10話 再会
次の日の仕事終わり、私はそのまま例の店へ向かった。
カバンの中にはUSBメモリ。
今日で、すべて現金に変える。
店主は昨日と同じように一本ずつ確認し、無言で金額を弾き出した。
「全部でこの額で」
差し出された封筒は、ずしりと重い。
中を見ると札束が詰まっていた。
約220万、やっとまとまった資金が手に入った。
何も言わず受け取り、そのまま店を出る。
外の空気が妙に軽い。
気づけば、足はすすきのに向いていた。
ネオン、呼び込み、笑い声。
昼間とはまるで違う街。
適当に入ったガールズバーでカウンターに座る。
「お兄さん札幌の人?」
「まあそんな感じ」
適当に返しながら酒を飲む。
金がある、それだけで心に余裕が生まれる。
ここ数日の焦りが嘘みたいだった。
数杯飲んだ頃、背後から声がした。
「あれ、兄ちゃんじゃねぇか?」
振り返ると見覚えのある顔。
少し考えてから思い出した。
「あ……あの時の」
ヒッチハイクで乗せてくれた、あの軽トラの男性だった。
男は笑いながら隣に座る。
「こんなとこで会うとはな」
「本当ですね」
「今なにしてんの?」
「日雇いです」
「きついべ?」
「まあ……」
男は酒を一口飲んでから、少しだけ考えるように間を置いた。
「うち手伝うか?」
「え?」
「農家やってんだわ。人手足りねぇ時あるんだよな」
あまりにも自然な流れで出てきた言葉だった。
「身分証とか……」
「いらんいらん。日当で払うだけだしな」
軽く手を振る。
解体よりはマシだぞ、多分な」
少し笑う。
確かに、今の仕事よりは良さそうに聞こえる。
「朝早いけどな」
「それくらいなら……」
男はポケットからメモを取り出して、電話番号を書いて渡してきた。
「まぁ困ったら連絡してこい」
「ありがとうございます」
紙を受け取る。
それ以上の押し付けはない。
ただの提案だった。
しばらく他愛のない話をして、男は先に店を出ていった。
「じゃあな、無理すんなよ」
それだけ言って。
外に出ると夜風が冷たかった。
ポケットの中には、大金と一枚のメモ。
金はある。
だが、この先どうするかは決めていない。




