15話 北大路の過去
その夜。居酒屋の暖簾をくぐると、木の香りと焼き物の匂いが混ざり、どこか落ち着いた空気が漂っていた。北大路さんは慣れた手つきでカウンターに座り、ビールを注文する。私は少し緊張しながらも、今日の畑の話を切り出した。
「今日も、順調でしたね。芽も元気ですし」
「そうか。お前もだいぶ手際よくなったな」
笑みを浮かべてくれるが、その目はどこか遠くを見ていた。
しばらくは穏やかに話していたが、北大路さんの表情がふと曇る。箸を置き、目を伏せたまま言った。
「俺な……昔は家族がいた。妻と子供もな」
声が震えるでもなく、むしろ淡々と、だが重く響いた。
「……でも、俺は信用してた友人に金を騙し取られて、頭に血が上った」
「喧嘩したんですか」
「ああ。警察沙汰になった。俺の手は汚れたし、人生も狂った」
店内の笑い声や皿の音が、遠くでかすかに響く。静かな居酒屋の空気が、その言葉の重みで押しつぶされるように感じられた。
「妻も子供も、俺を残して出て行った。もう戻ることはない」
「北大路さん......」
「言っておく。お前は俺みたいな男になるなよ」
その声は静かだが、底に深い悲しみと怒りが沈んでいる。彼の瞳に浮かぶ影は、長い孤独の証のようだった。
「でもな……俺は今でもここで生きている。畑がある、仕事がある、日々を積み重ねる場所がある」
北大路さんは手元のビールをゆっくり傾けながら言った。
「一度失ったものは戻らない。だから俺はせめて、自分が助けれる奴は助けるようにしている」
私は黙って頷いた。過去の話を聞くと同時に、これからどう生きるかを考えさせられる。今までただ金や生活のことしか頭になかったが、北大路さんの話を聞くと、少し未来の意味が変わる気がした。
「お前も……気をつけろよ。簡単に人を信じるな。軽い気持ちで動くと、俺みたいに全てを失う」
その言葉を聞いて、でもこの人めっちゃいい話してるけど暴力事件を起こして逮捕されているんだよな......
そう思ってしまった私はは人として何かが欠落しているのかもしれない。
外に出ると、北大路さんの背中を見ながら、失敗と孤独を背負いながらも生きる強さを感じる。
そして同時に、私もまた、これからの道を慎重に、しかし着実に歩む必要がある。そう思った。
明日の畑も、生活も、そして手元にある金の使い道も、ただの日常ではなく、未来を作る行動の一部になるはずだ。慎重に動かなければな......
作者ぎっくり腰になったのですが、健康保険の更新忘れてて漫画の主人公みたいに病院行けなくて詰みました......




