プロローグ。
こんな話を聞いたことは無いだろうか?
ある密閉された箱の中に猫を閉じ込め放射性物質のラジウムを一定量と、ガイガーカウンターを1台、青酸ガスの発生装置を箱の中に装置しておく。
そして1時間後、箱の中の猫の生存確率は箱の中のラジウムがアルファ粒子を発生させるとガイガーカウンターが作動し青酸ガスが発生する。その経過により猫の生存は変動される。
そう、シュレーディンガーの猫の実験である。
しかし、この猫は何故このような実験体になってしまったのだろうか。
猫は当然悪く無い(まぁ・・・人間につかまってしまったということはおいといて)。
このような不憫な人生(人・・・じゃないけどな)を身勝手な人間の研究のせいで強いられた猫に同情するよ・・・。
まぁ、それはいいとして俺が言いたいのはだな。
この実験の結果は蓋を開けなければわからない。
つまりこの実験中は世界は二つ存在しているということだ、そして蓋を開けた瞬間どちらかの世界は消滅される。
だから俺は世界は数えきれない程に存在していて、今俺が居るこの世界は数々の自分や他人を・・・『殺す』それとも『選ぶ』・・・ものだと考えてきた。
常に、殺すか生かすかの選択を・・・
それはごく普通の、ごく普通で色あせた世界での突然の出来事だった。
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
先生の号令の後で蠢きざわつきだす環境、あちらこちらで発生する音。
すべては慣れてしまって気づくことは無い現象だろう。
誰も気づかない、気づけない現象・・・。
俺は一人勝ち誇った気分で空を眺めていた。
「善人」
俺は友人の(佐奈田 緑)に呼ばれ教室を振り返る。
佐:「何ぼんやりしてんだよっ!ほれっ屋上行くぞ」
善:「ああ」
と生半可な返事をして青い弁当箱を持ち屋上へと向かった。
階段をのっそりと上がり、立ち入り禁止のテープを跨いで扉を開け外に出ると
「おっそぉーーーーい!」
と、明るくうるさい声が晴天の空へと響き消えていった。
佐:「ごめんごめんっ!善人がもたもたしちゃってさっ!ほら、謝れよっ」
無理やりに頭を押さえつけられる。
まあこれも日常の見慣れた光景だった。
先ほど叫んだ女子は(迫井 咲夜)という、腐れ縁の・・・腐れ縁のトリオメンバーの一員である。
幼稚園のころから行動するとこすべてに同じメンツが揃ってしまうという不思議なメンツ。
クラス、修学旅行の班、その他ほぼすべてこのメンツが揃っていた。
俺、佐奈田、迫井の三人の事である。
そんな不思議な縁もあってか、自然と一緒に行動し仲良くなったってのが所以である。
迫:「まったくぅ・・・幼稚園のころから全く変わって無いんだからっ!」
佐:「まったくだよっ」
文句を投げつけられながら俺は黙って青い弁当箱の包を解いていた。
そんなありふれた光景の中、最初の選択は突然やってきた
迫:「ねぇねぇっ!裏山にある廃病院今年中に壊されるらしいから記念に肝試しでもいかないっ?クラスのみんな連れてさっ!」
それは7月の始めの、梅雨が明けてすぐの猛暑の日の事であった。
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