08 落とし前
不快なキメラが3体現れる
犬と人と鳥だ
おぞましい見た目のキメラは命令を待つのみでその場で止まっていた
「私の作品だ、楽しみだろう?こいつらがどんな風に殺されるかをさ」
「冗談じゃない、作品って言って自慢げに見せびらかす奴はみんなぶっ壊されて無くなるんだよ」
レイの逆鱗に触れたのか何かを大量に空中へ放った
「ウィンドバースト」
風の魔法によって高く舞い上がる
上を見ると国で使われている銀貨が大量にあった
空中に留まり大量のコイン同士が当たり金属音がなる
「コインを槍に」
そういうとコイン同士が混ざり合い形状をなしていく
空中を見上げると槍が何本も出来上がりそれが降り注ぐ
「よけらんねぇだろこんなん!スラルク、上に熱気放出をつかえ!」
スラルクの体に赤い光が灯る
熱が凝縮されより赤く、白へと変わり熱をレーザーのように放つ。
放った光が触れた瞬間、爆発しすべて吹き飛ばした
焼け焦げた金属の匂いが部屋に充満する
「あーあ、ムカつくから串刺しにしてやろうと思ったのに、さすがは勇者か」
早々に殺しにかかってきたレイが不敵な笑みを浮かべる
「こんなにすごいスキルだったのか!これからも頼りにするぜ!スラルク!」
「まだくるよ!気を抜かないで!」
レイは先ほどの衝撃で崩れた小さな瓦礫を何個も投げてきた
「石を刃に 刃=鉄」
瓦礫の形状がくないのようになり鉄に代わり本物の刃物になる
「そんなのありかよ!」
ツカサはとっさに鞭を振り回すが何本も体を傷つけ一本は肩に刺さる
「うう、めっちゃ痛ぇ……こんなに痛いの初めてだ」
感じたことのない痛みに涙が出る、激痛のせいで体が痺れ動かない
これが本当の闘い、死ぬか生きるかの闘い
「ツカサ君、これ飲んで!」
ポーションを渡されなんとか飲む、傷が一瞬で癒えたようだ
凄すぎる
レイが椅子に座りキメラたちが動き出す
鳥のキメラは空中を、犬のキメラは地面をぐるぐると回りだす
人のキメラは盾を構えながら突進してくる
「スラルク、あと何回使える?」
「あと2かいはいけます!」
「熱気放出を準備してくれ、マオがいない今お前が頼りだ」
再びスラルクの体に熱が溜まっていく
「ガイアアーマー」「敵意注目」
ジウがスキルを使いバリアのようなものが体を覆う
「この人間は俺に任せろ!」
人のキメラはジウのほうしか見ない
突進はそのままバリアにあたりジウに両腕を切られる
シュルシュルと切られた両腕にツタのようなものが巻き付きそのままジウへ攻撃する
「おおっと危ねぇ、けど俺にそんな軽い攻撃効かねぇよ!」
バリアに当たった剣からは火花が散る
「豪烈斬」
ガキンと金属の鎧ごと真っ二つにする音が聞こえる
「残りは私たちだよ!サンダーボルト」
飛び回る鳥のキメラを落雷は激しい音を鳴らし打ち落とす
羽は焦げもう飛ぶことはできないだろう
簡単に倒せていると思っていたがレイはその状況でも余裕があるようだ
「ふふ、キメラは人間を元にしてるんだ、それもとっても強いね」
「ハイク■ス・ヒー■」
犬のキメラの体にある顔から魔法のような言葉が放たれる
その効果で倒れたはずのキメラたちは回復している
「おい!こいつら傷が治っちまったみたいだぞ!」
「聞いたことない魔法だ、何か知らないか?」
「多分だけどハイクラス・ヒールだよ、まさか素材って……」
上位の魔法をこんなところで聞くとは思わなかった
回復されるならまずは犬のキメラから倒さないと
「さすがカヤナ!魔法は詳しいね!
素材はもちろん高位僧侶、でもそいつは簡単には倒れないようにしてある、ほら頑張れ~!」
キメラに守られ奥から拍手の音と煽りが飛んでくる
思わず拳に力が入る
また鳥のキメラが飛び回り人のキメラが腕を伸ばし剣を振り回しながら近づく
「鈍化」「脱力」「バインド」「ポイズン」
鳥のキメラから魔法が放たれる
それを察知したカヤナがすかさず対策をする
「浄化」
白い優しい光が部屋を包み込む
こちらが近づけないように進む人のキメラをジウが攻めることができず
構えることしかできていない
「ジウ、危ないから離れろ!
スラルク!人のキメラを打て!」
超高熱の光が当たり、人のキメラが弾け飛ぶ
犬のキメラが詠唱を始めようとしたところへ、ツカサがすかさずバインドを放つ
「やっぱ呪文唱えるときは少し遅くなってるぜ」
そのままジウが最優先で他を無視しながら犬のキメラまで駆け抜け叩き切る
「ようし、後一体だ!頼むぜ姉ちゃん!」
残された鳥のキメラが魔法を唱えようとした
がそれより先にカヤナの詠唱が終わる
「サンダーボルト」
今度は確実にとどめとなる一撃をカヤナが放った
先ほどまでの戦闘がなかったかのように静かになる
「強いキメラを作ったらしいが、俺らのほうが強かったみたいだな」
「あんな人形みたいなやつら初めてだぜ!後はおめぇだけだ!」
作品と称するまで気に行っていたであろうキメラを倒されても
不思議とレイの表情は落ち着いていた
「これで死なないのは初めてだよ、初見殺しってやつなんだけど」
「ねえ、レイ、今からでも話すことはできない?」
「できない」
カヤナの主張はレイの即答によって消えてしまう
「お前はもう負けたも同然なんだ、キメラはいないし、数はこっちの有利
スラルクのスキル、お前も見ただろ?」
椅子から立ち上がり地面に手をかざす
降伏というような雰囲気ではなくこれから何かをするとき険しい顔をしている
「スライムが脅しに使われるなんて、こっちも本気で行かなきゃね」
地面に魔法陣が浮かび上がる、このまま止めなければ何かが起こる
全員でレイのほうへ阻止するために急いで向かう
「隙だらけだぜ!豪烈斬!」
ジウの隙をついた攻撃が突如床から巨大な岩が飛び出て弾かれる
「これが錬金術の集大成、命を作れる技術『ゴーレム』だ!」
地面が激しく揺れ、飛び出てきた岩は形を作っていく
これがゴーレム、実際目の当たりにすると巨大で勝てる気がしない
「そんなんがあれば、貴族なんて簡単に倒せるだろ」
「それじゃあ拷問できない、力加減ができないからな」
召喚されたゴーレムに手をかざし魔法陣が現れる
「それにゴーレムの真価は私が入ることで発揮する」
レイの体に岩が纏わりついていく
ゴーレムは岩の鎧のようになりレイの体をすべて包み込む
「行っただろう?ゴーレムは命が宿っていると、つまり私が入ればこのゴーレムは私と同じスキルが使えるんだよ」
ゴーレムの中からレイの声が響く
デカさだけでもかなりの脅威だ
何かをされる前に倒さなくてはいけない
スラルクに冷気放出の準備を指示する
「俺らは時間稼ぎだ、スラルク、頼んだぜ」
スラルクが深い青色へと変わっていき、冷気が渦を巻く
ゴーレムは地面を叩く、床が大きく揺れ地震のようになり身動きが取れなくなる
「この間に一人ずつ潰してあげるよ」
身動きが取れずに近づいてくるゴーレム
そのときジウの叫ぶ声が聞こえた
「よっしゃ!耐久戦なら得意だぜ!」
「ガイアアーマー」「敵意注目」
先ほどと同じスキルを使用しジウがまた囮を務める
これでゴーレムはジウのほうしか見ない
「そんなことしてもすぐに壊せば意味のないものになる」
ゴーレムはジウのほうへと向かいこちらは体制を立て直す
「時間稼ぎには最高のスキルだ、俺のは効くかな、バインド」
拘束魔法が弾かれる
流石にバインドは効かないか
「ファイアウォール」「ボムクラッシュ」
カヤナの魔法で自分たちの前に炎の壁ができる
そしてゴーレムの足が爆破し崩れる
「そんな程度で止められるとでも?」
すぐに足が治り炎の壁を簡単に越える
「岩を鉄へ」
ゴーレムの体が鉄になる
重い拳がジウを何度も叩きつける
「ぐぅ、さすがにやべぇかも」
「このまま押しつぶしてやるよ!」
バリアがひび割れていくのがわかる
「ジウ!」
「気にすんな!俺ごとやっちまえ!」
確かに今がチャンスではある
ジウの頑丈さを信じ命令を下す
彼女は被害者かもしれない、けれどこうして戦ってる
話がしたい、そうしなければならない、
犯してきた罪が残虐であったとしても
「――スラルク!今だ!」
ピン、と空気が弾ける音がした
スラルクから冷気の圧縮された魔力が放出される
視界が青に染まり冷気の強さに近くにいるだけで毛先が凍る
青白い光がゴーレムとジウを包み込んでいく
「凍ったそばから錬金すればいい!鉄を岩へ――」
「――氷は水へ」
ゴーレムは鉄の体を岩に変える
レーザーを受け止めるが次第に動きが鈍っていく
もうすでに周りの床や壁は凍っている
錬金術によって抑え込むのは限界の様だ
「スライムごときのスキルで私のゴーレムが……?」
ジウも同時に凍っていくがほんとに大丈夫だろうか
「っぐう、間に合わん、こんなところで……まだ私の復讐は……」
完全に凍り付きゴーレムは動きを止めた
「勝ったんだよな……」
「まだ終わりじゃないよ、レイを連れ出して捕まってる子たちを助けなきゃ」
そうだ、まだ戦いは終わっていない
ここから逃げる、はやくそうしなければ
「とりあえずさっき俺を牢屋に入れた落とし前は付けさせてもらったぜ
スラルクもよくやったな、全部お前のおかげだぜ!」
(がんばりました!)
ぷるるんとスラルクは嬉しそうに伸び縮みをする
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―――時間はツカサが捕まる前に遡る
「とりあえず空きがないからここがお前の牢屋だ
へへへ、あとで客が来る前に遊ぼうな~」
「……」
「んじゃ、あとでね~」
マオはひたすら我慢していた
この悪臭に、理不尽な対応に、空腹に
「こんな汚いところで寝なくちゃいけんとはどうかしているな」
「は、初めまして……」
か細い少女の声がした
マオの入った牢屋には先客がいた
それは酷くやせ細っていたが角があり人間ではなく鬼だった




