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4GB USB 〜29歳既婚者が過去に戻って一攫千金を狙ったけど現実は結構厳しそう〜  作者: ナカモリトマト


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37話 新しい糸口

 翌朝、私は福島駅前のバス乗り場に立っていた。

前日と同じ川俣町行きのバスに乗る。整理券を取り、窓側の席に腰を下ろす。車内は静かで、乗客もまばらだった。

 

 バスはゆっくりと発車し、街を離れていく。


 建物が減り、畑が増え、やがて山が近づいてくる。昨日と同じ景色だったが、見え方は少し違っていた。

様子見ではない。

今日は、中に入るための手がかりを探しに来ている。


 山道に入り、渓谷沿いを進む。川の流れを横目に見ながら、私は小さく息を吐いた。

しばらくして、バスは川俣町に入る。

停留所で降りると、空気は昨日と同じく乾いていた。人の気配は少なく、音も少ない。

私はそのまま歩き出し、役場へ向かった。


 大きくはない建物だったが、この町の中心であることはすぐに分かった。中に入ると、静かな空間に事務的な音だけが響いている。


 窓口に近づき、少し間を置いてから声をかけた。


 「すみません、仕事を探していて……このあたりで人手が足りていないところってありますか」


 対応した職員は一瞬だけこちらを見て、それから穏やかに頷いた。


 「どういった仕事をお探しですか」


 「体を使う仕事なら、特にこだわりはないです」


 嘘ではない。選べる立場ではなかった。

職員は少し考えるように視線を落とし、それから口を開く。


 「農業関係でしたら、時期によっては手伝いを探しているところはありますね。ただ、どこも顔見知りや紹介があることが多いので……」


 予想していた答えだった。


 それでも、ここで終わるわけにはいかない。


 「他には、何かありますか」


 少しだけ踏み込んで聞く。

職員は小さく息を整えてから続けた。


 「昔からの仕事でいうと、養蚕をやっている地区があります。規模は大きくないですが、続けている方はいますね」


 その言葉に、意識が少しだけ前に出る。


 「養蚕……ですか」


 「ええ。このあたりだと、山木屋の方ですね」


 そう言うと、職員はカウンター横に置かれていた紙の束から一枚を取り出した。町全体が簡単に載った案内図だった。


 指で示された場所は、はっきりと山側だった。


 「この辺りになります。詳しい場所までは載っていませんが……」


 「ありがとうございます」


 地図を受け取り、軽く頭を下げる。


 それ以上は聞かなかった。聞ける空気でもなかった。

役場を出る。

外は相変わらず静かだった。


 手元の地図に目を落とす。道は大まかにしか載っていないが、位置は把握できる。


 山木屋。


 昨日よりも、はっきりとした目的地になっていた。

私はしばらくその場に立ち、地図と周囲の景色を見比べる。

ここから先は、自分で探すしかない。

保証もない。受け入れられるかも分からない。

それでも、行く理由はもう十分にあった。

私は地図を折りたたみ、ポケットにしまう。


 そして、山の方へ向かって歩き出した。

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