全員集合したある日
「だから、出て行って。邪魔なのよ」
うららかな午後。本日の授業を終えられた王女はそうのたまった。
ここにいるのは3人。
王女と王宮付魔女と私。
出ていくのは当然
「じゃ、失礼します――ぐふ!!」
「なんでルーが出てくのよ!そいつよそいつ!!魔女!いつまでわたくし達の邪魔をするつもり?!」
王女が指さす先には一人掛けのソファに、優雅に腰掛ける青年。そう、アルシテとよばれる魔女――だった青年。
「邪魔?それはどっちだろうねぇ。私はルー子とこれから予定があるんだよ。場所は選ばないけど出来るならベッドの上での方が初めての女性には優し――ルー子、私でもそれは致命傷を負う。止めて?」
なんか言い始めた魔女に、王女の情操教育上よろしくないと判断した私は手近な陶器を振りかぶった。ち、ばれた。止めてと頼んでおきながら、魔法だかなんだかで、陶器は私の手から離れないようになっている。
それよりも。
「はじめてじゃありません」
冗談じゃない。男性経験が無いようにみえるのか?だったらお前の目はあれだ。
「そうかなぁ。いろいろ根拠はあるんだけど、言い張るなら、ま、いいよ」
「良くないでしょう!!ルー、相手は誰なの!?なぜ黙っていたの!」
……え。
「え、別に面接のとき聞かれなかったし。ダメでした?だったら私――」
「違うわよ!お兄様との婚姻に支障がでるでしょう!ああでもやり方はいろいろあるかしら?!いいかしら?!」
「……はい……?」
「く!!」
背後で笑い声がする。寸前まで目前で寛いでいた魔女が、いつの間にか移動していた。瞬きひとつの間に。
「それは無理だよ王女。これは私のものだからねぇ。ほら」
言って、胴体にまきついた魔女の腕が、私を折るようにして引き寄せる。
どんと奴の身体に体当たりして、うめいた次には肩口が晒されていた。
そこには複雑に絡まった青い唐草模様。
「ホラ、所有印――これは私のだ」
「っ!!ルーあなたっ」
「ああ責めないであげておくれ。昨日熟睡中にしたことだから」
「アンタを責めるのよ何してんのよ!!」
「激しく同意します何乙女の身体に傷のこしてんですか馬鹿ですか。私の故郷じゃ刺青あったら公共浴場に出入り禁止なんですよ分かってんですか温泉巡りは私の趣味なんですけどね?!」
「あ、今乙女って言った」
「聞けよ」
「じゃあやっぱり純潔なのね!よかった!」
「そっちも聞こうよ」
「だからジルにはやらないって。と、いうわけで」
ため息をつきつつ話を終わらせようと魔女が動いた。
「子供を作らない子作りしよう――優しくするからね」
って。
すばやく私を抱き上げ、魔女は窓から飛び降りた。
ここは西塔。高さは10階。
よって意識は投げ放つに限る……
願わくは次起きた時平和な世でありますように――
世界平和万歳……
王女と魔女と私のこんな一日。