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少女、第八世界イルシンテ ヨリ 電脳圏ニ迷イ込ム  作者: 烏間


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目覚めて見る悪夢(記録者:???)

 ありえない痛みがあった。

 心の準備などなく、肩がドクドクと脈打って、息が上手くできない。

 なに?

 何が起きたの?

 起きあがろうしたけど、腕が動かない。

 なんか、手が痺れてる?

 感覚がない。

「うっ……」

 周りの眩しさに目が眩みながらも目を開ける。

「…………は?……」

 信じられない。

 私の腕……どこ?

「あっ……あぁっ……ああぁぁぁっ!!」

 私の両腕は明らかに人工的に切り落とされていた。

 私の腕から伸びる血の跡が、水たまりのように広がっている。

 なっ……なに?

 えっ?えぇ??

 これ……。

「うそっ!なんで?!」

 なんでこんなことに。

 状況が全くわからない。

 唐突に、私の上にドローン型のロボットが飛んできた。

 それは2本のアームをこちらに伸ばしてくる。

 もしかして、生きてるのに気づいたから、助けてくれる感じ?

 助けてくれるなら何でもいい。

 そうおもったが、ドローン型のロボットは、あろうことか腕の切断部にアームを伸ばし、ぎゅっと体を締め付けてくる。

「ちょっ!」

 持つにしてもそんなところでなくてもよくない??

 しかしロボットはそんなの関係なく、私の体を乱暴に持ち上げられる。

 それだけでとんでもない痛みだったが、まだ終わらない。

 ジュッ…………。

 一瞬聞こえた音。

 焦げた香りと共に上がる煙。

「ああああっ!!!」

 アームは急に温度が上がり、私の傷を焼いた。

「はぁっ……はぁっ……」

 ありえない!

 ありえない!!

 傷口、焼かれた??

 どすんっ。

 その上、ドローン型のロボットは、私の腕の付け根を焼いたと思えば、今度はベルトコンベアの上に乱暴に乗せられる。

 そこには、私と全く同じ様に両腕を切断された人が等間隔で流れていた。

 けれどもう死んでしまっているのか、私の様に起きている者は1人もいない。

 辺りには、血の匂いと肉の焼ける匂いが同居している。

 しかも、空気が澱んでとんでもなく濃厚になっている。

「うゔっ、おえぇぇっ」

 思わず吐き出した。

 もう頭がおかしくなるっ!

 吐瀉物で汚れた口元を拭うこともできない。

「はあっ……くっ……うぅっ……」

 荒い呼吸とともに涙が流れた。

 一体、何が起こってるの?

 私、なんでこの場所に?

「はぁ……はぁ……」

 朦朧としているが、今意識を手離すのは絶対にヤバい。

 まずは、状況を……。

「くっ!」

 私は腹筋だけで上体を起こして周りを見た。

 ベルトコンベアの先では、規則的な音が聞こえる。意識のないもの達はさらに体が小さく「加工」されている。

 次に切られるのは……足だ。

 冗談じゃない。

 悪夢にしても質が悪すぎる。

 ここから逃げないとっ。

 腕のない状態で立ちあがろうと芋虫の様に這う。両手のない状態で立ち上がるのは思いの外難しく、のたうち回っていると、またドローンの様な機械が近づいてくる。

 もしかして見つかった?

 ピーピーピッピピーピピッピピピー!!

 モールス信号の様な音がけたたましくなっている。

 何かを訴えているようにも思えるが、考えている暇などない。

「っ?!……あ゛ぁ゛もうっ!!」

 痛みに耐え、ベルトコンベアから飛び降りる。

 視界が大きく揺れて、思わず片膝をつく。

 身体中が心臓になったみたいにドクドクする。

 こうしてちゃだめだっ。

 進まなきゃ。

 狭い通路をバランスを崩したりしながらもなんとか進む。

 私を捕まえようとドローン型ロボットが手を伸ばしてくる。

 しかもどんどん数が増えている。

「でぐちっ!……出口はっ?」

 同じような景色が繰り返し過ぎていく。

 しかも、あの看板たち!

 何語??

 パソコンの文字化けみたいな見慣れぬ文字。

 タイ語とかアラビア語とかもあんな感じではなかった気がする。

 私、すごいマニアックな国とかに誘拐された?

 ……どうしよう、帰れなかったら?

 私の腕がなかったら、お母さんどんな顔するかな?

「!あれは??」

 扉だっ!

 ここがもしかして出口??

 ここが開けば……。

 あ、

「手がないんだったっ!」

 迫ってくるドローン軍団。

 止まっている場合ではない。

 かといって、体当たりで開くとも思えない。

 あとは……あれだ!

 もう少し奥の方にある換気口みたいな場所!

 あれなら私でも飛び込める。

 ただ。

 どこにつながってるかわからないけど……。

「死ぬよりマシ!」

 私は換気口の縁に足をかけ、金属製の穴の中に飛び込んだ。

 幸い、穴の向こうは滑り台のようだったけど、これが大分角度がエグいっ!

「いやあぁぁぁぁぁっっ!!」

 こういうウォータースライダーの動画、見たことある。

 というかこれ、ウォーター無しだとこれ……もしかして、死ぬ??

 ぼすんっ。

「……痛ったぁ〜」

 幸い、下に待っていた緩衝材で幾分か衝撃は吸収された。

 良かった……生きてる。

 足も多分、折れてはいないだろう。

「……酷い目に遭った……」

 そう言って、うつ伏せだった体勢を、なんとか仰向けに持ち直そうとする。

「いたっ」

 何か髪に引っかかる。

 なんか今日、痛いのばっかり……。

 髪は、枝のようなものに絡め取られている。

 枝のようなものに絡まった髪は少し引っ張ればすぐに解放された。

 しかし、引っ掛かったそれが、人間の指だと理解するのにも、それ程時間は要らなかった。

「ひっ……」

 改めて辺りを確認する。

 私を受け止めてくれたのは、クッションなんて生優しいものではない。

 あそこで切断された、大量の腕だった。

 お化け屋敷でもこんなに酷くない。

 しかも、切り立てほやほやで、血と体臭の混じったようななんとも言えない匂いがする。

「ホント……ありえない……」

 息を吸うたびにツーンと匂いが入ってきて気持ち悪い。

 また吐きそうだ。

 というか。

 無理に動いたせいか、体が限界だ。

 私のアドレナリンブーストもここまでか……。

 酷い頭痛と、眩暈がする。

 目を開けているのがしんどい。

 あぁ……

 次に目を開けた時、家のベッドで横になってて、元の世界に戻っていればいいのに。

 都合がいいと思いつつも、そう思わずにはいられなかった。


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