第5話 ─襲撃─
前回のあらすじ
「才能保持者」という限られた特別な才能を認められた人のみ入学できる学校に入学した狛枝。
彼の平穏な学校生活のために歯車を整えてきた。
学校での立ち回りへの歯車、塩対応の古波蔵への歯車、
突然友好的になった古波蔵への歯車。
現在全て粉砕された狛枝だが、それでも何度も整えようと、抵抗はしない狛枝による、彼の望みだけ叶わない現実が演じられ続ける。
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作品を開いていただきありがとうございます。iです。
前書きの前(?)に、私は前書きや後書きで無駄におしゃべりしてたりするので、前の話から見たほうがいいかもしれないです。
今回こそ!待ちに待った戦闘回!と題名を見て思った人もいたでしょうが、残念ながら戦闘回は次回です。
とはいえ、ちょっとした伏線を入れてみたりなど新しいことにもチャレンジしてますので、そういった事も含め見ていただけるとありがたいです。
…こういうこと前書きで言っていいんですかね…?
それではごゆっくりどうぞ…
託された未来の私です。
古波蔵に家に行く宣言をされてから対策を考えた結果、古波蔵が来る前に帰ればよくね?という結論に至りました。
あの人の運動神経がどれだけかは知らないが、所詮は女性。さらには、身長が140くらいの少女。
男性には勝てないとこれまでの人類の歴史が語っている。
つまり、この勝負…勝ったも同然…!と思いたい。
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そして運命の下校時。
普段はのんびりと歩いてく帰るのだが、今日は例の少女に見つからないよう、追いつかれないように帰りの会にすら行かず、校内にとどまり下校チャイムがなるのを待つ。
それから、これまで眺めてきた学校の構造を把握した上で古波蔵の行動を見て、学校から出るルートを考えなければならない。
…考えるだけで大変そうだが、古波蔵を家につれてきてしまったが最後…それより大変な状況になることが優に想像できてしまうで、私は渋々茨の道を歩く。
ルートは古波蔵が見えなかったら走って逃げる。
見えたら正門から遠ざかるまで待機、後逃亡。
あとはアドリブでなんとかする。
幸いなことに、この学校は超がつくほど広いので巻くのにはちょうどいい…と思いたい…
そして…ついに時は訪れる。
これから…私たちの戦いが始まる…
と思っていたが私の予想とは裏腹に古波蔵に会うことはない。なんともなく帰路につけた。
というか、もう家まで数分というところ。
いや、正しくはもう数十分だが…誤差なのかもしれない。
何が起こるかなんて誰にも分らない。
やはり、あんな事を言っておいて来る気などなかったのだろうか。
無駄に警戒していた自分自身のことを恥ずかしいと思うと同時に、実は期待していたのではないかという気持ちになってしまい…どこか負けた気がした。
薄暗い、街灯のみがうっすらと光る道で、再び手遊びをしながら無駄な思考を繰り返す。
暇さえすればすぐしてしまう、悪い癖だ。
無駄にルートを考えたりしていたせいで疲れていたため、余計なことを考える暇もなく床につく。
─
次の日、古波蔵は何事もなかったかのように…本当に何事もなくいつも通りに話しかけてくる。
『おはよー!ごめんねー昨日家行くの忘れてたー!
今日こそはついていくから!』
ふざけるなよと、それのせいで無駄に思考した人がいるということをしっかりと理解してほしい。
正直、来るなら来い!って感じだが、もし巻けたらプライドが折れて諦めてくれるのかとも期待していた。
まあ、昨日考えた対策があれば、今後も大丈夫ではあるだろう。
ルートを無駄に考えておいてよかったー…
とは言うのもの、さすがにいつか帰るルートには限度は来るので、今のうちに新しいルートを考えておこう。
ということで、今日も今日とて古明地の話を聞き流しながら外を眺める。
─
そうして再び訪れた運命のとき。
今日も、昨日と同様の場所でチャイムが鳴るまで待機をして、古波蔵の行動をみてからルートを決め…
『なーにしてるの?はくー』
…後ろから聞こえてるく絶望的な声の…
その声の正体は当然…
『美少女であるこの、古波蔵こいしが迎えに来てあけたよ!ほら!帰ろ!』
『…』
完全に想定外のところからの襲撃…
この状況になることを想定していなかったため、この先起こることは推測でしかないが…確実に…私の家に来るだろう…
だが、当然そんなことはあってはならない。
最近、理由は不明だがクラスメイトの視線が心做しか生温かく、弱くなって入るが、他学年や世間からの視線は依然変わらず、とても痛い。
そのため、何があっても家に連れ帰ることなど、絶対あってはならない。
したがって、私がここで取る行動は…
ガンダッシュ逃走。
男は力、女は頭脳。これ、原始時代から言われてるから。
私のだって一応高校生、足の速さはある程度はある…はず。
正門をくぐり複雑な帰路に行き逃げ回ること数分。
おそらく逃げ切れたと、息を切らし膝にのせていた腕を伸ばしてリラックスをしようとすると、何かによって腕が掴まれ一瞬のリラックスタイムは終りを迎える。
まさかとは思い、そっと腕の方を見ると─
なんということでしょう…案の定というべきか。
そこには、古波蔵こいしがいるではありませんか…
『…』
しかも、今日の古波蔵からは想像できないほどに静かで、おとなしく見える。
さすがの私でもここまでは想定していなく、その光景を見られ、あたりからの冷たい視線も相まってパニックになる。
焦った私はとりあえず振りほどこうとするが、流石は天才少女。
スポーツができるがあまり腕、というか指の力が異常に強い。
無理に動けば私の制服が破れるレベルで。
振りほどくことは無理だと判断した私は、掴んだままの古波蔵を連れて、人の少ない帰路に走った。
…強さではない何かが少し重く感じたのは、言わないほうがいいのかもしれない。
✽
そうして、私の家の近くの帰路につき、ようやく古波蔵が話し始める
『いやー、やっとはくの家に行けるなー!
すっごい楽しみ!』
元々あまり話す気はなかったが、こういう体でしか聞けないと思うので、重い口を開いて質問を投げかける。
『…古波蔵さん、なんでそんな私に執着するんですか?
正直迷惑してるんですけど。』
『唐突だねぇーというか、そうなの?ごめんねー
今度から頻度は減らすからさー!』
なんとも軽い態度…塩対応の古波蔵はどこに行ったのだろうか…
『でもさー私、今まであんまりお友達と関わったことないからさ?どうしていいかわかんないんだよねー』
…ここでも来る美少女補正。とてもかわいそうに見えて…どこか守ってあげたくなる気がしてしまう…
『いや、そういうことじゃなくてですね?なんで私に関わってきてるのかなーって。
ほら、周りには他にいい男がいますよね?』
…自分でも気持ちが悪い。こんな奴は関わりたくないと思うほどに、気色の悪い自己嫌悪。
『そう?私は全然そんなことないけど!それに、私にとってはくってすごい変わってたんだよねー』
変わってるのはそっちでは?
…心に留めておこう。
『私たちはさー、昔っから例の称号があってね?
皆嫌になるくらい話しかけてきたんだよねー
この高校に来てからもねー特別なことろに来て、そーじゃない人が一人でもいるかなって期待してたんだけどね。
学校に入ったときもなんかファンの人が集まって来て、クラスに入ったときも、みんな話しかけてきて。
なんだか期待外れというか、少し残念だったんだよね。正直なところ。
でも、そのどっちにも居てなおかつ話しかけて来なかったのも、冷たくあしらったのもはくだけだんだよね!
それでもう私は惚れちゃったって!』
やっぱり、この人の考えは理解できないことが多すぎる…
とはいえ、自分が崇高な存在すぎるあまり、周りからは普通の友達とは同じような関係になれない、そんな話を聞いたことがある。
それにここまでの話で、古波蔵が私の家に来たいのではなく、話したいだけということはわかる。
しかぁーし、話を理解できるのとそれを受け入れるのは話が別だ。
関わろうだなんて微塵も…
…ん?"惚れた"?
…ん?ん?
『ちょ…ちょっとまってください?
惚れたって言うのは…?』
『え?言ってなかったけ?
皆にはくと付き合ってるーって言ってるんだよね!』
『は?』
…色々と思うことはあったが、それより疑問が晴れたことがどちらかというと嬉しい。
あの冷たかった視線が突然温かくなることに説明がつく。
だが、説明がつくとはいえ、疑問が晴れたからとはいえ、何も異議を申し立てないのも話が変わってくる。
『…?私は?そんなことを受け入れた記憶はないんですけど?』
『そりゃぁ、まあ、私が勝手に言ってるだけだからね〜』
…もはや言葉が出てこない。
あまりにも自己中心的な考えの美少女…一概に彼女のみが悪いとも言えないというのが苦しいところ。
こういったエリートがこんな性格になってしまうのは大抵は環境によるものだ。
どんな人であったって環境により簡単に人は変わってしまうものだ。
しかしながら、これもまた受け入れる理由にはならない!
ひとまずこれは今話すことではない…ハズ…
それに、この人を夜の街を歩かせるのはまずい…
下手したらまた余計な誤解が生まれる可能性がある。
『…とりあえず、家まで送るんで帰りましょう…
一人じゃ危ないですし。』
『はくの家に?』
『あんたの家だよ』
『わかってるけどさー!wてゆーか、送ってくれるとか
男らしい所あるじゃーん?』
『おいていきますよ』
『ごめんってー!私ははくと長い時間入れればいいから!
じゃあ私の家までちゃんとついてきてね!』
『はいは…』
…独特な気配を感じた私は、本能的に古波蔵をかばいながら角に隠れる形でその場にうつ伏せになる。
『え?』
その直後か同時と言っていいタイミングで…
懐かしみのある…何度も聞いた音…
─そうして今日も手遊びが始まる。
✽
1度はなんとか逃げきれたと思われた狛枝だが、見事、古波蔵の2回目の奇襲によってに的確に撃ち抜かれ、家まで行くことになってしまった。
帰宅する道中、不穏な音が2人を包み込む。
古波蔵に2度壊され3度にわたり歯車を整えていた狛枝。
しかし、彼にはもう誰にも歯車を曲げられないという意志のもと行動に出ることになる。
次回 第6話 ─戦役─
……これは皮肉な話であり、これは叶うことはすでになくなった。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
読み返してみると、別に伏線じゃなくね?と思いましたが、まあ…トライアンドエラーですよね〜
いっぱい失敗させてもらいます。
実際にやってみると伏線って張るの本当に難しいんですね。これまで伏線回収がなんだーとかしか見てこなかったのであんまり実感はなかったですが、先を考えて文章を考えるって難しいですねー…
人生みたい
実はすでに何個か伏線があったりなかったり…?
まあ、気が進んだら考えてみてください。
ここまで読んでいただきありがとうございました。