07 最悪な錬金術
何時間経ったかわからない
牢屋に入れられどうすることもできない時
土煙の中から知ってる人物が二人現れる
「カヤナ?!お前裏切ったんじゃないのか?」
「裏切る?そんなわけないでしょ!あんまりにも遅いから様子を見に来たの!」
牢屋に閉じ込められ逃げ場がなかった俺はどうすることもできなかった
しかし目の前には裏切ったといわれたカヤナがいる
「まさか嬢ちゃんの協力者がツカサだとは思わなかったぜ!」
そしてもう一人は転移した初日、酒場でアドバイスをくれた冒険者ジウだ
「久しぶりだな、なんでこんなところにいるんだよ?」
「俺の仲間のヨウがこいつの知り合いでよ、依頼をたまに受けてんだ」
確かにこいつは頑丈そうだし実験台には持って来いってことか
「ヨウとホドは一緒か?」
「あいつらは外で待機してる、いつでも馬車走らせて逃げれるようにな」
「あの二人も元気ならよかったよ」
「おう!ビンビンだぜ!」
緊張から解放されたからか思わず談笑してしまう
「そんな懐かしんでる場合じゃないでしょ!
さっさとレイつれてマオちゃん回収して逃げるよ!」
「ありがとな、助けられなかったらって思うと泣けるよ」
「もしもを想定しない作戦なんてしないからね!」
大きな爆破音を聞きつけ人が集まってくる
この爆発音でマオも動いてくれていたらいいが
「いたぞ!脱走だ!仲間もいる、容赦なく殺せ!」
「ファイアボール」
すかさずカヤナが呪文を唱えこちらに向かってくる敵は燃えた
「この冒険者ジウの力を舐めてもらっちゃ困るぜ!!」
たくましい腕から繰り出される斧の一撃は強烈
切りつけられた相手の体が真っ二つになる
「いやいや普通に殺しちゃだめだろ」
「いまさら何をいってるのツカサくん、殺されそうになったのに優しすぎるよ!」
「この世は生きてたら勝ちなんだ、襲ってきた時点で死んでもいい覚悟はできてるさ」
思っている以上に覚悟が決まってるやつが多いらしい
まだ遠足気分でいるのか
でも殺すことを選択肢に入れなければならないのは確かだ
だが爆発があったにしては妙に人が少ない気がする
「なあ、ここは地下のどの辺なんだ?」
「ここはエリア12のさらに地下にある場所、ここに牢屋だったり人には見られちゃいけないものが在ったりするの」
じゃあここにマオもいるってことか
爆発音でわかってくれたらいいけど
「へへ、奴隷市場ってのは汚ねぇとこだな!」
「もうこんなとこには来たくないね……」
「そういえばどうやってここに来たんだ?」
「私の魔法で潜入したの!」
「便利だなほんと」
少し駆け足になりながらの雑談
体が鈍っていたらあまり話せなかっただろう
突然ジウが足を止める
「おい、ちょっと止まったほうがよさそうだぜ」
「えぇ……なにこれ……」
「まじか……」
大量の死体と血の海
死体は千切れたであろう腕と足が散乱している
そしてその真ん中には四つの腕と目をもつなにかがいた
「「あ、あ、あ」」
二人の声が混ざり合うような奇妙な声と共にこちらに走ってくる
「「あああああ」」
これはやばくないか?
「パラライズ!」
魔法が効いたのか痙攣して動きを止める
「おい!おい!なんだありゃ!人間かぁ?」
ジウが切りかかろうとしたのを止め、アレが何なのかを問う
「た、たぶんキメラだよ……それも人間と人間の」
「キメラ?なんでそんなのがここにいるんだ?」
「あれはレイがここで錬金術を使って作ったんだと思う……」
錬金術は物と物を混ぜて違う性質や形を変えるスキルだ
本来なら石と氷を混ぜて溶けない氷を作れたり
木と鉄を混ぜて鉄の強度を持った木のテーブルが作れたりする
「これは流石にひどすぎるだろ……」
「そんなこと早く止めなくちゃいけないよね、レイが奥で待ってる」
まだ未熟なパラライズでは持続時間が短い
話が終わると同時にキメラは動き出しジウも動く
「「があああぁ!」」
「うるせぇだけで動きはおせぇな!」
ジウが右腕の一本を切り落とす
――が残りの3本で腕と足を捕まれる
「まずい!こいつがここの人たちを力だけで引きちぎってたんだ!」
ミチミチとジウの両腕と片足が鳴る
魔法を使うとジウごと巻き込むことになるのでカヤナも動けずにいる
「俺のことは気にすんな!こんなやつの力に負けるかよ!」
「オーバーパワー!」
捕まれていないほうの足でキメラの体を蹴り上げ
力で腕を振りほどく
「いまだ!こいつにぶっ放してやれ!」
ジウが離れ、できた隙をカヤナは見逃さない
「サンダーボルト」「ニードルブリザード」
瞬時にキメラに雷が落ち、氷の棘が何本も突き刺さる
「「あ、あ、ありが、とう……」」
キメラの動きは止まる
「さっきのは、元になった人間の感謝かもな」
「へ、どうしても死にてぇ時は楽にしてやらねぇとな」
カヤナはキメラに向かって無言で手を合わせる
「よし、行こ?この先にレイはいる」
しばらく進むが人の気配がない
きっとさっきのキメラがほとんど殺してしまったのだろう
「そろそろつきそうか?」
「結構歩いているよなぁ?もう走りつかれちまったぜ!」
「大丈夫、今着いたからさ、この先の扉にいるよ……」
ジウが思いっきりドアを蹴破る
「作戦も立てずになにやってんだ!」
「先手必勝だぜぇ!ツカサ!」
脳筋すぎて話にならない
地下にしては天井が高くシャンデリアが飾ってある
周りには拷問器具のようなものがたくさん置かれている
「レイ!」
レイの姿が見えた途端にカヤナが勢いよく飛び出した
「久しぶり、カヤナ」
レイは椅子に前かがみで座っており薄っすらと笑っている
「なんでそんなんなっちゃったの?昔の優しいレイはどこにいったの?
どうしてツカサ君に私が裏切ったなんて嘘ついたの?」
ため息をつき足を組み気怠そうに話し出す
「質問が多すぎる、魔法以外の取り柄がないだけはあるな」
感情的になりながら泣きながら話すカヤナ
それとは対照的に落ち着いているレイ
「お前一体何がしたいんだ?ここまでして奴隷市場にいるのはなぜだ?」
「勇者まで質問か、いいだろう、全部答える、けどそのあと殺す」
先ほどの笑みはなくなり鋭く睨みつけてくる
こちらも思わずたじろいでしまう
「こうなった理由は拷問による調教、そこで優しい私は死んだ」
「拷問って私のせいでそんな……」
カヤナは膝から崩れ落ち、声は震え涙は流れ続けたままだ
「ふふ、”裏切った”と言った理由はそのほうが絶望するだろう?
私もここで嫌というほどそれを味わった
自分がやられるよりやるほうが気持ちいいからしたんだ」
へらへらと薄笑いをしながら脱力した腕をゆらゆら動かし煽ってくる
「自分の不幸を他人に味合わせたいってことか」
「そりゃひでぇぜ姉ちゃん、騙されたほうは辛いぞ!」
「お前らに何がわかる!」
レイの大声によって辺りは静まり返る
「私の目的は貴族の奴隷化だ」
貴族を奴隷化?何を言っている
「私を弄びおかしくした貴族どもを奴隷にしておんなじ目に合わせてやるんだ
貴族の奴隷化には権力がいる、その権力を買う為には金が要る
権力を持つものが全てにおいて上なんだ、それが私の”夢”なんだ」
おかしくなっている、俺が願った夢とは遠くかけ離れたものだ
「お前の過去に何が起きたのかは知らないけど言いたいことはわかる
でも今お前は人を苦しめる側だ、だから今日でここを壊す」
ただの救出依頼だった、それがここまで大事になるとは思わなかった
だけど自分も危険に晒されて黙っておくのはもうやめる
マオの状況もわからないから早急に片付けよう
「全部お前のせいでもあるんだよカヤナ
お前がハーフエルフだということを隠していたのがすべての原因だ」
「ハーフエルフ?そうなのか?」
「うん、ほとんど体に特徴はないけど、この隠してた耳、見られたんだ……」
カヤナの耳が丸みを帯びたものから特徴的な角が現れる
「それだけでレイは連れていかれたのか?」
「うん……この国は人間以外の入国には制限があるから申請しなきゃなの」
「なんで申請しなかったんだ?」
カヤナは深刻そうな顔になる
「申請って言っても正確には身体検査を行った後に奴隷になるの
何かと理由をつけてね
そんなリスクを冒してまでこの国に来た理由はお母さんがいなくなったから探していて、そこでこの国にたどり着いたんだ」
だから何年もこの国で人間のフリをして調査してたのか
母親思いで愛されてきたんだなって思ってしまった
「だからってあまりにもリスクが高いじゃないか」
「でもリスクを知ったうえで自分で確かめたかったの……
レイと協力して来たのに――、こうなっちゃった!」
顔には作り笑いを浮かべ涙が溢れている
余りにも理不尽だ
そんなこと許されることじゃないが、今はこの現状を作るのも悪いことだ
「あーもう話だけしていてもどうにもならないな……
拷問してカヤナの考えを正さなくちゃ、全部全部悪いのはカヤナだから」
レイが立ちあがる
何をしてくるかわからない以上全員に緊張が走る
「難しい話はよくわかんねぇけどこの姉ちゃんぶっ飛ばせばいいんだよな!」
ジウが斧を両手で持ちにっこりと笑う
「そういうことになる、いくぞスラルク」
スラルクが後ろから飛び出しプルンと大きく揺れる
「ちゃんと、後で話をしよ、だからあなたを今ここで止める!」
涙をぬぐいメガネを掛けなおし杖を構える
「ツカサはテイマーってやつか!とりあえずお前もよろしくな、スライム!」
三人と一匹が戦闘態勢に入る
「四対一って卑怯だよね」
レイの後ろから魔物のようなものが現れる
「どう?さっきの試作キメラとは違って成功したキメラ!」
犬のキメラは頭には金髪のようなものが在る
体の横に女性の顔のようなものあり、体に杖が刺さっている
人のキメラは腕が片腕は剣、もう片方には盾が直接ついている
頭はなく代わりに花が一輪咲いている
鳥のキメラは口に拡声器のようなものがついている
足が人の手になっている
「――、悪趣味なやつだな」
余りに奇妙なキメラにツカサは少し笑っていた




