女が、そんな現実離れした能力を何らかの方法で使っているのだとしたら俺の身が危ないに違いない。彼女の言った通り、危険な情報に手を出してしまったのかもしれないな。そんな、能力の対処法なんて知ったこっちゃない。いや、まず、あるのか? そんな、反則でしかない能力の対処法方が。何をどうやってどうなってそうなっているのかすらわからないのに、それを防ごうとするなんて暗中模索も甚だしい。


「先輩は、内臓籖サバイバル・ロッタリーって知ってますか?」


「……? 知ってるけど」


 そんなことを、今聞いてどうしようというのだろうか? サバイバル・ロッタリーとは、確か、ジョン・ハリスの「人を殺して、それより多くの人を助けるのはよいことだろうか」とかいう物だったように記憶しているが。………それが、どうしたというのだろうか?


「知ってるんですか? 珍しいですね」


 と、彼女は意外そうに首を傾げながら俺の顔を見て言ってきた。首を傾げたときに黒い髪が肩から滑り落ちて光の反射具合が変わる。


「そうか?」


 公然の知識だと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。じゃあ、一般常識ってどの辺りまでなんだ? ヘンペルの鴉、悪魔の証明ぐらいか? 色々な知識を知っていても良いとは思うが、それはたまに、嫌味にしかならないからな。ぼくは、頭がいいんですよ、貴方とは住んでいるところが違うんですよー。っていう嫌みったらしい意思表示にしかならない。


「知っているなら、都合がいいです。説明をする手間が無くなりますし」


「そりゃどうも」


「私達が参加しているそれは、そんなものなんです」


 参加しているそれとは、学舎占争の事なのだろう。直接、学舎占争と言わないのは、その言葉(ワード)自体が機密みたいなものだから。世間一般では、別の名が一応ついている。


「学校側は、学校を守りたい。それには、絶対に逆らえない機関がある。一人、生徒を差し出すんです。全体の治安維持のために」


「……?」


「私は、ソレです」


 どういうことだろうか? 学舎占争の優良生徒は各校に三人いる。生徒を差し出す………? 逆らえない機関? 学舎占争の裏には何か、大きな組織でもあるのだろうか? まあ、十一の高校が参加している規模の物だったら上になにかしらの纏める組織がいてもおかしくない。学舎占争を纏める組織?


「私は、どちらかというと参加者(プレイヤー)ではなく主催者なのです」


「へー?」


「あ、雛先輩に秘密ですよ」


「気が向く限りは、秘密にしてやるよ。しかし………そういわれるとなぜ、無関係の俺に言ったのかが謎なのだが」


「無関係じゃなくするためです。夜月先輩は、どうせ、無理矢理にでも関わってくるだろうと判断を下したので、雛先輩でも知らないような秘密を暴露して引き返せなく――――」


「俺は、学舎占争とやらに関わるつもりは毛頭、ない」


「妄言を。もう関わってるも同然の癖に。学舎占争なんて情報どこから拾ったんですか? 良い情報屋でも雇ったんですかね。ま、普通でしたらその情報を流した人もその情報を得た人も抹殺されるべきなのでしょうけど」彼女は、ふふふ、と笑った。「私は、優しく、慈悲の心を持ち合わせてるため、見捨てることは出来ません。助けてあげましょう」


「自演自作もいいところだな」


「ただし、試させていただきますよ? 使えないと判断したらその時点で、現実世界とさよならして下さいね。関係ない人に学舎占争の事を知られたとなったら少々面倒くさい事をしなくてはならなくなりますから」


 彼女は、背伸びをして俺に抱きつき、耳元でささやいた。歌うような甘い声が響く。


「明日、放課後、屋上に来てください」


「嫌だ、といったら?」


「来るんです」


「………」


「貴方は明日、放課後、屋上に来るんですよ? わかりましたか?」


「……わかった」


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