12 旅立ち
テイムして欲しい
出てきた言葉に衝撃を受けた
「テイムって本当に言ってるのか?人間をテイムする気になんてなれないよ……」
俺はテイムを家族にしたいって思った奴だけにしようとしてた
それは昔からの夢、生き物を飼う
でも今回は完全に人間をテイムすることになるのがとてもモヤモヤする
「私が犯した罪は消えない
だからせめて勇者の力になりたい、どんなことでもする
かなり身勝手な願いだけど受け入れてはくれないだろうか」
少し悲しげにこちらを見つめてくる視線に目を合わせられない
モモナはテイムしなければ救えなかったし鬼だ
マオは最初は狼だった
「ツカサ君、人間をって言ってるけど正確には私たちは人間じゃないの」
「人間じゃない?カヤナはハーフエルフなのは知ってるけどレイは違うのか?」
「私は自分自身を実験台として人間ではなくなっていた」
レイは自身の腹部を見せそこには無数の傷跡があり傷跡は薄く光っていた
「自らの強化の為に体の一部を破壊し作り直すことを繰り返していった。
その結果ホムンクルスになっていたんだ」
自分と強くするためにそこまでしていたと思うと悲しくなる
「なるほどな……でもテイムするとは決めてないぞ」
「わかっている、ただツカサ、君のために尽くしたいと思っている
カヤナとの再会、狂ってしまった私を正してくれた
そのお礼と酷いことをしてしまった償いがしたいんだ」
ここまで言われてはノーとは言えなくなってきている
しばらく無言の時間が続き答えを出せずにいる
少し
「―――決めた!テイムはするよ」
カヤナとレイの表情が明るくなり、少し安心したようにも思える
「よかった、これで勇者の仲間だね!」
「レイはわかるけどカヤナはなんで仲間になりたかったんだ?」
「私もレイに悪いことをした、だからレイのしたいことを私も助けていきたいんだ!」
にっこりと歯を見せて笑うカヤナ
初めに会ったときの明るいカヤナになってくれてうれしいな
「あとお前たちには冒険について来てもらうつもりはないからな」
「え?そうなの?」
「あぁ、困ったとき助けてくれる、そんな感じの存在でいてくれ
あと奴隷になってしまう人たちを救うっていう使命があるだろ?」
思わず我慢できなかったのかカヤナが勢いよく抱き着いてくる
「ツカサ君は本当にわかってくれてて嬉しい!
ありがとう!これからもよろしくね!」
「あんまくっつきすぎるなよ!」
「ツカサ、こんな私を受け入れてくれてありがとう
いつでも助けになるよ」
レイが手をこちらに差し出してくる
それを見たカヤナがその手に手を重ねる
二人の手に触れると仲間が増えるという喜びがこみ上げてくる
「―――テイム」
「いや~美味しかったね~。ここのハンバーグは仲間記念のお店だね!」
「ほんとに美味かった、またみんなで来たいな」
「カヤナとレイと言ったか、新入りのお前たちは私に食べ物を譲る権利を与えよう」
「マオちゃん可愛いからたくさん上げるから安心して!」
「うむ、さすがカヤナだ」
異世界にきてたくさん嫌なこと怖いこと、嬉しいこと楽しいこと
短い期間だったけどたくさんあったなぁ
「ツカサ様?」
無言で楽しむ仲間たちを見つめる俺を不思議そうにモモナが気に掛ける
「なんか今めちゃくちゃ幸せだな」
「はい!私も――めちゃくちゃ?幸せです!」
ぽつりとつぶやいた言葉にモモナは反応するが知らない言葉がある
ずっと牢屋にいたんだ、知らない言葉があってもおかしくないが
頑張って使おうとする姿がなんだか愛おしい
「あはは、めちゃくちゃって物凄くって感じの意味だよ
モモナはこれからは言葉とか常識の勉強だな」
「すごく楽しみです!」
(ぼくも楽しみですツカサさま!)
スラルクも今回の戦闘で凄まじいスキルを見せてくれた
全員のレベルは上がりたくさんスキルを覚えたのであとで確認しよう
「気になったんだがマオの種族はなんだ?
獣人にしては人間よりで半獣人にしては身体能力が高すぎる」
レイの疑問に対して答えていいのかわからない
もう仲間だし打ち明けてもいいのだろうか
「私は魔王だ、この勇者にテイムさせられてこき使わされている」
このバカ!なにも考えずにそんなこと言うなよ!
「うーん、確かにマオちゃんの正体は気になる、仲間だし口外しないから教えてよ!」
「おい!無視するな!」
「あー、そいつの言ってる通り魔王なんだ、第七魔王の狼」
レイとカヤナは驚きを隠せないでいる
ほんとに冗談だと思ってたんだろうな、ほんとに
「ま、魔王なの、マオちゃんって……」
「勇者のテイマーだとそんなことが可能になるのか」
「私は最初からそうだと言ってただろう!私がアホに見えたか!」
「ごめんねマオちゃん……」
そういいながらマオの肩に優しく手を添えるカヤナ
機嫌を損ねたのか無言で座り込んでしまうマオ
あとで餌で釣るか……
「――ツカサ君たちは明日出発?」
「うん、明日もうこの町をでて魔王の情報を集めてみるよ」
「じゃあ、しばらくお別れかもね……」
「俺って全然わからないことだらけだからすぐに頼ると思う」
「その時は大いに頼ってほしいね!あとこれ渡しておくね!」
カヤナから渡された袋には大量の金貨とスクロールが入っている
「え?さっき報酬貰ったばっかだぞ?」
「いいの、これは私とレイのお金の半分ぐらいだからさ」
「勇者が金欠ってのはあまり良くないと思ってな
錬金術は稼げるから好きに使ってくれ、足りないならいくらでも稼ぐから」
金策しなくてよくなる、錬金術サイコー!
でもレイが思ったより貢いだりしてくるタイプだと思わなかったな
頼りたいけど頼りすぎたらダメ人間になりそう
「ありがとう、ほんっとうに困ったら頼むわ」
「遠慮しなくていい、ツカサの為のものだからな」
「そ、そうか」
金貨を受け取り別れを告げる
二人はここら一帯を中心に生活していくようだから困ったら探してみよう
「よし、みんな宿に帰るぞ」
「マオ様はすごい人です、だから宿に帰りましょう!」
(マオさまのおかげでぼくたちは強くいれるんです!)
二人もマオの扱いに慣れてきているのか……
てか慰められる魔王ってなんか笑えるな
「あはっは、やっぱ楽しいな、ほんと」
「めちゃくちゃってやつですね!」
「そうそう、めちゃくちゃ楽しいよ」
(ぼくもめちゃくちゃたのしいです!)
ずっとこのまま過ごしたい、俺の望んでいた生活
その為には魔王を倒し平和を手に入れる
その為だったらなんだってする覚悟が出来てきている
「マオ、行こう」
「ふん、しょうがないな、私がいないといけないらしいから仕方なく動こう」
少し照れ気味に話すマオ
「うふふ、マオ様はそうでなくちゃ」
「よし、お金もあるしデザートでも買って帰るか」
「デザート!甘いの始めてです!」
(たくさんたべたいです!)
「おお!たまにはケチ勇者も良いことをする!」
「いつもしてるだろ~」
これから冒険が始まる
俺は世界を救う、こいつらと一緒に!
勇者と魔王
本来交わることのない関係性が出会い新たな関係が生まれていく
その中心にはいつも一人のテイマーがいた




