02 強制テイムと狼
気持ちのいい朝だ
昨日はかなりいい情報を聞いた
道具と装備を揃えてアデノ平原に向かおう
その前にこの宿を一旦準備が終わるまで使おう
「今借りてた部屋、今日も借りたいんだけど」
「はい!よければ何日も泊まるなら前払いで何日でも受け付けますよ?」
「ありがとう、ならとりあえず3日分払うよ」
「ありがとうございます!3日間はお好きにお使いください!」
これでひとまず宿は安心だ
受付の人に聞いた道具屋と武器屋に行こう
「いらっしゃいませ~」
店内に入ると奥からしわがれた声の老婆が顔を出した
「どんな道具がありますか?」
「おや、初めてのお客さんだね?好きにみていいからね」
店内は狭く、薬草やポーション、魔法のスクロールといったものまで取り扱っている
「スクロールって誰でも魔法が使える使い切りアイテムか
高いけどかなり便利そうだな」
「わからないことがあったら聞いてね~」
魔法を使いたい欲に駆られスクロールの棚を物色する
「このサイレントってどんな効果があるの?」
「サイレントは自分の音を全部消す魔法だよ、声や息の音さえ消えるよ」
隠密は気配を消すスキル、それと合わせたらすごそうだ
「勇者様!応援してますね~!」
結局左手を見られてバレてしまった
周りに人がいないからよかった
道具屋で買うものは買ったので武器屋にきた
「いらっしゃい」
屈強なおっさんだ
「俺はテイマーなんだがなにかいい武器と防具はないか?」
「テイマーか……武器を握る職じゃねえから鞭、弓なんかはどうだ
俺の知っているゲームだとテイマー系は鞭や剣を主に使っていたが俺は剣を扱えると思わない、そして弓の扱いなんてできるわけもない
「鞭を見させてくれ」
「使うやつは珍しいから2本しかないんだ
革製の鞭とマジックウィップだ
マジックウィップは魔法石が埋め込まれていて、振ると魔力で出来た鞭が出る。自分の思った距離まで延びる性質をもつ、ただ伸ばしすぎると強度がなくなって千切れるから気をつけなきゃいけん」
「どう考えてもマジックウィップがいいな、いくらだ?」
「皮の鞭は金貨2枚 マジックウィップは金貨30枚だな、魔法を使ってるからほかの質のいい武器より高いんだ」
買えない、、、どこかで稼ぐしかないか、、、
勇者の紋章見せびらかして値下げ交渉とか町の人たちに協力してもらうとかあるけどプライドが許さない
「金貨10枚ぐらいで買える防具とかあるか?」
「防具で金貨10枚だとアーマー系は無理だな、まぁにいちゃんはフルアーマーを着るような職じゃないからいいけど10枚ぐらいの金貨じゃ大した装備は揃わないぞ」
RPGでよくある王様から貰える金が少なすぎる問題がまさかこの異世界でも起きるとは思わなかった
「そうか、あんまり金の相場とかわかってなくてな、鞭だけ買うよ」
「金の相場がわからないなんてどんな田舎からきたんだ?
まあ稼いでいい武器買っていってくれよ」
「ありがとう、がんばるよ」
金貨を武器屋に渡す
「ん?その手にある紋章は勇者の紋章か?!」
「ああ、もうあんまり見せびらかすもんじゃないと思ったけど見られたか……
勇者だからって値引きとか求めないから安心してくれ」
「いや、勇者なら別だ
そりゃこの世界の金の価値はわからないよな
勇者を助ける義務が俺らマルス様の信徒にはある
この店のもんは好きに持っていってくれ」
「いやいや!それはありがたいけど物はもらえねぇよ!」
先ほど寄った道具屋はなんとか金を払った
道を歩いているだけで羨望の眼差しを向けられる
歩いてるだけで隠密を使うことになる
「じゃあ俺が必ず金は返すから装備を貸してくれってことはどうだ?」
武器屋は少し悩んだ
「それなら構わねぇけどよ、あんたは真面目な勇者だな
ほら、別に金はいつでもいいし払わなくてもいいからな」
「ありがとうな、あと手袋とかはあるか?」
「ああ、こんなのしかないがこれでいいか?」
「全然かまわない、これも使わせてもらうよ」
マジックウィップと手袋を手に入れた
後で必ず金を払おう
手袋があれば勇者ってことを隠せるようになる
みんな勇者ってだけで急に人が変わったかのように自分に何でもしようとする
それが少し不気味でいやだ
普通に接してほしいと思ってしまう
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準備よし
道具屋で買った匂いを消せる煙玉
魔法をだれでも使えるようにするスクロール
今回は自分の音を消せるサイレントを買った
肉屋で買った魔物用の肉
全てインベントリから出し入れできるからかなり楽だな
俺は猫派だが犬もかわいいと思っていたので飼ってみたかった
犬はなでると嬉しそうな顔をするのが好きなんだよな
「さすがに緊張するな」
町の出入り口には門番がいる
町から外に出て入るのは簡単だ
逆に入るのは厳しい検査があるらしい
「通行許可証だ、失くしたら入るのに検査することになるからなくすなよ」
「門番の仕事を増やさないように気を付けるよ」
よっぽどのことが無ければ入れないことはないだろう
ただテイムした魔物はずっと一緒にいるのかが気になるな
インベントリに入れられるとは思えないし
「平原についたことだしアイテム使って捜索するかな」
煙を浴び、魔法とスキルを使う
「隠密」
スクロールを広げ呪文の名前を唱える
「サイレント」
自分の音が消える
喋ってるつもりでも声が聞こえない
ここからいなくなったみたいだ
平原というだけあって見晴らしはいいのだけど安心はできない
牛が何頭もいる、これが放牧されている牛
そして魔物がいる
ゼリー状の動くもの まんまるでプルンとしている
魔物看破を使ってみる
スライム
Lv1
「まじでスライムだ」
この世界では緑色なんだな
「テイム!」
何も起こらない
《強制テイム》は最初のテイムにしか使えないらしい
だから通常のテイムは使えないんだな
諦めて鞭を握り思いっきり振る
アイテムとスキルによってこちらに気づいていない
外しても気づかないので練習になる
何匹も倒しインベントリを確認する
Lvが2になっている
この世界はステータスが上がるとかはなく経験によって体感で強くなっていく
逃げても捕まえても何かを経験しているのでその体験が数値になる
それがLvで上がっていけば使えるスキルやアビリティが増えるので上げて損はない
しばらくスライムや虫の魔物を倒していた
Lv4になる、やっぱ弱い魔物は経験値が低いな
テイムしたいけど強制テイムを使うのはもったいない気がする
「人間、ここで何をしている?」
突然の声掛け
心臓の音は聞こえないが聞こえていたらすさまじい速度で鳴っていたはず
後ろからとてつもないプレッシャー
冷汗が止まらない
間違いなく噂の狼だろう
「大地の中に無臭がある、それだけで違和感だ
何をしていたか言わなければ殺すし答えによっては殺す」
おいおいおいまじかよ、振り向いていいやつなのかこれ??
ガチで喋るじゃんこいつ
てか答えようにもサイレントで声聞こえないんじゃね
詰んだ?
ゆっくりと振り返ると巨大な狼がいた
黒色の毛並みで赤い瞳がこちらを見つめる
ちょうど自分の頭ぐらいの位置に口がある
首には首輪があり王冠の形をしている
魔物看破を使ってみる
インベントリは視界にも出せて自分以外に見えない
看破した情報をこっそり確認する
『Lv差がありすぎるので看破できません』
まじか
「音を消しているのか?そこまでして隠れて何がしたい」
「平等」
狼がスキルを使ったのか自分の心音が聞こえた
「魔法が消えた?!」
「スキルも魔法もお互いの全て打ち消すスキルだ
これでお前の姿を見たぞ、もう逃げられない、さあ答えろ」
どうする、最善の答えを――、
「俺は勇者だ、だけど臆病者でな、こうでもしないと外を出歩けないんだ
巨大な魔物がいると聞いてきたがお前がそうなのか?」
手袋を外し紋章を見せ嘘をつく
「勇者?ならなおさら殺さなくてはいけないな
魔王の敵、女神の味方となったことを死んで後悔しろ勇者」
「ちょっとまて!!!」
思わず殺されそうになったが待ってくれてよかった
ここからが勝負だ
余計なことは聞かないで必要なことだけ言って油断させる!
「お前は魔王なんだよな?」
「そうだ」
「俺は勇者だけど戦う意思はない」
「どう信じろと?」
「俺は丸腰だ、そしてお前たちに協力したい」
腰にあった鞭を地面に投げる
「協力とはなんだ」
「女神の居場所を教える」(もちろん嘘だけど)
「奴の居場所を?信じていいのか?」
思ったよりちょろいかもしれない
このまま攻める!
「ああ、大いに信じていいぞ!
お近づきの印に高級な肉を渡そう、いままでこんなに友好的な奴いないだろ?」
「ふむ、今まで出会ったものは皆まずは剣をとり殺意があったな」
それはそうだ、お前をテイムするのが目的だからな
「俺には殺意はない」
「それで高級肉はどこにある」
「このサイズしかないがどうだ?」
「旨そうな肉だ、だがその量では足りないな」
「毎日持ってくるよ、とりあえず信じてくれるか?」
「信用するまでそうするといい不審な動きを見せたら殺すからな」
まさかここまで簡単にいくとは
肉を地面に置くとそれを一口で平らげた
「な、なぁ、信頼の証として握手しないか?」
「握手とはなんだ」
「人間は手と手を合わせることで信頼するんだよ」
「そのようなことをして何になる」
「人間は弱いからなにか証拠がないと不安なんだよ」
「好きにしろ」
魔王の前足が差し出される
その前足に左手で触れる
思わずにやけてしまう
「ありがとうな、これからよろしく」
「強制テイム」
魔王が大量の魔法陣に囲われる
「なんだ?!なにをした!」
「お前は俺の飼い犬になるんだよぉ!!」
抵抗しようにも動けない用だ
自分自身も動けないでいるのがその証拠だろう
「動けん!手を放せ人間!どうなってる!?」
巨大だった体は小さくなっていく
そして人の姿になる
目の前の巨大な狼は耳が生え尻尾のある少女になった
困惑しつつも握手したまま2人は目を合わせる
「俺の犬を飼うペットライフは……?」
「私はなんで人間になっている……?」
テイマーとテイムされた魔物
勇者と魔王
2人はテイムされた直後から気持ちが通じ合う理想的な始まりだった――
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前田 ツカサ
Lv4 人間 テイマー
装備 マジックウィップ
【職業スキル】 テイム 隠密 魔物看破
【固有スキル】 強制テイム インベントリ
【アビリティ】 勇者 不老
魔王?
Lv?
装備 不明
【スキル】 不明
【アビリティ】 不明




