目覚めて見る悪夢(記録者:???)
ありえない痛みがあった。
心の準備などなく、肩がドクドクと脈打って、息が上手くできない。
なに?
何が起きたの?
起きあがろうしたけど、腕が動かない。
なんか、手が痺れてる?
感覚がない。
「うっ……」
周りの眩しさに目が眩みながらも目を開ける。
「…………は?……」
信じられない。
私の腕……どこ?
「あっ……あぁっ……ああぁぁぁっ!!」
私の両腕は明らかに人工的に切り落とされていた。
私の腕から伸びる血の跡が、水たまりのように広がっている。
なっ……なに?
えっ?えぇ??
これ……。
「うそっ!なんで?!」
なんでこんなことに。
状況が全くわからない。
唐突に、私の上にドローン型のロボットが飛んできた。
それは2本のアームをこちらに伸ばしてくる。
もしかして、生きてるのに気づいたから、助けてくれる感じ?
助けてくれるなら何でもいい。
そうおもったが、ドローン型のロボットは、あろうことか腕の切断部にアームを伸ばし、ぎゅっと体を締め付けてくる。
「ちょっ!」
持つにしてもそんなところでなくてもよくない??
しかしロボットはそんなの関係なく、私の体を乱暴に持ち上げられる。
それだけでとんでもない痛みだったが、まだ終わらない。
ジュッ…………。
一瞬聞こえた音。
焦げた香りと共に上がる煙。
「ああああっ!!!」
アームは急に温度が上がり、私の傷を焼いた。
「はぁっ……はぁっ……」
ありえない!
ありえない!!
傷口、焼かれた??
どすんっ。
その上、ドローン型のロボットは、私の腕の付け根を焼いたと思えば、今度はベルトコンベアの上に乱暴に乗せられる。
そこには、私と全く同じ様に両腕を切断された人が等間隔で流れていた。
けれどもう死んでしまっているのか、私の様に起きている者は1人もいない。
辺りには、血の匂いと肉の焼ける匂いが同居している。
しかも、空気が澱んでとんでもなく濃厚になっている。
「うゔっ、おえぇぇっ」
思わず吐き出した。
もう頭がおかしくなるっ!
吐瀉物で汚れた口元を拭うこともできない。
「はあっ……くっ……うぅっ……」
荒い呼吸とともに涙が流れた。
一体、何が起こってるの?
私、なんでこの場所に?
「はぁ……はぁ……」
朦朧としているが、今意識を手離すのは絶対にヤバい。
まずは、状況を……。
「くっ!」
私は腹筋だけで上体を起こして周りを見た。
ベルトコンベアの先では、規則的な音が聞こえる。意識のないもの達はさらに体が小さく「加工」されている。
次に切られるのは……足だ。
冗談じゃない。
悪夢にしても質が悪すぎる。
ここから逃げないとっ。
腕のない状態で立ちあがろうと芋虫の様に這う。両手のない状態で立ち上がるのは思いの外難しく、のたうち回っていると、またドローンの様な機械が近づいてくる。
もしかして見つかった?
ピーピーピッピピーピピッピピピー!!
モールス信号の様な音がけたたましくなっている。
何かを訴えているようにも思えるが、考えている暇などない。
「っ?!……あ゛ぁ゛もうっ!!」
痛みに耐え、ベルトコンベアから飛び降りる。
視界が大きく揺れて、思わず片膝をつく。
身体中が心臓になったみたいにドクドクする。
こうしてちゃだめだっ。
進まなきゃ。
狭い通路をバランスを崩したりしながらもなんとか進む。
私を捕まえようとドローン型ロボットが手を伸ばしてくる。
しかもどんどん数が増えている。
「でぐちっ!……出口はっ?」
同じような景色が繰り返し過ぎていく。
しかも、あの看板たち!
何語??
パソコンの文字化けみたいな見慣れぬ文字。
タイ語とかアラビア語とかもあんな感じではなかった気がする。
私、すごいマニアックな国とかに誘拐された?
……どうしよう、帰れなかったら?
私の腕がなかったら、お母さんどんな顔するかな?
「!あれは??」
扉だっ!
ここがもしかして出口??
ここが開けば……。
あ、
「手がないんだったっ!」
迫ってくるドローン軍団。
止まっている場合ではない。
かといって、体当たりで開くとも思えない。
あとは……あれだ!
もう少し奥の方にある換気口みたいな場所!
あれなら私でも飛び込める。
ただ。
どこにつながってるかわからないけど……。
「死ぬよりマシ!」
私は換気口の縁に足をかけ、金属製の穴の中に飛び込んだ。
幸い、穴の向こうは滑り台のようだったけど、これが大分角度がエグいっ!
「いやあぁぁぁぁぁっっ!!」
こういうウォータースライダーの動画、見たことある。
というかこれ、ウォーター無しだとこれ……もしかして、死ぬ??
ぼすんっ。
「……痛ったぁ〜」
幸い、下に待っていた緩衝材で幾分か衝撃は吸収された。
良かった……生きてる。
足も多分、折れてはいないだろう。
「……酷い目に遭った……」
そう言って、うつ伏せだった体勢を、なんとか仰向けに持ち直そうとする。
「いたっ」
何か髪に引っかかる。
なんか今日、痛いのばっかり……。
髪は、枝のようなものに絡め取られている。
枝のようなものに絡まった髪は少し引っ張ればすぐに解放された。
しかし、引っ掛かったそれが、人間の指だと理解するのにも、それ程時間は要らなかった。
「ひっ……」
改めて辺りを確認する。
私を受け止めてくれたのは、クッションなんて生優しいものではない。
あそこで切断された、大量の腕だった。
お化け屋敷でもこんなに酷くない。
しかも、切り立てほやほやで、血と体臭の混じったようななんとも言えない匂いがする。
「ホント……ありえない……」
息を吸うたびにツーンと匂いが入ってきて気持ち悪い。
また吐きそうだ。
というか。
無理に動いたせいか、体が限界だ。
私のアドレナリンブーストもここまでか……。
酷い頭痛と、眩暈がする。
目を開けているのがしんどい。
あぁ……
次に目を開けた時、家のベッドで横になってて、元の世界に戻っていればいいのに。
都合がいいと思いつつも、そう思わずにはいられなかった。




