05 魔法の実験台バイト
異世界に来て数日
旅の資金の為に仕事をこなすがそこまで大きな収入を得られるわけではない
かといって大きな討伐系もあまり見かけない
「そろそろこの町からでないといけないよな~」
「いや、別にこのままでも私はいいけどな」
マオは退屈そうにベットに仰向けで寝そべり頭の後ろに手を置いている
「移動手段が歩きって大変じゃん、かといって馬車買う余裕もないしな」
「別に馬なんて勝手にテイムして使えばいいじゃないか」
「いや普通にだめだろ」
「変なプライド捨てて勇者って言えばいいのに
――、スラルクもそう思っているぞ」
「ツカサさまはもっとえらそうにすべきです!」
「周りの視線が嫌なんだよ、期待してるよっていうかそんな感じなのが」
「ま、私たちを養うのがお前の仕事だろ~頑張ってな」
そういいマオはベットに大の字になる
流石に何かしないといけない
とりあえずギルドに行こう
「もう完全に町の人たちはマオのことを見慣れてきているな」
「私に怖気づいているだけじゃないのか?」
「たまに変な自身持つよな」
来たばかりの時は必ず視線を感じたが最近はチラ見程度だ
ある程度顔を覚えて危害がないから何とも思わないのだろう
ちなみにスラルクは俺のフードの中に隠れている
普段はフードを被ることもないしちょうどいいサイズだ
「うーんいい仕事はないものか……」
一通り見て報酬が破格なものをみつけた
「報酬金貨50枚?!」
今まさに金欠を解消するのにぴったりな報酬だ
問題は内容がどんなものかによる
魔法の実験台
あらゆる魔法を受けてもらいます
危険な分報酬は金貨50枚
場所は北の端にある建物
いやーどう考えても怪しい
が、幸い近くに耐久力がありそうなやつと魔力伝導をもつスライム……
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「おい、ほんとにこんなボロボロの建物の中に金貨50枚の仕事があるのか?」
「ギルドにはそう書いてあったんだ、だめなら帰ればいいさ……」
建物はまるで廃墟のようでとても人がいるとは思えない
思わず騙されているのではないかと思ってしまう
扉をノックしてみる
「こんばんは~……」
「は~い、いま行きますよ」
遠くから返事が返ってきて少し安心する
出てきたのは茶髪のポニーテールの女性だ
丸眼鏡をして白衣を着ている
「あ!あなたはギルドから依頼を受けた実験台になってくれる人?!」
「いや、受けたのは俺なんだが受けるのはこいつとスライムなんだが……」
彼女はこちらに近づき俺たちのことを上から下へと品定めのように見てくる
「ふむふむ、半獣人と……スライム?まあいったん中に入ってよ!」
「おい、実験台なんて聞いてないぞ」
「まあ話を聞こうよ」
不満そうにこちらを睨みつけてくるが無視する
「まずは自己紹介、私はここで魔法を研究しているカヤナ!よろしくね」
「俺はツカサ、こっちはマオで、スライムのスラルクだ」
「魔物を従えてるってことは、ツカサはテイマーなんだね!魔物に魔法を使えるなんてほんとラッキーだよ!」
「魔法の研究って何してるんだ?」
「状態異常とかがちゃんと上手く機能するかとか、魔法の耐性を貫通する限度とかを調べてるの!
自分で魔法陣を描くとちゃんと使えるかわからないからね」
俺の持っているマジックウィップも魔法陣が石に刻まれている
スクロールや魔道具が使えるかどうかを調べたいんだな
「俺はあんまり魔法のこと詳しくなくてさ、どうしたら使えるんだ?」
「スキルとして覚えたいなら自分で描いた魔法陣に触れるとその魔法に適応するなら覚えられるよ!」
「魔法陣描くのって難しいよな?」
「う~ん、簡単なのならすぐ描けると思うよ、難しいのはレベルが高くないと覚えられないけどね」
なるほど、なら俺でも魔法が覚えられるかもしれない
「なあ、空いた時間でもいいから魔法を覚えられないか?」
「いいよ!むしろたくさん使う人増えてほしいからさ!
最近はみんなスクロールとか道具ばっかりだからさ~」
嬉しそうに本棚に行き本を漁りだす
「そうなのか?スキルとして使えたほうが楽そうだけど」
「それはそうなんだけど使えるだけだからね。
魔法を上手に使える人の魔法のほうが強いからさ」
自分の弱い魔法を使うのに魔法陣で覚えるぐらいなら強い人の奴を買うのか
「理解したよ、それで依頼はいつやるんだ?」
こちらがマオのほうを見ると知らんと言わんばかりに視線を逸らす
病院に来た犬の様だ
「ちなみにスライムは固有種だよね?」
「そうだけど?」
「この子はスライムでも珍しく魔法を使えるんだけど、覚えてないよね?
どんな魔法を覚えさせたい?」
にやりと笑みを浮かべる
いい実験道具を見つけたので試したりしたいのだろう
「スライムは俺のイメージだとブレス系の技を使うのが強いからな……
火の魔法を覚えさせられるか?」
「オッケー、あとはこっちに任せてもらっていいかな
魔法陣の本、そこにあるから好きにみていいよ!」
二人にはカヤナの言う事を聞くように命令しとこう
特にマオ
「じゃああとは頼んだぞ」
「おい!スラルクだけでいいだろ!置いていくな~!」
何時間か経ったか
とりあえず魔法を何個か覚えることに成功した
俺はサポートとテイムに使えそうな魔法を取得した
《パラライズ》 《バインド》 《スリープ》
相手の行動を制限するデバフを使えるようになった
Lvが自分より低いと効果が出やすいらしい
「お待たせ!いい実験ができたよ!」
扉が開きカヤナが出てくる
後ろには自信に満ち溢れたかのようなスラルク
青ざめた顔をして疲弊しきったマオがいた
「人間、私が自由になったらこの借りを必ず返すからな……」
「マオちゃんありがとね!後でおいしいもの食べよ?」
「……絶対だぞ」
すごいな、もうマオの扱い方に慣れている
「カヤナのおかげで魔法を覚えられたよ、ありがとう」
「それはお互い様、私の魔法はちゃんと機能して使えたからマオちゃんは休ませてね。
それとスラルクくんなんだけど、すごく強くなったから期待して!」
強くなった?
確かに仲間が魔法を受けていたからかLvが上がっている
それとは違いスラルクは固有種なだけあって魔法を使えるだけで強くなるのか
「どんな風に強くなったんだ?」
「火の魔法を覚えたんだけどそれがどんどん体に溜まって一気に放出!
それですっごい攻撃ができるようになったの!
それと試しに火の真逆の氷の魔法も使えるか試したら使えるからすごいよほんと!」
「そんなおまけまでしてくれたのか!すげぇな!」
「でっしょ~?たまたまできたけどすごい楽しかったよ!
2属性を初めてであんなに扱えるだけですごいもん」
本来は時間をかけて極めるんだろうな
スラルクは固有種だから出来たんだろう
他にもとんでもない潜在能力があるかもな
【スキル】 《ファイヤ》 《フロスト》
【固有スキル】 《熱気放出》 《冷気放出》
今度使ってみよう
レーザーってことは俺の思っていたブレスと違うけど期待が持てるな
「殺傷性のない魔法、ツカサ君の覚えたみたいなパラライズとかね
そんな魔法はスクロールとかにすると売れるんだ~
だから問題がないか確かめるためにこの依頼をしたの」
売店で買ったことあるサイレントはこういう所から売られているんだな
「だから売り上げもあるから高い報酬で依頼してるんだな」
「そう、だけどほんとに強そうな人にしか頼まないけどね!」
もし殺したりしたらいけないからちゃんと人を選んでるってことか
「さっき言ってたおいしいご飯……いつになったら行くんだ」
ずっとこっちに何か言いたそうにしてたけどそれを言いたかったのか……
「今日はいい実験ができて気分が良いからさ、私がご飯奢るよ~!」
「本当か!それはお言葉に甘えさせてもらうよ、ありがとな!」
「私の行きつけのお店があるからそこに行こ!」
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「ふーー食った食った、ごちそう様」
「美味しかったでしょ~、ここのパスタ、よく来るんだ~」
「いい店だな、気に入ったよ」
日本で食べていたものとそん色ない
たらこパスタのような魚卵のパスタは絶品だった
「マオはまだ食べてるけどいいのか……?」
「いいのいいの!頑張ったご褒美!なんかお世話したくなるよねマオちゃん」
俺らが食べ終わってもまだ食べ続けている
よほど気に入ったのだろうか
「この料理はなんだ?この長いだけの小麦がここまで旨いとは知らなかったぞ」
また連れてきてやろう
「好きなだけ食えと言われたからな、食うぞ私はどっかのケチな主人と違ってな」
「金欠だったから仕方ないだろ」
「あはは、君たちは本当に面白いね。
ここにご飯を誘ったのはね、ただのお礼じゃないの」
カヤナの表情が真剣で重くなる
「そうなのか?何か頼み事か?」
「ギルドに依頼すると確実に受理されない依頼なんだけど受ける気はある?」
ご飯を奢って貰ってるから断りずらい、話だけでも聞くことにする
魔物の討伐依頼や珍しい物の採取だろうか
「どんな依頼なんだ」
「中央都市 マルス、その中の闇 『奴隷市場』に潜入してほしいの」
彼女の依頼は予想とは大きく違うものだった
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前田 ツカサ
Lv16 人間 テイマー
装備 マジックウィップ
【スキル】 パラライズ バインド スリープ
【固有スキル】 インベントリ
【職業スキル】 テイム 隠密 魔物看破 感覚共有
【アビリティ】 勇者 不老
スラルク
Lv16 スライム
【スキル】 対話 ファイヤ フロスト
【固有スキル】 熱気放出 冷気放出
【アビリティ】 勇者の仲間 テイム 斬撃無効 魔力伝導




