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4GB USB 〜29歳既婚者が過去に戻って一攫千金を狙ったけど現実は結構厳しそう〜  作者: ナカモリトマト


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14話 来訪者

 朝の光がハウスを柔らかく照らしていた。

トレーに並んだ芽を見ながら、ゆっくりと水やりを進める。

少しずつ動きにも慣れ、体も軽く感じる。


「おはようございます」


「おう、今日も頼むぞ」


 北大路さんはすでに作業を始めていた。私は挨拶を返し、黙々と作業に集中する。ハウスの中は温かく、湿った土の匂いが鼻をくすぐる。

そのとき、ハウスの扉が開き、見慣れないスーツ姿の男が顔を出した。


「おはようございます、北大路さん。今日も順調ですか?」


農協の職員のようだ。


「おお、おはよう。最近人を新しく使うことにしたんだわ」


北大路さんが私を指さす。


「はじめまして」


 3人でしばらく、苗や発芽の状態、気温や湿度の話をする。


「最近はこうやってセンサーでデータをとる農家も増えてますね」


「なるほど。うちはまだまだ感覚に頼ってるからな」


「発芽率が上がる工夫、こっそり教えてもらえませんか」


なんて軽い雑談を交わしながらも、会話は穏やかでほのぼのとしていた。


 最後にJA職員がふと、私の手元のメモに目を留めた。

「ずいぶんしっかりと記録してますね?」


「ええ、ちょっと自分用にメモしてるだけです」


 北大路さんはにやりと笑った。


「いや、こいつは面白いやつだ。ちょっと熱心すぎるな」


 職員は軽く笑い返しながらも、ハウスを出て行く。

扉の向こうに姿が消した瞬間、ふと足を止め、視線を戻す。


目の奥には、


「こんな田舎に1人で移住、薬指の指輪。結婚もしているようだし何者なんだ?」


というわずかな疑念がちらりと浮かんでいた......

そんな事を考えられているとは気づかずに、

私は作業に戻った。


 午後の作業を終え、ハウスから出ると、夕日の光が土を赤く染めていた。明日も同じ作業が待っている。しかし、この地で安全な生活と、少しずつわかってくる仕事の面白さが、胸の中に小さな充実感を残してくれた。


「北大路さん、今日もありがとうございました」


「おうよくやったな、随分と手際も良くなってきた」


「まだまだですけど、少しずつ覚えています」


 北大路さんは笑みを浮かべながら、トラクターのカバーを軽く払った。


「そうだ、今夜はどうだ?一緒に飯でも行くか」


「え、いいんですか?」


「お前もこの生活に慣れてきただろう。少し外で気分転換だ」


私は一瞬考えた後、頷いた。


「はい、ぜひ」


 こうして、今日一日の締めくくりは、畑の匂いや汗の残るまま、二人で食事に出かけることで決まった。明日への小さな期待を胸に抱きながら、家へと戻る足取りは軽かった。

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