05:告白
しかし、それから何日も日が過ぎ、皆、日々の忙しさにその事件のことを忘れかけていた頃、思わぬ形で真相が発覚しました。
村にある井戸が枯れたり何か起きることから守る役割を担う、ある女がその犯人だったのです。その女が夜にこっそり長老様の家に忍び込み、宝玉を盗んで、それを井戸の中に沈めておいたのでした。村の皆が寝静まったある夜に、女は一人、井戸に近づいて、宝玉に繋げてあったとても細い糸をするすると上にあげていた時、通りかかった見張りがその姿を見つけ、ひっとらえられたのです。
「宝玉を盗賊に渡さなければ家族が殺されてしまうのです」、女はそう言い訳をしました。
数ヶ月前に、ずる賢い流浪の盗賊が女に近寄り、女の子供を人質に取り宝玉を奪えと命令したということでした。
「子供はまだ捕まっているのか?」
「はい……今夜の月が天の真上に昇った頃に、村のはずれの大樹の元で落ち合う約束を……」
「フム……それは困った。子供はどうにかせねば……」
長老様ら周りにいた野次馬の皆が首をひねっていると、その連中をかき分けて一人の男が姿を現しました。女の夫でした。
「長老様、今回はとんでもないご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」
「して、お前は見張り番役だろう? 今回の盗賊のことについて何も知らなかったのか?」
「はぁ、うかつながら、村人皆で行う花の蜜の収穫の時に、妻が子供と一緒に、他の者と少し離れて仕事をしていて、その時に盗賊が近づいたと」
「そうじゃない、見張りでいて、そのような怪しい者を見つけられなかったのか?」
「私は番の時は常に真剣に仕事を取り組んでおります。勿論、子供がいなくなってからは、特に注意して、いつもより広く長く見張りをしています。しかし奴は用心深いのか、この村に下手に近づくような油断はしていないようです」
そして、シーンと、しばし沈黙が流れました。すると夫が何か決心したような強いまなざしで、長老様に言いました。
「とにかく、今夜の盗賊との接触は、私が行きます。何とか子供を連れ戻します!」
「駄目よ! 私が行かないと、あの子は殺される!」と、妻が突然叫び出しました。
「夫でも、また誰でも他者を連れてきては駄目と言われてるのよ」
「しかし、君一人ではうかつに行っては返り討ちにあうぞ。宝玉を渡すというのか?」
「それは絶対にならんぞ!」長老様が激しく怒りました。
「しかし……そうだ、私も行こう。なに、他の誰にも見つからないようにうまく隠れて近づくさ。隙を見て、子供を助ける」
そしてこの夫の提案で万事が決まり、早速今夜に向けての準備を、村をあげて始まりました。夫は見張り番という仕事柄、闇に隠れて動くのは得意です。そして、村人全員は、万が一のことに備えて、賊との約束の待ち合わせ場所である大樹の、すぐ側の金花畑の中に身を低くして隠れて、いつでも助けに入れるように準備しました。長老様は、側近や、他の見張り番の者と共に、村で一番高い監視台に居座って、全ての様子を見張っていました。
そして、約束の満月の中天に昇る真夜中になりました。