4話 土と煙の匂い
札幌まで歩いておそらく17時間程......
現実的ではない正気の沙汰ではないが、
他に方法がない以上今は歩くしかない。
時間はまだ朝5時前。
空は明るいがそれでも4月の北海道......
「寒い......」
そう呟いて歩き始める。
それとごめん、見知らぬおっちゃん。
実は目覚めて家を出る時焦って前の住人の靴を履いてきてしまった。
しょうがないじゃないか、未来人だもの......
2時間ほど歩いただろうか、
歩いているからか身体は暖かい。
しかし、つま先は冷え切りお腹も空いた。
笑えない......
日も上りから車通りも増えてきた。
しょうがない、大きな道路にでてヒッチハイクするか。
正直やりたくはなかったが、歩き続けることはもうしたくない。
道路脇に立ち親指を立てる。
数分後
1台
2台
3台
止まる気がしない......
そもそもこんな朝っぱらから見知らぬ男を止める物好きなど居ない。
29歳無職、不審者
私だって絶対に乗せないだろう。
冷静に考えて厳しい。
それでも諦めずに立ち続ける
1時間ほど経っただろうか?
親指の感覚は完全になくなって心は折れかかっていた。
そんな時1台の軽トラックが少し先で止まった。
慌てて駆け寄るとスキンヘッドで少し怖い60代くらいの男性が問いかけてくる。
「兄ちゃんこんなとこで馬鹿でねぇのか?
どこ行くんよ?乗せてっちゃる」
本気で泣きそうになった。
「札幌まで、お願いします」
深々と頭を下げて途中までならと乗せてもらえる事になった。
土とタバコの匂いのする車内。
「こんな時間になしたんよ?」
「ちょっと旅してまして笑」
本当のことなど言えるはずがなかった。
しばらく走ったころ、男性が口を開く。
「してナンボあるんよ」
これって金をせびられているのか?
「いや、金がなくてヒッチハイクしてました、、、」
実際金がないのだから脅されようが何されようが無いものはない。
「したっけこれで飯でも食え」
その手には千円札が握られて居た。
少しでも、見た目からガッツリ男性を疑った目で見てしまった事をとても後悔した。
涙が出てきた、、、
2006年にきて初めて触れた人の温もりだった。
40分ほど走った頃おじさんの目的地の近くに着いた。
「あの、ありがとうございました。よかったらこれ」
未来から持ってきたUSBを一つ渡した。
男性からすれば使い道のないものかもしれないが、
今の自分はこれくらいしか持っているものがない。
少しでも何か返したかったのだ、その後缶コーヒーと朝食を買ってもらい男性に手を振って別れをつげた。
札幌まで20kmほど、心も身体もあたたまり
また歩みを始めた。
どれくらい歩いただろうか、札幌の街並みが見えてきた。
やっと、着いた。
記憶を元に札幌駅の電気屋を目指す。




