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4GB USB 〜29歳既婚者が過去に戻って一攫千金を狙ったけど現実は結構厳しそう〜  作者: ナカモリトマト


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9話 転売して大儲け

 過去にきてからその日暮らしを続けてきたが、

今まで扱いに困っていたUSBをなんとか金に変えることができるかもしれない......

週末、私は早速噂の店を訪れてみる事にした。


 駅から少し離れた裏通り。

人通りは少なく、街灯もまばらだ。

奥に進むと、古びた看板が見えた。

いかにも“個人経営”という店だ。

ガラガラ、と引き戸を開ける。


「いらっしゃい……」


 奥から出てきたのは、五十代くらいの男だった。

無愛想だが、いかにも商売人という目をしている。


「すみません、買取お願いします」


 私はカバンからUSBを一本だけ取り出した。

全部は出さない。

まずは様子見する事にする。


 店主はそれを受け取り、裏表を軽く眺めた。


「USBメモリか。珍しくもないな」


「そうですね」


 わざとあっさり返す。

店主はパソコンに挿し、少し操作する。

数秒後、わずかに眉が動いた。


「容量、でかいな!」


「まあ、それなりに」


 平静を装う、内心では確信していた。

やはりこの時代では価値がある。

だが、店主はすぐに表情を戻して問いかけてきた。


「で、いくらで売るつもりだ?」


「そちらはいくらで買えます?」


間を置く。


「まぁ、中古ならせいぜい数千円だな......」


 予想通りの安値。

私はすぐには反応せず、少しだけ考えるふりをしたあと、首を振る。


「それはちょっと安すぎますね」


「じゃあいくらだ」


「3万円」


 店主の動きが止まった。


「は?」


「そのくらいの価値はありますよ、それ」


 静かに言う。


 店内の空気がわずかに変わる。


 店主はもう一度USBを見て、今度は少し長めに考え込んだ。


「お兄ちゃん、ふっかけすぎだわ」


「そうですか?」


「こんなの今どきいくらでも」


「じゃあ、他あたります」


 言い切って、手を伸ばす。

USBを取り返そうとした、その瞬間。


「まぁ待て」


 店主が止めた。


 食いついた。


「いくつある?」

「まとめてならもうちょっと出せるけど」


「それ、答える必要あります?」


「ある程度まとまってるなら、話は変わる」


 少しだけ間を置く。


「まあ、もう少しありますね」


「数は?」


「とりあえず50個くらいなら」


 本当はもっとある。だが、ここでも出しすぎない。

店主は腕を組んで黙り込んだ。


 そして、ゆっくりと口を開く。


「1本、1万5千円」


「無理ですね」


 即答。


「1万8千円」


「3万でなければ売りません」


 沈黙。


 店の外を車が通り過ぎる音だけが聞こえる。

数秒後、店主は小さく舌打ちした。


「全部同じ性能か?」


「ええ」


「動作保証は?」


「今見た通りです」


 再び沈黙。


 そして


「分かった。2万5千円でいい」


 その一言で、決着がついた。


 だが私は、すぐには頷かなかった。


「条件があります」


「なんだ」


「現金で。その場で」


「当たり前だろ」


 店主は吐き捨てるように言った。


 私はようやく、小さく頷く。


「じゃあ、また持ってきます」


 USBを一本だけ回収し、カバンに戻す。


 店を出る直前、店主が低い声で言った。


「変なもんじゃねぇだろうな」


 私は振り返らずに答える。


「ただのUSBメモリですよ」


 外に出ると、冷たい風が頬に当たった。 

明日、すべてを現金に変える。

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