7話 学ばない男
札幌駅近くの漫画喫茶、受付でナイトパックを選び、個室に入る。
狭いが、暖かい。
それだけで十分だった。
「生き返る」
私は椅子に腰を下ろし、ポケットの中身を取り出す。
昨日、USBを売って得た金。
数日ぶんの宿代と飯代を抜いて約20000円。
安く買い叩かれたとはいえ、無一文からここまで来た。
それだけで奇跡みたいなものだ。
だが、この程度では何も変わらない。
生活はできないし、未来も変えられない。
私はバッグから手帳を取り出した。
未来の記録。
この世界で唯一のチート武器。
ページをめくる。
株価、ニュース、出来事
そして、競馬。
「これ、今ならいけるな」
明日のメインレース。
勝ち馬も、配当も、すべて書いてある。
負ける要素がない。
問題は、どこまで賭けるか。
私は少し考えて、決めた。
「全部いくか!」
迷いはなかった。
ここで増やさなければ意味がない。
私は手帳を閉じ、目を閉じる。
久しぶりに、ちゃんと眠れそうだった。
翌朝。
私は場外馬券所に立っていた。
独特の空気、人の熱。
すべてが現実離れしている。
だが、やることは決まっている。
手帳を確認しながら、券売機へ向かう。
指が少し震える。
だが、それも一瞬。
2万円全額賭ける。
「頼む」
レースが始まる。
歓声が響く!
だが、結果は知っている。
それでも、心臓はうるさいほど鳴っていた。
的中。
視界が一瞬、白くなる。
「よっしゃぁらぁ!!!」
笑いが漏れる、当然だ。
当たるとわかっていた。
それでも実際に当たると、世界が変わる。
払い戻し表示を見る。
500万円超。
「やばい」
息が浅くなる。
たった一日で、ここまで来た。
このままいけば、人生なんて余裕だ。
そう思って居た。
「100万円以上の払い戻しは、窓口での本人確認が必要になります」
現実が、全てを壊した。
「……は?」
頭が追いつかない。いや、理解はできる。
ただ、認めたくない。
身分証。
そんなものない。
私は、この時代の人間じゃない。
窓口の列を見る。
あと数歩で、大金が手に入る。
だが、その先は終わりだ。
警察。
職質。
説明不能。
詰み。
私は、静かに列から離れた。
手元に残ったのは、当たったらけど換金できない馬券と端数のわずかな小銭約300円、、、
昨日と同じ漫画喫茶に戻る、
だか、気分はまるで違う。
カップ麺を買う、一番安いやつ。
湯を注ぐ。
その間、ずっと考えていた。
「勝ったのに、金がない」
言葉にして、笑う。
笑えないのに、、、
手帳を開く。
希望は、まだある。
いくらでも稼げる情報がある。
だが
「それだけじゃ、足りないか」
この世界で生きるには、金だけじゃない。
身分。
信用。
居場所。
私はカップ麺をすすりながら、次に何をすべきか、考え始めた......




