第8話 ─故事─
前回のあらすじ
「才能保持者」という、なにか特別な能力があり、国に認められないと入学できない学校入学した狛枝。
なんとか数々の苦難を乗り越えるも、そういった星に産まれた者なのだろう。
運命の歯車は整えられなくとも、戦場は整えられるらしく、負傷しながらも整えられた戦場は無事勝ち越す事となる。
流れの赴くまま狛枝の家へと着いた一行。
明かされることとなる狛枝の過去は…案外凄惨なのかもしれない。
彼の運命の歯車は依然変わらずに、順調には周らないなしい。
─────────────────────────
作品を開いていただきありがとうございます。iです。
前書きの前(?)に、私は前書きや後書きで無駄におしゃべりしてたりするので、前の話から見たほうがいいかもしれないです。
今回は珀くんの昔話です。先に言っときますけど、いろいろ組織が出てきますけど、正直あんまり覚えなくてもいいです。というか、なんとなくカッコイーで流してもらっていいです。
それ以外は…結構伏線が意図的に散りばめられたり…?
というか、伏線というより重要なことが色々あるみたいな?
よければ探してみてください。(投げやり)
それではごゆっくりどうぞ…
『はははっ、ごめんごめん!
何聞いたか忘れちゃったから頑張って答えて!』
『…まず強さ、あいつらとの関係、銃持ってる理由は答えは全部同じだ。
というか、なんとなく察したりしてるんじゃねぇのか?お前も…お前らも。』
『まあ、結論から言えば元々殺し屋…暗殺組織に居たんだよな。
だから?それ以外はあんまり言うことはない。』
『暗殺組織…フィクションでしかないと思ってたんだけど…本当にあるんだね〜』
『…大して驚かないんだな。』
『まあね〜もう驚かない、というか驚けないなー
というか、私が察してるかもしれないってのはわかるけど、"お前ら"っていうのは?』
『あー…お前はわからねぇんだな。
わからないならそのままでいたほうがいい。
聞いていい気分になるもんじゃない。』
『…?そう?なら深掘りはしないけど。』
『で、弾丸にどうやって追いついたかだが…これは…
お前もわかるんじゃねえか?"才能力"だよ』
『…?なにそれ、初めて聞いたんだけど。』
『あー…オーケー今の状況を理解した。
全て説明しよう。
まず、あんたも持ってるだろ?才能。』
『もちろん!誰でも魅了させられるっていうね!
まあ、今誰でもじゃなくなって、自分の才能に自信がなくなったところだけど!』
別に惚れてなくはないんだなぁーと煩悩が1つ。
…だからと言って好きなわけでも、付き合いたいわけでもない。
『そうか、悪かったな。
話を戻そう。
今はあんま有名じゃねえが、才能力ってのは才能を持ったやつだけが持てる…才能の進化系みたいなも
んで、才能は常時発動なのに対して、才能力はオン・オフができる。
才能より効果がでかいが、その分デメリットもある。
そんな感じだ。』
『ん〜…よくわかんなかったけど、きっとすごいんだろうね!
ていうか、その才能力?ってやつって私も使えるの?気になるからやってみたい!
効果が強くなるんでしょ?ならそれではくも惚れさせられるってこと!?』
『たぶん、今のあんたじゃ使えねぇな。
それにもし使えたとしても、才能の効果がそのまま才能力になるってわけじゃねぇんだ。
期待してる効果が得られるかは運ゲーだ。
あと…やめたほうがいい。そんないいもんじゃない。』
『え〜はくを惚れさせられないの〜?』
『もっと偉大なることに力を使えよ。
で、俺はさっき才能力でなんとかしたってわけだ。』
『ふーん?すごいねぇ〜才能力って皆あんなに強いのかな?』
『さあな。私はちょっくら努力したとだけ。
というか…別に自語りをしたいわけじゃないが…これまた俺の才能力には興味なしかい。』
『何?昔話でもしたいの?別にいいけど。』
『いや、そんなことはないが…好奇心旺盛なあんたなら食いつくもんだと思ってたんだがな。』
『んーまあね?ただ私も興味があるものとそうじゃないものくらいはあるからねぇー。
どちらかというと、私が聞きたいのは最強の称号の方なんだけど!』
目を輝かせながらも、目の奥には何かすべてを見透かしているような…哀しさ寂しさのある目をしている。
『そういう称号には興味あるのかい?
まあ、最強って言っても、ちと強かっただけだよ。』
『そう?とは言っても最強だからねぇ〜。最も強いだよ?そう簡単につくもんじゃないと思うけどね!
というか、最強って言われてたのはその暗殺組織?
それとも別のところでの噂的な?』
『あー…まあ説明がめんどくさいが…裏社会…って言ってもわからねぇよな。』
『そうだよ!今私に説明するなら子供に説明するように話して!』
『ならいつも通りでいいか。
んー…どうせなら、俺の生い立ちも含めて話すとするか。』
『待って!いつも通りって何!
というか、やっぱり昔話がしたくなったのー?』
『まあ、だいたいそんなもんだ。』
『ふーん、まあ聞くけど。
でも、子供扱いは謝罪してよ!』
『…まず俺はなー…』
『ねえ!』
『はいはい、悪かったよ。』
『ふん、わかったならいいんだよ!
ほら、話してみなさい!』
『ただ…あー…そうだな、気分を害すかもしれん。
それに多分めちゃくちゃ長い。
それでもいいのか?』
『ここまで来たら聞くしかないでしょ!
それに、話聞くのは慣れてるから!』
『そうかい、ならよかった。
じゃあまず、俺の親の話からさせてもらう。』
薄暗い、安っぽいアパートの薄汚れた部屋が脳裏に映し出される。…はっきりと、鮮明に。
『親つっても奴らは俺を拾っただけらしいけどな。
あいつらは…は5歳のときに死んだ。あいつらは…
あぁ、クソだった。
小学生にも満たない俺を家から追い出し、はじめに乞食にさせ、金を稼がせた。
この平和な国は、可哀そうな様相だけでもある程度恵む奴がいる。
やがて労働はエスカレート。
盗み、転売、詐欺、ショタコンのきしょババアに俺を貸すようになった
体を貸すと、数日は帰れなかった。
役割の時間のみ動くことが許され、それ以外ではずっと地下の牢獄のような部屋。
…高く売れたそうな。
夜に家に帰っても、あいつらは俺を基本的に放置。
当然、風呂は入れねぇし、飯も奴らの残飯しか無かった。
そのくせ奴らは俺に稼がせた金はすべて酒とギャンブルに溶かす。
その頃の生活は言語化できないくらい地獄だった。
ただ、物心すらついてなかった俺は感情すら忘れて、なんとか生き残った。
泣くのが仕事である子供でありながら、泣き方すら忘れた。
奴らから学んだことは金の稼ぎ方だけ。
そんな生活が数年続いたあたりで、動けなくなった
俺を例の組織に売った。
ある日の夜、大人たちが家に来た。よくわからない
ことを話した末、俺はそいつらに手を引かれた。
俺は…またも高く売れたらしい。
俺の親は買い取りに来た組織の人間そこで殺された。当然、証拠は残らないほうがいい。』
『……』
『こっからが本題の裏社会だ。
裏社会ってのは簡単に言えば表には出てない組織たちで構成される社会のことだ。
意外にも俺みたいなやつはこの世界に五万といる。
そいつらは普通の社会じゃ行きていけない。
じゃあ、そういう奴らはどこで生きる?
─当然、自分と同じ境遇の奴らと生きる。
そいつらによって作られたグループが拡大したのが裏社会だ。
俺もその恵まれない命を受け取ったうちの一人だ。
そうして、裏社会で力を持つ巨大暗殺組織に拾われたってわけだ。
裏社会はルールも法律もない。
要するに、ここでは綺麗事は通じない。暴力がどうだの言ってられない。
資金と武力、そして知名度と権力を持ってるやつが裏社会ではデカくなる。
そこに海外裏社会の大企業である例の暗殺組織が参入すれば、嫌でも支配できる。
裏社会でもデカい企業に人が集まり、周りを巻き込みながら成長するのは、社会と裏社会の数少ない共
通点だな。
俺もその波に飲まれて組織に売られたわけだがな。』
スラスラと言葉が出てくる…皮肉な話だ。
次に少し乾燥した、明らかに治安の悪い様子の国の中にある、真っ白で無機質な建物が浮かび上がる。
『俺は、なんの説明もされなかった。
今からしたら想像できないほど質の悪い船に乗せられ、どこかもわからない外国へと送られた。
そうして俺の組織生活が始まった。
始めに行き着いたのは、人工物でありながら、不気味な殺風景をした建物。
そこは…組織の育成部門で、表面上は教育するための機関とされてた。
ただ、組織では訓練なんかよりもっと大きい問題があった。
問題といっても言語の壁何だがな。
当然、まともな教育を受けたことのない、自国の言語すら理解できていない俺は、外国語なんて理解で
きるわけがなかった。
そして、言われたことを一度で聞き取り、理解しないと何度も殴られた。
今考えると、とんでもないスパスタ教育だったな。
だから、俺は独学で言語を学んだ。
だから、俺は人を観察することにした。
組織の設備は無駄に充実していた。
図書館、食堂、訓練場、教室。なんでもあった。
図書室で言語を学び、日常では常に他のやつの表情を観察していた。
幸い、俺は頭が良かったみたいだ。
母国語に加え、そこの国の言語を特定し、理解できるようになった。
ただわ理解するまでに時間がかかりすぎた。
周りの奴らからは煙たがられ、教官からも何度も殴られた。
それでも、明日を生きるため、学習し続けたおかげで、殴られる回数も減った。
そこで初めてここがメキシコだと知る。
こうして、無事…かわ分からないが第一の壁を乗り越える。
息継ぎをするまもなく俺に立ち塞がったのは、分かり易すぎる人種の壁だ。
暗殺者育成…ありゃ酷かったな。
俺は素手なのに相手は当然のように武器を持っている。
飯を取られたりもしたし、教官にも理不尽に殴られた。
そんな理不尽があっても…あの頃よりは良かった。
そしてなにより、ありがたかった。
飯は最低でも1日1食は食えた。
風呂も簡素ではあるが入れた。
そして何より、強くなれる手段があり、強くなれば這い上がれたから。
正しく才能を問うてくれたから。
人種差別。今考えればよかった環境なのかもな。
俺の才能を一気に伸ばした要因1つだ。
暗殺者育成でも、俺は学習をした。
武器を用いた戦いなんて嫌でも癖が出る。
それを見逃さない洞察力。
無慈悲に、感情を変えずに命のやり取りをした。
それを構成した無慈悲さ。
…あとモロモロ。
すべてを取り込んでいった。
皮肉なことにこれまでの経験が強さにつながった。
そして、組織でもずば抜けて強くなった。
そして、組織の本来の目的である暗殺をするようにもなった。
当時の俺の年齢は言わば小学生ほど…
ターゲットもいくらなんでも小学生に殺されるとは思わないだろ?
依頼もたくさん来た。そして、依頼はだんだんとやばくなっていった。
200回は死にかけたし、成果を上げすぎたな。』
次…森林の中の戦場が浮かび上がる。
『組織は俺を邪魔かと思ったんだろうな、激戦区、中東の戦場に放り出された。
当時…8歳とかだっけな?そんな子供が戦場に出るなんて冷静に考えればおかしな話なんだけどな。
ただ、俺は強かった。
─いや、強すぎだ。
2年生きれば奇跡の戦場で俺は5年生きた。
戦場では伝説となり戦場で一躍名を馳せる小学生となった。
そうして組織に戻ると、門を過ぎるといきなり鍵がかかり、組織の奴らに一気に発砲される。
前々から組織から嫌われてるのは察してた。
頭が良くて良かったと今でも思ってる。
だから、俺は組織から逃げた。
死にかけたがまあ、なんとかなったから今生きてるんだけどな。
─逃げて逃げてなんやかんやで日本に戻ってきたってわけだ。
親も国籍もない俺は生きていけなかった。
ホームレスになったが、運良く極道に拾われた。
そこでは、生きるための方法、任侠…要するに道徳。
そして、言語と殺すための知識しかなかった俺の偏った知識に加えて、義務教育で学ぶ程度の内容を学
んだ。
無差別に殺していた俺は、そこでようやくまともになった。
まあ、あんまり何もなかったが極道の奴ら繋がりでこの家も買えた。
暗殺依頼で金だけはあったからな。
で、何故か幸運とかいう才能で入学してあんたに絡まれて今に至るってわけだ。
ふぅ…はい、俺の話終わり。』
『…』
『あんた…静かに話聞けるんだな。以外だよ。』
ふと古波蔵の方に目をやると…
『…』
寝てんのか?これ…
『おい、おい! おい!』
『ふぇ!?なになに!?』
『結局話聞いてなかったのかよ…
まあ、そんなもんだと思ってたよ。』
『いやいや、でもちゃんと聞いてたよ?
要はあれでしょ?
暗殺組織で色々やって、裏切られたから日本に来て、極道とか色々あって今に至るんでしょ?』
だいたい合ってるのが気に障る…
『まあ、そんなところだ。』
『ていうか、話戻るんだけどさ、はくの才能力ってどうやってわかったの?』
『自己認識…じゃね?
力が使えるようになったらそれは才能力だ。
その力と才能の名前でいい感じの才能力名を考えた…って感じ?』
『へー…はくの才能って幸運だよね?
じゃあさっき言ってた才能力ってなんなの?』
『そうなんだよな…そこは俺でもわからないんだが
能力と才能が一致しないんだよな…
おそらく─
─いや…なんでもない。
俺の能力は…わかりにくいんだがな、4つ力があったんだ。
言うんだったら、「俊敏」「力」「隠密」「応変」って感じだろうな。
たぶん、暗殺者の4つの心得ってところだろうな。
そこにそれぞれ25%づつ力が割り振られていて、
もとの力100%に加えて、各力の%が足させる…って感じだろうな。』
『ふーん…なんか複雑だね。でもすごい強そう!』
『強いさ。
ただ、さっき言ったようにちゃんとデメリットもあったりするんだな、これが。』
『ふーん…大丈夫なの?』
『まあ、大丈夫、でないが…まあ、お前に心配されてもどうにもならないんでな。』
『そう?ならないも聞かないでおくけど。』
『…というか、俺だけ色々条件を出させるのは平等じゃねぇと思わねぇか?なぁ。』
『まあ、確かにそうかも?
いいよ、なんか言うこと聞いてあげようか?』
『やけに素直だな…そういうもんか?
…とは言え、特に考えてはなかったんだよな。』
少し考える素振りをしてから
『そうだな…
まず、不要に俺らの関係を言いふらさない、スカーレット以外の奴らとも仲良く接する、でどうだ?』
『…?本当にそんなんでいいの?
男子高校生ならもっとあんなことやこんなことを
言われるのかと思ったよ。
別にそのくらいはいいけど、そんなんでいいの?』
『はは、俺はそういうことをあんまり考えたりしない
んでな、期待してたのか?』
『まあ…ね?家にまで来てるわけだしね〜
なんかあるかなとは期待してたけどね!
なんなら、今から襲ってくれてもいいんだよ!』
『というか、お前今日止まる予定、でいいんだよな?』
『そうだよ!今日は帰らない!
というか…さっきはくの部屋を見たらベット1つしかなかったね!
襲う?襲わない?襲っていいよ!』
『そうかい、なら俺のでいいなら着替えを取ってくる。それでいいか?』
『いいよ!ていうか、はくの着てみたいかも!
彼シャツ?ってやつ!?いいじゃん!恋人みたい!』
『はいはい、じゃあ時間になれば取り行くわ。
好きにしてていいけどな、外には出るな。何あるか分からねぇ。』
『んー!さすがに私も学習するよ!』
『だといいんだがな。』
─しばらくの沈黙。
俺があえて答えていない質問…この家の立地。
何に対しても興奮気味に答える、この子供らしい様子に疲れたといえばそうなのだが、それ以外の何かで私の言葉はさえぎられる。
『─ここってさ…あの才能保持者に当たりが強いって有名な華下町だよね?
なんでわざわざこんなところに住んでるの?
変態なの?』
『変態じゃねぇ。
それに住めば都、ってな。確かにいろいろ不便なことも多いが、慣れてしまえばこれはこれで居心地の
いいもんだ。
…むしろ、それを知ってるお前は何でここに来た?』
『そりゃあ、そこにはくの家があるからね?
なんでもいいでしょ。
あ、というか私もお願いしていい?』
『一応聞いてやる。言ってみろ。』
『あのさー、お前とかあんたとかじゃなくてこしいって呼んでくれない?
やっぱ距離近いほうがよくない?』
『…まあ、検討する。それは少しづつだな。
さすがに急にそこまで変えると俺が抵抗がある。』
『そう?んー…まあいいや。ただ、いつかはちゃんと呼んでもらうからね!』
『あいよ、ただ、ぁ゙ー、やっぱりなんでもない。
服取りに行く。』
そう言い捨て、古波蔵を…こいしを振りほどいて逃げるように階段を上り、服をしまう部屋…長らく開けてなかった部屋に着く。
気まずかったのか?はぁ…
…あいつを見るのもいつぶりだろうな。
まあ、話すこともないんだけどな。
そうして、ドアノブを捻り開けようとした時に─
─
何かが転がる音と、喉をツンと刺激す嫌な火薬の匂い。
過去の本能として自分の居場所が安全であることは瞬時に理解するが…こいしがいることを思い出した。
んー、あー…お前を使うことになっちまったとはな…
手榴弾の音で声は聞こえないが何かモゴモゴ言っている。
立て掛けられたヤツをすぐにすぐに手に取り、さっさと階段を下る。
─
…爆発音の後に鼓膜を過剰に揺らされ、ついで耳鳴りが押し寄せる。
─俺はなんだろうと考える。
だが、すぐに考えるのをやめた。
今はそれより考えることがある。
古波蔵に自身の過去と強さの所以を打ち明けた狛枝。
当然、社会に公開されれば確実に無事では済まない。
過去は変わらない。我々が干渉できるのは未来だけ。
しかし、未来は明るいとは限らない。
彼は過去と、未来とどう生きていくのか。
これから彼は限りない数、未来に向き合わなければならないことになる。
次回 第9話 ─御事─
─────────────────────────
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
完成してからいろいろと書き換えたりしたせいで、なんかぐちゃぐちゃってる感じになったかもしれないです。ごめんなさい。
ただいろいろと詰め込みたかったんです…ごめんなさい…
…ちょっと伏線雑だったかも…?いや…伏線というより重要なこと詰めただけだな…コレ
というか…会話パートなんとかしなきゃな…
ここまで読んでいただきありがとうございました。