伯爵テスト②
セレナはジャック・コルンバ伯爵に実力を示すために、淡々と質問に答えていく。少しの手心を加えて。
最後の質問に差し掛かると、少し変わった質問が来た。
「飢えた民を救う方法」
セレナは少し考え込み、こう答えたのだった。
「答えはジャガイモです」と。
「答えはジャガイモです」
そういった途端、誰も喋らずにいた周りがさらに静かになった。
「ジャガイモ...とは、何か聞かせてくれるか?」
私はそこにいた連れてきたメイドに紙とペンを差し出させ、ササッと絵を書いて伯爵に見せた。
「ジャガイモとはここから東の地てよく栽培されるこのような植物です。主に主食の代わりとして食べられたりもしていて、体に良いらしいです」
伯爵達は目を見開いて絵を見る。生えてる根やひげ、不細工な形などを蔑んでいる。あまりリアルに描きすぎたかもしれない。
「とにかく...これを使って何ができるというのだ?」
伯爵はかなり不満げに聞いてきた。取り敢えず1から説明しよう
「まずこれをこの屋敷で栽培します」
一言目から何か物を言いたそうな目をしていたが、構わず続ける。
「そして平民に見せびらかすように農村に近い領地でやるのです。できれば仕切りは柵だけで。
しばらくすると民達はそれを見に来て、あげくの果てに盗みをしだすでしょう。領主じきじきの部下たちが一生懸命育てるんだからそれなりの価値があるんだろうってね。そして平民はジャガイモを盗むだけでなく育てた人の動きを見ます。そうすることで食料の取り方を学ぶのです。それを持ち帰ってくれたらあとは簡単です。やり方を共有し合って育て始めてくれます。」
伯爵は納得したような表情と納得できない表情を行き来していた。
「それだと警備が...」
言葉を遮って言う。
「あくまで、民達に自給自足させるための方法です。田畑のこの屋敷の間に壁を作ればいい。少しの領土より民を取るのなら」
領主ジャック・コルンバは、頬に汗を垂らしながら少しニヤけて答える。
「望むところだ。その案に乗った!」
そういった瞬間、テレスは胸を撫で下ろしていた。かくいう私も安心したのか、背筋がガタッと崩れていた。
そして私が何故王になりたいかを説明する権利を得た。そして1時間ほどかけて熱心に説明した末、ついに私は伯爵と契約をした。
皆で協力を祝福し合っていた矢先、突然扉が勢いよく開いた。
「伯爵様!そのような軽いふた返事で命を預けてはなりません!」
注意喚起の言葉とともにいきなり登場したのは、背丈は私と同じぐらいでウェーブのかかった茶髪の女の子だった。
それと同時にテレスの母がそそくさと彼女の下へニコニコしながら近づいていった。
「1ヶ月ぶりねマーシャちゃん!元気してた?大丈夫だった?お気に入りの人は見つけた?」
今まで静かに黙りこくっていたテレスの母ソニア・ベール・コルンバが嘘のように、明るく元気にしゃべりだした。マーシャというのか?あの人は。
「突然失礼かもしれませんが、物申したいことが一つ...さすがに査定の条件が薄すぎます。」
そう言いながらゆっくり私に近づいてくる。私の前に立ってまっすぐ目を見て口を開く
「私の問題なども解決してもらわないと、まだ分からないでしょう?」
彼女は目の前にいる私がよく見てわかるぐらい少し、笑みを浮かべていた。
私は理解した。あぁ、この人、
「私を利用しようとしているんだな...」
二人で顔を合わせて5秒ほどニヤけ合った。
ソニア・ベール・コルンバは、テレスの義理の母であり、ジャックの嫁である。もともとテレスを引き取ろうと言い出したのはソニアであり、義理であるが親2人で子を愛している。
友達がたくさんいるソニアであるが、自分の中の「友達」「知り合い」「親友」ではだいぶ態度が違う。