となりのナックン
かぐつち・まなパさま
雨の公園をバス停へ向かって抜けようとしていると、見たこともないどうぶつに出逢った。
白い……。
見事なまでに真っ白な、もふもふどうぶつだ。それが赤いおべべを着て、赤い長靴を履き、赤い傘をさして、私に気づくと一瞬、逃げようとした。
「大丈夫だよ! あたし、ただの小学生だから!」
逃がしたくなくて、あたしが空まで響く大声で引き止めると、どうぶつが振り向き、あどけない黒々とした目をキランと輝かせ、言った。
「く?」
「こんにちは! あたし、ココミっていうの。あなたは……何?」
「くくっ」
「もしかして……この公園の妖精さん?」
「くくくくっ」
「あ、そうだ」
あたしはランドセルを下ろし、中からそれを取り出した。
「給食の牛乳、飲まなかったから持って帰ったの。飲む?」
「く……、くくくっ! くくくくっ!」
飲んでる、飲んでる。ミルクが好きな子なんだな。
ふふふ……。かわいい。じゅるる……。飲み終わったらとろけて無防備にころころしてる。この隙に、ランドセルに入れて、この子持って帰っちゃお。
「えい!」
あたしが捕まえようとすると、傘をプロペラみたいに回して飛び上がった。
そのまま雨雲の空へ飛んでいっちゃった……。
帰っておばあちゃんにその話をすると、教えてくれた。
「あぁー。それはナックンだよ」
「ナックン? 森の守り神さまか何か?」
「いいものに出会ったね。幸運を司る神獣さまだよ」
「じゃあしっぽを捕まえればよかったのかな?」
「出会っただけでいいことがあるんだよ。楽しみにしておおき」
ふぅん……。
どんないいことが起きるのかな?
ワクワクする!