6話 3人の諭吉
翌朝。
ほとんど眠れないまま、私は地下歩行空間のの冷たいベンチから身体を起こした。
昨日のことを思い出す。
職務質問。身分証なし。そして――無一文。
「金......作りに行くか」
自然と口から漏れた。
このままでは、本当に終わる。
ポケットに手を入れると、無機質な感触が指先に触れた。
4GBのUSBメモリ。
未来から持ってきた、今唯一の資産。
だがこれ、本当に売れるのか......?
歩きながら、何度も自問する。
2006年に4GB、普通じゃない。
下手をすれば怪しまれる。
最悪また警察だ。
昨日の光景が頭をよぎり、思わず足が止まる。
「……いや、やるしかない」
ここで引けば、本当に詰む。
店の前で立ち止まり、ポケットの中のUSBを握りしめる。
全部出すのは危険だ、直感がそう告げている。
「……とりあえず、10個だけにするか」
残りは奥に押し込む、深く息を吸って、ドアを押した。
「いらっしゃいませー」
カウンターの奥から、店員の声がする。
私は無言で近づき、USBを10本並べた。
「あの……これ、買い取ってもらえますか?」
できるだけ平静を装う、だが、指先はわずかに震えていた。
店員が一本手に取る。
裏返す。
もう一本。
そして、動きが止まった。
「……これ、どこのメーカーですか?」
来た、心臓が嫌な音を立てる。
「えっと……海外製で、詳しくは分からないんですけど」
用意していた言い訳を口にする。
店員は黙ったままUSBを見つめている。
嫌な沈黙。
「容量……4GB?」
小さく呟く声。
やはりそこに引っかかるか。
「そう、みたいですね……」
曖昧に答える。
店員は眉をひそめた。
「4GBって……聞いたことないですね。試作品か何かですか?」
核心を突かれる。
「親戚からもらった物で……詳しくは」
言葉を濁す、完全に怪しまれている。
店員はしばらく考え込んだあと、ふっと息を吐いた。
「全部でこれだけですか?」
一瞬、間が空く。
「いえ……とりあえず、これだけです」
そう答えた。
店員の視線が一瞬だけ鋭くなる。
だが、それ以上は追及してこなかった。
「少々お待ちください」
USBを持って奥へ消える。
足音が遠ざかる。
そして小さく、誰かと話す声。
内容は聞き取れない。
だけども確実に、“何か”を話している。
「……やばいかもな」
小さく呟く、逃げるべきか。
いや、ここで逃げたら終わる。
ただ、時間だけが過ぎていく。
数分後店員が戻ってきた。
「査定ですが――」
その一言で、喉が渇く。
「全部で、3万円になります」
一瞬、理解が追いつかなかった。
3万円。
10個で、3万円。
「……1個、3000円か」
思わず心の中で計算する。
安い。
正直、安すぎる。
本来の価値を知っているからこそ、そう思う。
だが今の私は、無一文だ。
昨日は地下で寝て、警察に起こされて、
身分証もなくて、詰みかけた。
そんな状況。
「……お願いします」
迷う理由なんて、ない。
店員は頷き、レジへ向かう。
引き出しが開く音。
差し出されたのは、栄一ではない諭吉の1万円札が3枚。
その重みが、やけに現実的だった。
震える手で受け取る。
「生き返ったな」
そう呟いた。
「ありがとうございましたー」
背中にかかる声を聞きながら、店を出る。
外の空気がやけに暖かく感じた。
ポケットの中には、まだUSBが残っている。
「全部売らなくて、正解だったな」
今回で分かった、この時代でこれは普通じゃない。
一気に動けば、問題が起こる可能性が高い。
慎重にいかないと、詰むかもな。
ふと、手帳の存在が頭をよぎる。
未来の情報。
株、事件、流行――
「もっと確実に稼ぐ方法、あるよな」
ただの転売じゃない、この時代で勝つ方法。
それを考えなければいけない。
それでもこの時代で初めて得た成功体験。
自分の一攫千金への道のりを確信して私は歩き出した。
その頃、店の奥。
「どう思います?」
店員がUSBを机に置く。
「4GBなんて、今あるか?」
「聞いたことないですね……」
もう一人の男が眉をひそめる。
「しかもメーカー不明。あいつも妙だった」
短い沈黙。
「とりあえず、少し調べてみるか」
USBを見つめる視線が、わずかに鋭くなった。
前回の話から文とストーリーは自分で考えているのですが、書き方等をAIを使ってブラッシュアップしてみました。
これで前より書くのが早くなればいいのですが、、、




