16話 嫌いな騎手って買わなかったら来るよね
北大路さんと飲んだ翌日。
二日酔いの気配を少し引きずりながら、私たちは競馬場に来ていた。
日曜の昼下がり。人のざわめきと、独特の土と草の匂い。北大路さんはやけに機嫌がいい。
「こういうの、たまにはいいな」
昨日飲んでいて知ったのだが、離婚する前の北大路さんは競馬場に通うのが趣味だったそうだ。
北大路さんの横顔を見ながら、俺は内心で小さく息を吐いた。今日は問題ない。
このレースは、確かガチガチだったはずだ。
1番人気、2番人気、3番人気で決着。
単勝は1倍台前半。旨味なんてほとんどない。
だからこそ都合がいい。
勝っても怪しまれないし、負けることもない。
「俺は軽くでいいです」
単勝に1万円だけ入れる。
北大路さんはというと、マークシートに迷いなくペンを走らせていた。
「せっかくだしな、でかくいくわ」
「その組み合わせ良くないですよ」
「でもよぉ、この騎手買わなかったら来るし、買ったらこねぇんだよ」
「じゃあ、この組み合わさがいいと思います」
それとなく、当たるはずの買い目を伝える。
ほんの少し背中を押す程度に。
ファンファーレが鳴る。ゲートが開く。
走り出した瞬間、確信する。
(やっぱりだ)
位置取り。流れ。全部、知っている通り。
直線、外から伸びるあの馬。
続く2頭。
(来る)
ゴール板を駆け抜ける。
記憶と同じ着順。
「よし...…」
北大路さんは子供みたいに身を乗り出していた。
「来たぞ!おい!これ!」
結果は、記憶通り......
のはずだった。
払い戻しの表示を見て、違和感が走る。
「はぁ?」
単勝。
自分の買った馬。
5.0倍
思わず、もう一度見直す。
表示は変わらない。
(なんだこれ)
1万円が5万円になっている。
ありえない数字だった。
このレースはこんな配当じゃない。
「おい!!!やべぇぞ!!!」
隣で北大路さんが叫ぶ。
「見ろこれ!!100万馬券ぞ!!!」
モニターに表示された数字。
三連単の払い戻し。
桁が、違う。
ガチガチのレースのはずだ。
荒れる要素なんて、一つもなかったはずなのに。
喉が、じわりと乾く。
「おかしい......」
自分の知っている結果と、違う。
着順は同じなのに、中身がズレている。
ただの記憶違いじゃない。
そんなレベルじゃない違和感。
(なんでだ…?)
胸の奥が、ゆっくりと冷えていく。
(過去が変わってる?)
さっきまでのざわめきが、妙に遠く聞こえた。
少しず小説を書くことに慣れてきた気がします......
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