11 償い
「もう――もうやめてください」
何度もみた光景
少女の震えた声が壁に反響して聞こえる
「ん~嫌だね、君のお友達は悪いことをした、それを庇ったんだ
それって有罪だよね」
「いや、いやだ――――いやあああぁぁ」
自分の叫びが響き自分でもどんな声がしているのかわかる
にっこりと笑う口元、楽しげな口調、点滅する明かり、血に染まった道具
傷つくと聞こえる回復魔法の詠唱
「ちなみに君の助けたお友達、君が全部悪いって言ってたよ!」
「えぇ?」
「全部君が悪くて自分はやらされてたって、でもやったことは償いたいからってお金まで貰ったよ!すごくいいお友達だね!」
「カヤナが……なんで……」
「君の罪はまだまだ続くからね~」
眠ると嫌な夢を見る
――――――――――――――――――――――――――――――
「目が覚めたか」
眠りから目覚めたレイに聞かなくてはならない
何が起こったのか、何をしたかったのか
「あなたはあの奴隷市場で何をしようとしてたの?」
カヤナは泣きそうになりながらしっかりと目を見て話しかける
レイは逆に目をそらそうとして先ほどまでと違い無表情だ
「私は……ただカヤナの為になると思ってたんだ」
「私の為?」
「お前の母親、もう死んでたよ―――」
「ッ……」
言葉を失いカヤナが崩れ落ちる
泣きそうだった目からは涙が流れていた
「死んでたって本当に死んでたのか?」
「ちゃんと調べて死体も見つけた、私はその時こうなることの目的を失った。
なあ勇者、本当の勇者って何だと思う?」
「―――勇者は人の為に戦う、そうだと思っているぞ」
死んだ目をしながら口元には笑みが浮かぶ
「それは大きく間違っているよ、能天気すぎて笑える、だから勇者も死ぬべきなんだ」
「俺はまだこの世界に来たばっかりだからわからないが何をしでかしてるんだよ」
「私を拷問したのは勇者だ」
いやいや、勇者って俺と同じ現代人だよな?
ってことはそんな非道な奴がいるのか?
驚きを隠せずに黙り込んでしまう
「勇者は他にどんなことをしてるんだ?」
「私が知る限りでは支配、虐殺とかひどい話しか入ってこない
だから勇者は力を乱用するマルス信者の象徴として恐れられている」
「おい、それだと勇者はこの国では救世主じゃなくて悪人みたいじゃん」
「そうだ、勇者はゴミだ」
勇者の評価がそこまでひどいとは思わなかった
力に溺れてしまった勇者たちを女神様はなにもせずに放置?
俺がこの世界に来て世界を救う目的はなんだったのだろう
「あっはっは!勇者はゴミ、こいつとは気が合いそうだな」
「その勇者にテイムされている犬が良く吠えているな、躾はちゃんとしたほうがいいぞ」
「今すぐ死にたいか?人間」
「おいマオ、変なことすんなよ
それで結局あそこにいた理由はなんだ?カヤナの母親は死んだんだろ?」
「私はもう戻れなかった、裏切られたと伝えられた、だから貴族への復讐としてあそこを利用していた」
貴族への復讐か……
拷問されておかしくなった、俺がされたようにレイも裏切られたと伝えられたのだろう
酷い環境の中で唯一信じてた親友が裏切ったとしった時どんな気持ちになるかは想像がつかない
「このあと私をどうするつもりだ?」
「それはカヤナが決める」
座り込んでいたカヤナは立ち上がり涙を拭う
「よーし、もう最近泣いてばっかり、だからもう暗いのは当分おしまい!
カヤナ、私は裏切ってなんかないしずっと助けたかった
私の為に酷いことされても少しでも信じてくれたからお母さんのことを探してくれてたんでしょ?」
「―――、私はもう元の私に戻れないから殺してほしい」
目を逸らし涙が零れるレイを抱きしめるカヤナ
「大丈夫、私がいるからね」
「うう……ずっと……何の為に生きてるのかわからなかった……」
「もう心配はいらないよ、昔みたいに戻ろうね」
レイにはもう敵意はないように思えた
実は最初から無かったのかもしれない
「マオ、外に出るぞ」
「こいつ何をするかわからないぞ?」
「二人だけにしてあげよう」
部屋を出て行く
いつ離れたかはわからないが親友との再会
形はどうであれ二人きりにしたほうがいいな
――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、お帰りなさいませ!主人様、マオ様!」
すっかり元気になったモモナ
俺の新しい仲間となった鬼の少女
どんなスキルを覚えるのかと思ったが特に珍しそうなのは何も持っていなく自分で決めていくっぽい
「なぁその主人様って呼び方どうにかならないか?」
「奴隷の飼い主は主人様と聞きました、テイムされたので主人様だと思ったのですが……」
「テイムしたからってそんな扱いはしない、俺にとっては家族なんだからさ」
モモナの表情が一気に明るくなる
「家族……家族って初めてです―――ツカサ様っておよびしてもいいですか?」
「んーさっきよりはいいか、それで頼むぞ、モモナ」
「はい!ツカサ様!」
「モモナは私の従者だからな、変な要求とかはするなよ?」
「そんなことするわけないだろ!俺を何だと思ってるんだ」
「それは私の尻尾を触って興奮する変態だ」
「――ツカサ君そんな変態だったの?」
カヤナの声に思わず飛び上がる
変な誤解をされたら面倒なことになりそうだし評価が悪くなる
「カヤナ?!変態じゃないぞ俺は!てかもう話は終わったのか?」
「ふふ、変態じゃないのは信用しておくね
話はもう終わったから大丈夫」
なんか怪しいけどそう思ってくれているならありがたい
カヤナの陰に隠れるようにレイがいる
もう拘束などはないようだ
「レイは、もういいのか?」
「私は罪を償う、本当の意味でな」
「このあとレイを罪人として罪を償ってもらう
この国は監獄とかないから結構自由なのそれに――私がいるしね」
二人の顔には笑みが浮かんでいる
それを見ているとなんだかこっちまで微笑んでしまう
「ツカサ君、マオちゃん、スラルク君、本当にありがとう!
あとで報酬の支払いもかねてご飯を食べよ!
もちろんモモナちゃんもね!」
「わかった、またあとでな」
二人は役所に行くようだ
この後の待ち合わせまでに宿を取りに行こう
「よし、みんな今日は飯を食ってゆっくり休んだら次の町へいくぞ」
「ここには長くいないのか?」
「一応勇者としてやるべきことをやっていこうと思う」
「そうか、もう私はお前についていくしかないからな、ちゃんと面倒をみろよな」
「それは安心しろって言ってるだろ」
(ぼくも強くしてくれたツカサ様にお供していきます!)
「私も命を助けてくださった御恩を返していきたいです!」
仲間たちがついてきてくれる
それがこんなにうれしいとは思わなかった
「ありがとうな!俺もまだまだだけどよろしくな」
まずは三人分の宿を見つけなければな
この町はそんなに大きくないからあると良いけど
宿を見つけ案内された部屋に行く
大きな荷物はないので身軽でいいな
「宿代で銀貨20枚、デールスより格段に安いな」
「あのふわふわのベットの所を探せ!私は認めないぞ!」
前に寝泊まりしていた宿とは違い固めのベットだ
「しょうがないだろ?だってここしかないんだから」
「私はすごく寝心地がいいです!」
「ほら、モモナもそう言ってるんだし我慢しろよ」
「ぐぬぬ……」
宿屋の主人に聞くと共和国の『中央都市 スワルク』への道は遠いらしい
まずはそこへ向かいそこを拠点として情報を集めようと思う
「ここで馬車を借りるのか……」
馬車の運転なんてしたことがない、だからもし借りたとしても壊しそうで怖い
無免許でレンタカーを借りる感覚だ
「いらっしゃい兄ちゃん!馬車を借りたいのかい?」
「そうなんだが乗ったことなくてな、借りていいのか不安なんだ」
「出発はいつだ?それによっては俺が送ってもいいぜ」
馬小屋の管理者の運転なら物凄く安心だ
「ここから近い大き目の町に明日行けるか?」
「明日ならちょうど配達の依頼があるから近くのパルスって町に行くぜ」
「なら頼めるか?」
「よし!明日の昼頃いくからここに来てくれよな!」
「ありがとな!助かる」
「おお!こんなに貰っちゃあ無事に届けなきゃな」
金貨を一枚渡し馬小屋を去る
「よし、待ち合わせの噴水とこに行くか」
街の中央には噴水がありそこを待ち合せにしている
ひとまずモモナに服を買ったが赤の肌に白いワンピースは良く目立つ
勇者の影響があってかこの世界の服はファンタジーっぽいものもあれば
現代のTシャツだったりマオの着ている革ジャンのようなものまで様々だ
「こんなに綺麗な服始めて着ました!」
「俺にセンスはないが、素材が良いからかな、よく似合っているぞ」
「えへへ……」
嬉しそうに顔を赤らめるモモナ
「おーい!」
「この声はカヤナか」
遠くからカヤナとレイの姿が見える
「やっと来たなカヤナ、もう私は腹が減って仕方がない!
早くご飯を食べたい」
「お待たせマオちゃん、さっそくこの町おすすめのハンバーグ屋さんにいこ!」
カヤナのおすすめのハンバーグ
とてもジューシーで肉汁が溢れめちゃくちゃ美味い
「これがお肉……美味しすぎます!!」
「何皿でも食える、やはり肉が一番美味い!」
(ハンバーグが吸収できて幸せです!)
みんな喜んでてうれしいな、やはり食事が一番大事だ
まぁスラルクは食べているとは言えないけど
「みんな喜んでもらえてよかった~レイも久しぶりだもんね」
「やっぱりここは美味しいな」
レイもすっかり前までの荒々しい感じが消えて落ち着いている
元気いっぱいのカヤナと落ち着いたレイの良いコンビだったんだろうな
「なぁ、罪を償うのに普通に出歩いていいのか?」
「大丈夫!この国では罪人でも自由になの!」
「すごいな、そんなことしたらみんな悪いことしまくれるんじゃないか?」
いくら自由とはいえ無法すぎる気がする
「わからないだろうが私に着けられたこの首の印がそれを防ぐんだ」
レイの首には魔法が刻まれたような紫色の跡がある
「これがついていると罪人だとわかり罪状に背くと死ぬ」
「罪状ってどんなのになったんだ?」
「錬金術を悪いことに使わないってことに決まった
自分で悪いと思って使うと首が飛ぶ」
そんなことで良いのか、さすがバサバ共和国
「罪滅ぼしってわけでもないんだけど、ツカサ君にお願いがあるの」
「お願い?俺が広めないでくれ的な?」
罪滅ぼしだけどそうでもないってどんなことだ?
想像もつかない
「これは二人で決めたことなんだけどね、もしよければの話」
「私とレイをテイムして欲しいの」




