2・事件
西山の妻は紗江子といった。なかなかの美人で顔だちもよくもったいないぐらいのものであった。
「しかし、すべてはこの女が悪いのだ・・・俺の人生はもっと別の道であったはず。」
佐藤隆は8日、西山の家にむかっていた。時刻は11時。西山は会社に出かけていて留守だった。
もちろんそのことを知っていて、この時間帯を選んだ。そして家に忍び込んだ。
「よう紗江子。」佐藤は紗江子に向かってそう言い放った。
その時、紗江子はおどろいた顔で、佐藤を凝視した。「え、なに、ちょっとあなた誰なのよ、きゃぁぁー」思わず悲鳴を上げた。
「おれだよ。隆だよ。覚えてるか?」
「隆?え・・・」
次の瞬間、静かな悲鳴が走った。佐藤の手には謎の気体を発するビンが紗江子の口に当てられていた。
そのまま紗江子は床に眠るようにして倒れこんだ。そして佐藤の手には黄色い液体が入った注射針が握られていた。
そして針をさし、液体を注入した。そのまま放置して、5分間外に出てあたりを見回した。
そしてさらに10分後佐藤の手には赤い液体が入った瓶が持たれていた。
「やっと・・・」そうつぶやいた後、家に鍵をかけ、川へ向かった。
西山は会社にいた。11時30分ごろ寒気を感じた。何が起きたかは、わかっていたつもりだった。
だが彼が想像していたこととは全く違うことだった。
「川は赤くそまっているだろうか?」
そんなことはまだましだった・・・。
帰り道、8時ごろにいつも帰るのだが、今日は7時に帰らせてもらった。
川を見て、衝撃が走った。そこには警察、その中心には倒れこんでいる佐藤がいたのだ。