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 メトゥスはあれから頑張っているようだった。

 使用人たちに色々と教わりながら、その合間の時間で本を読み、裏庭で魔法の訓練をしているのを見かける。

 たまに顔を覗かせてはアドバイスをしたり見学したり、たまに実践形式で戦ったりしている。

 やはり、メトゥスの魔力量は桁違いだった。

 私が死にかけながら手に入れた魔力量と比べても、同じくらいか、それ以上。

 けれどコントロールが下手なためなんとか勝てる、といった具合だ。メトゥスが魔法のコントロールを覚えたらもう勝つことは難しくなるだろう。


 そんなことをしながら過ごしているうちに時間は経ち、ムネラとの面会の時がやってきてしまった。

 

 いつも通りメイドに着飾られて、裏庭で魔法の訓練をしているメトゥスのところへ向かう。

 メトゥスと目が合うと、メトゥスは少し驚いたような表情をしてからこちらに駆け寄ってきた。


「今日は随分、綺麗な格好をしてるな」


 メトゥスの前でちゃんとしたドレスをきたのは初めてかもしれない。

 いつもは動きやすい部屋着でいることが多いし。


「客人がくるから。それで、客人が帰るまでは魔法の訓練は控えてほしくて伝えにきた」

「客人?」


 そういえば、メトゥスがこの屋敷にきてから誰かが尋ねてくるのは初めてか。


「……一応、私の婚約者」

「婚約者がいたのか?」

「これでも公爵令嬢だからね。政略もいいところだけど」

「……そうか。なら、俺は邪魔にならないように部屋にいる」

「うん、よろしく」


 メトゥスとともに屋敷の中に向かうと、ちょうど屋敷に入ってきたムネラと出くわしてしまった。

 まだメトゥスの存在は隠しておきたかったのにとどう言い訳しようかと考えていると、先にムネラに声をかけられてしまった。


「ミセリア嬢。お久しぶりですね」

「はい、お久しぶりです」

「その人は?」

「……私の新しい従者です」

「そうですか。随分と珍しい色をしていますね」


 ムネラは笑いながら、メトゥスの方をジロジロと眺めている。メトゥスはそんなムネラのことを無表情で見返していた。


「君もそんな色だと苦労しますね」


 あ、これ。メトゥスのことをバカにしているようで間接的に私の色をバカにしているな。そう感じながらも、ムネラを応接間に連れていってしまおうと思っていると隣でメトゥスが口を開いた。


「……いえ、俺はこの色好きなんで」


 メトゥスと目があうとメトゥスは微かに微笑んだ。

 あのメトゥスもよくそんなことを言っていたな、と思い出しながらも少し暖かい気持ちになる。


「では、殿下。こちらへどうぞ」

「……あぁ」


 ムネラは先に応接間に入っていく。私もその後に続いたが、その後ろでメトゥスが驚いたような表情で「殿下……?」と呟いていた。何か気になることがあったのだろうかと思いながらも、今はムネラの相手をすることにした。


 その日の夜、メトゥスが部屋に尋ねてきた。


「どうしたの?」


 眉間に皺を寄せながら、思いもよらないことを告げてきた。


「……なあ。今日昼に来た客人って、第二王子か?」

「第二……?彼は第一王子のムネラ・アエテルニタスだよ」


 その途端、メトゥスの体から魔力が溢れ出す。その魔力は密度が高く、部屋の窓ガラスがガタガタと震える音がする。

 何が琴線に触ったのだろう。メトゥスの魔力を抑えるよう魔力を流してやれば、徐々に落ち着きを取り戻したようだった。


「お前は、あの男のこと好いているのか?」

「それはない。絶対に」


 思わず間髪入れずに拒否する。

 メトゥスは大きくため息をついて、ズボンのポケットに手を突っ込む。そして、メトゥスが出したものに思わず目を見開いた。


「……俺の本名はメトゥス・アエテルニタス」


 そんな話、前のメトゥスから聞いたことはなかった。

 けれど今、メトゥスが手に持っているのは王家の紋章が刻まれたペンダント。それは、ムネラがしているものと同じ。

 

「それは、本当なの?」

「……信じてもらえないとは思うけど。俺は五歳まで、城の塔に幽閉されていた。弟が生まれて捨てたれたんだ」


 信じられない。けれど、納得もできる部分もあった。

 銀髪にしたムネラは誰かに似ているように見えたが、それはきっとムネラだった。さらに文字が読めたのも、幽閉されているとはいえ王族としてある程度の知識を身につけていたからかもしれない。


「それを、私にいってどうするの?」


 ……メトゥスの存在は、私の復讐の大きな手札になる。


「……お前には、本当に感謝している。だけど、お前があの男の婚約者である以上、俺はもうここにはいれない」

「それはどうして?」

「俺、捨てられてからいろんな人間に迫害された。そいつらに対する恨みはかなりある。けどさ」


 息を大きく吸ったメトゥスの瞳は暗くひかり、憎悪が浮かんでいた。


「俺を捨てた親。そして、何も知らずにのうのうと生きている弟。それが一番憎い」


 血が沸き立つのが感じた。

 これは、歓喜だ。


「あはは、あはははは!」


 急に笑い出した私に、メトゥスは驚いているようだった。けれど、笑いが止まらなかった。


「ミセリア?」

「いいよ。私もあいつが心の底から憎くてさ。地獄を見せてやりたいと思っているの」

「は?」

「一緒に復讐しよう。死ぬよりも苦しい目に合わせてやろう!」


 手を差し伸べれば、メトゥスは少し考えている素振りをした後。その手を取る。


「お前が何を思ってあいつを憎んでいるのかは知らないが、いいぜ。やろう」

「今日から私たちは共犯者。お互いに利用しあっていこう」


 この日から、私たちは共犯者となった。


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