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周回少女  作者: i
第2章 ─上演─ <体育祭編>
26/26

第25話 ─戦争─

前回のあらすじ


人の考えていることは、どれだけ時代が経ったとて、到底分かりっこない、深く明暗分かれる、まぁ言葉にするべきではない、そういう世界だ。

いわば、神秘的なものとも言える。


別に私は美しくとも何とも思わないが、わからないが故の恐怖や興味はある。


長らく研究を進めてきたつもりだったが、何もわからない。

今回だって、前だって。

いつだって人の想いは、不確定要素の塊で、私の仕事を増やすに過ぎない。


まぁそこはいいのだが、どうせなら毎回同じように好意を抱き、同じように恨みを持ってほしいものだ。

─────────────────────────


作品を開いていただきありがとうございます。iです。


前書きの前(?)に、私は前書きや後書きで無駄におしゃべりしてたりするので、前の話から見たほうがいいかもしれないです。


メリークリスマス!

ハッピーニューイヤー!

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!


というわけで、今話は

「2026年!大晦日だヨ!

 クリスマス体育祭!お正月編!」

ということで、いつもとは一味も二味も違う一話をお届けします!

嘘です。


それはそうと、明けましておめでとうございます。

今年も今年とて、のんびーり小説を書いてまいります。

今見たら、前の投稿日がちょうど一か月前で、うわぁ…って思いました。

書くの遅すぎですね。


やっぱ前書きで長く話すと、本編を読む体力を削ってしまいそうなので、ほどほどにしといて、後のことは後書きでだらだら話しましょうかね。


今回も今回とて、二万字弱です。

頑張って読んでください。


それではごゆっくりどうぞ…


色々自分の中で理由付けはしたけど、はたから見たら逃げてるだけだもんなぁ…

狛枝君になんて思われてるんだろ。

っていうかあんなこと言っちゃったけど、もしかしバレてるのかな…

いやー…どうせなんとなく察しつけられてるよねー…気まずいよー…

いやまだ気づかれてない可能性も…いやないよねー…うーどうしよー


今だけはこの晴天の明るさが嫌になる。


ていうかそれなら競技ないって嘘もバレてるのかなぁー

そうだよねー…狛枝君察しいいし、気づいてないなんことないよねー…

あーうー…どうしよー


戻ってきた観客席には当然狛枝君もいるはずもなく…

そして当然話す人すらいるはずもなく…

さらには特別見たい種目何てあるはずもなく…


けれどこの何にもない時間は、たまに訪れるのならぼーっと考え事をするのにちょどいい。


ここに来てから色々変わった。

というよりかは、狛枝君のおかげっていうのが大きいんだろうけど…

こいしちゃんの豹変ぶりと言い、結局いつまでたっても受動的だったはずの私でさえ、あんなことを言えるようになったしで、狛枝君には言葉にできない力があるとしか思えない。

いや、確かに才能力?だっけ。

を持ってるとは言ってたけども、そういうことではなく…


才能力ねぇー…


自分で持ってるのに、まるでその存在が掴めずにいる。

私のは…他の人を治せる、でいいのだろうか。

自分を治せたことはないし、多分あってるんだろうけど、正解が存在しないのはとてもじれったい。


とはいえ、そんな単純なのだろうかね。

狛枝君はやけに私に才能力を使わせたがらない。

聞く感じ、なんかしらの副作用的なものがあるのだろうか。


副作用…副作用…?

それらしき症状が思い当たらないが、ないということもあるのだろうか。

本当にじれったい。


才能力といえば、さっきの二人三脚でもしっかり使ってたよなぁ、あの怖い人。


あれ、そういえばおかしいよね。

一人は徒競走でも見た、なんかすっごい足が速くなる、みたいなのはわかるんだけど、もう一人はどうやってついてきてたんだろ。


うーん…さすがにもう一人がめちゃくちゃ足が速いっていうのは無理あるだろうし、となるとやっぱり才能力?

といってもどんな才能力なんだろ…

まったく同じってあり得るのかな…そうじゃなかったとしても選択肢は無限に近しいほどにあるんだよなぁ…


うーん・・・


うー…普段の医療に関する分析力をここで発動できれば…

こういう自分の好み以外にもその能力を転換できる人こそ、天才っていうんだろうなぁ…



『概ね、適応って言った感じだろうか。』


『あーなるほどね。確かにそれなら辻褄も合うね。』


仁南がいなくなってからはやけに素直にどいた古波蔵に、終始当惑させられながらも、自分の中での憶測を話す。


『そうだな、多少能力は違うかもしれないが、大体あってんだろ。


 それに才能もだが、特に才能力は人間性の鏡だ。

 才能は被ることはあるだろうが、才能力まで全く一緒ってことはおそらくありえないな。』


『んんー?どういうこと?』


『ああいう陽キャグループには、周りに着いてくだけの真似事してるやつ、いるだろ?

 あいつもそうだろうし。そういうことだ。


 これで例えるなら、模倣とかのほうが最適かもな、表現としては。』


『うわー!すっっっごいわかるー!

 自分の意志なんてないくせに、無駄なことばっかりマネする奴!

 物凄い説得力だね、それ。』


『ま、これも今までの経験からの憶測にすぎないけどな。

 イレギュラーなんていつでも起こりうる。』


『それはわかるけど、あいつがいレギュラー第一号だったら嫌だから、違うね!』


『なんだその理論。

 気持ちはよくわかるが。』


『でしょー⁉

 ていうかあんなやつでも、才能力って手に入れられるんだね。』


『んまぁ、才能力は人間性を反映するってだけで、良し悪しは関係ないんだろうな。』


『えーそれじゃあ、なんかあいつらが持ってて私が持ってないと、負けた気がするから嫌なんですけどー

 

 なんか才能力確定入手イベントとかないわけ?』


『前も言ったが、そこまでは知らん。

 

 ただ、才能のうちなんかしら特定の具体的なことに拘って想い続けたり、し続けたりすると気づけばってことは結構あったな。

 それか、三途の川で水遊びするくらいの生死の狭間を体験するかだな。』


『後者は絶対体験談でしょ…

 

 そういえば仁南ちゃんて才能力持ってるんだよね。

 聞いてこようかなー。ってあ、あの子今競技中か。

 どうせなら聞くついでに見に行こうかな。

 なんやかんやであの子が一人で頑張ってるところ見たことないし。』


少し悩むが、現在の少しの苦痛は未来への安泰の切符だ。


『あー…やめといたほうがいいんじゃないかなー』


『あら、そりゃまたなぜ。

 もしかして…私にまだここにいてほしいってこと?』


『多分だけどな、あいつ別に今競技ないと思うぞ。

 さっきだってお前から逃げるように出てった訳だしな。』


『ふーん、はくがそういうんだったらきっとそうなんだろうね。


 にしてもなぁ…はくってそういう勘はほんと嫌というほど鋭いのに、他のことと来たら…はぁ。』


『お前さっきもそんなこと言ったよな。

 結局なんだかんだではぐらかされてたけど。』


こちらもまた悩むそぶりを見せる。

安泰な未来への切符なんていったが、現在の痛みが大きすぎれば、もはや意味をなさぬ理論だ。


『んー言っていいのかわかんないな。

 あの子のためにも黙っておきたいし、打ち明けたい。』


『なんじゃそりゃ。』


『ていうかあんた、思い当たりないって本気で言ってんの?

 はくはまぁ…事情があるのは理解してるけど、一人の女の子としては、普通に殴りたい。』


『私そんなに非常識なことしてたかなぁ…』


『あのね、鈍感キャラでいたいならそのままでもいいけど、女の恋心ってのは色々複雑なんだからね!

 一回タイミング逃したら、もう実らないことだってあるんだよ⁉』


『ちょっとまて…

 本気で言ってんのか。』


『あぁ…ごめんね、仁南ちゃん…

 はくがこれほどの鈍感クソ野郎だとは思わなくて…』


『…』



『…私から言っておいてあれだけど、やっぱ聞かなかったことにして。

 そもそも間違ってるとでも思っといて。』


『と言われてもだな、流石に厳しいもんがあるなぁ…』


『まぁこれに関しては行っちゃった私が悪いんだけどさ。

 気にせず関わってあげて、あの子のためにもさ。』


『…だな。』


『…』


『…』


沈黙の居心地だけでこれだけ差があるのだから、ありえなくない話ではないのかもしれない。


『じゃ、私はトイレ行ってくるけど、どうせ一人ならちょっとは考えてみてあげてよね。』


『…あぁ。』


…色々考えるもんだから、いや…いや、本当に何でもいい。

今はただ…はぁ、少し落ち着こう。


『…』


世界は…静かだ。

生憎、寿命はあまり長くはなさそうだが。


『もう古波蔵は行ったぞ、さっさと出てこーい。』


『あんたには何が見えてるんだか…』


まるで被害者のように観念して出てきたのは、改めて見ても不思議な金髪少女、スカーレット。


『盗み聞きしてたくせに言ってんだ。

 頭は冷えたか、嬢ちゃん。』


『だまれ。気持ち悪い呼び方すんな。』


『そっちから来たのになんてこと言うんだか。』


『それとこれとじゃ話が別。』


『そうですかい。んで、何の用?

 古波蔵は待っときゃ来るだろうが、そういうことじゃないんだろ。』


『…さっきの話のこと。

 

 認めたくはないけど、あなたの言うこともわかる。

 色々見失っていたというか、自己中なことをしてたのは…その…本当に申し訳ないと思ってる。』


心にも思ってなさそうなことを、こうもわかりやすく苦い顔で言われると、逆にどうしたらいいのかわからない。


『だからその…今後の行動はちゃんとこいしちゃんのことも考えるし、あなたが望むんだったら…こいしちゃんにも私から色々言ってあげるからさ。

 今はさっきの話に協力して…ください…』


おそらく他人に願い事なんてしたことのないであろう彼女なりに、色々考えだのだろう。

初狩りというか、現実は残酷というか。

こんなことを言うべきではないのだろうが…まぁ彼女のためということにしておこう。


『あのなぁ…まぁまず恐らく死ぬほど嫌いであろう私にそういう態度で話ができたことは高評価だ。

 それは認めよう。

 

 ただ…あぁ、申し訳ないがそれ以上に言いたいことが色々ある。

 あー…なにから話そうか。

 

 まずだな、これは私の言い方も悪かったんだが、別に謝れって言ってんじゃない。

 ただ付き合い方を考えろってことだ。きっとそれはもうわかってるはずだ。

 それでも謝りたいなら、あいつに直接言え。

 私に言ってどうする。


 んで次だ。

 お前さんが頑張ったお願いが、普通に嫌だ。』


『は?』


『いやさっきの見ただろ?私、足かけられて、石投げられてんだよ。

 これ以上エスカレートしたら、いよいよ私死ぬだろ。

 普通に嫌。

 

 別に相応のメリットもないし。』


『嫌だから私からこいしちゃんに掛け持って色々出来んの!

 十分すぎるというか、過剰なくらいだけど⁉』


『別にあいつにしたいことないし。

 というか、もしあったとしても、お前に掛け持ってもらう必要はない。』


『じ、じゃあ私だっていい。

 私のことを好きにしてくれていい。』


『お前は無駄話が好きなんか?

 おんなじことを話すだけになるぞ。』


『じゃあ何をしたらあんたは協力してくれんのよ!』


『そもそも私に協力をせがんでくる意味が分からん。

 他の奴でいいだろ。』


『他の奴こそ、これを利用してこいしちゃんに手をだしかねない。』


拗ねた子供のように、ただ淡々と思ったことだけを言っている。

変に余計な言葉を付けたられないのは、気分含め非常に都合がいいのだが、気持ちの悪さもひとしお。


『そりゃ私に縋る理由にはならねぇだろ。』


『こいしちゃんがあなたの話はよくするし、よくわからないけど強い?みたいなことを言ってたから。』


『あいつ…』


別に咎めたわけじゃないが、一言くらい言ってもいいだろう。


『それはそうとだ、軽々しく自分のこと売るんじゃねぇぞ。

 さらには他人までとか、最低最悪もいいところだ。』


『…』


焦ってただのなんだので色々あったのだろうが、きっと放っておくほうが後々面倒だ。


『それに…んまぁ色々説教したけどな、そもそもお前、最初の話だって本心じゃないだろ。』


『…あんた、ほんとにどこまでわかってんだよ…』


『さあね。ただ、お前はもうちょい良い嘘のつきかたでも学んだ方がいいかもな。

 それか、もっと誠実に生きるだな。』


『…』


言いたいことは山ほどあるだろうが、言葉にできないであろう様子は、見ているこちらももどかしい。


『最後だ。これを話し終えれば、どんな暴言動だって認めてやる。

 もうちょい我慢しろ。


 でだ、私に特別メリットもなく、さらには嘘をつき、友人すらも勝手に売るようなお前のどこに。

 どこに私を手伝わせたいと思える要素があるんだ?

 

 お前は女、ひいてはアイドルだ。

 さらにはなんだ?お前の家はでけぇ会社までやってるらしいな。

 そんなお前は、これまでの人生、願えば叶ってきたんだろうな。

 そんな経験のせいで、お前は意識せずとも他の奴らを見下してる。

 今の話でだって、きっとそうだ。


 お前は色々恵まれてる。

 そんなんだから、人柄、錯覚した立場。

 たったこれだけを見直すだけで、私みたいな捻くれ者だって、手玉にできる。

 人生効率よく生きてみろ。

 そうすりゃ、愛しの古波蔵だって守れるだろうよ。』


『…』


結局最後まで、スカーレットは変わらなかった。


『んじゃ、私の話は終わり。

 あとは煮るなり焼くなり好きにしてくれ。』


『…全部わかってるみたいに…』


結局そのままどこかへ行ってしまった。

色々言いたさそうではあったが、ろくに反論できず、言葉にもできずと。

まぁ、アイドルと言われた彼女も、ほどほどにきちんと少女していて、なんだか安心する。


『ぐあー…』


変に力んでしまっていたので、楽にすると変な声が出てしまった。


ちと言い過ぎたかなぁ…

別に手を貸すくらいならいいんだが…素直に従うというのは、まぁ…彼女のためにもならないというか。


世界は…今日も静かだ。


『今はとりあえず─』


長生きすることを願って


『寝るかぁ。』



『むぎゅっ─』


『…』


ひょっひょー、(ちょっとー、)ほほへははー!(この手じゃまー!)


この世界では、私が願ったことがすべて叶わないようになっているのかもしれない。


『くそー…絶好のチャンスだったのに…』


寝ている間にすら気配に反応する体にしたのは、どこぞのクソガキのせいだ。


『寝込みを襲うとか、とてもアイドルとは思えんな。』


『欲しいものは、何が何でも手に入れるっていう貪欲さが、アイドルには必要なの!』


伸ばした手の先には、まだ文句を言っている古波蔵。

不意に唇に触れてしまったことについては申し訳ないとは思うが、そもそもは元凶はこいつだということを思い出して、なんだか損した気持ちになった。


こいつはこいつで、本当に面倒くさい。


『時間なら普通に起こせ。

 無駄に一芸仕込まなくていいだろ。』


『だってー!はくはそうそう隙を見せてくれないからさー!

 キスチャンスなら余計に!

 だから、これは隙ありそうに寝てたはくが悪い!』


『んな無茶苦茶な。』


『寝ててもダメってなると、いよいよ麻酔でも使わないと駄目な気がしてきたなぁ。』


『お前は何を目指してるんだか…』


変に組み合わされた表裏合わさったこいつとの会話は、気味悪さが何より勝る。

あいつらと競技をするだなんてもっての他だが、こいつの相手も同じくらいの苦痛だ。

裏だけならまだしも、この調子じゃあ、どうしようもないな。


『ドッジボールまでは一応まだ時間あるけど、どうするの。

 このままだと、ほぼ確実にコートはコロシアムと化すけど。』


『別に一回当たるくらい大丈夫だろ。

 あとは外野で適当にやるさ。』


『んなうまくいくかね。』


『さあ?どうなるにせよ、結局は成り行き次第だ。

 あんま考えてもしょうがないだろ。


 んじゃ、そろそろ行くか。

 あんまり仁南を一人にするのもよくないしな。』


『おー気遣いできてえらいねー』


『ならお前も、私にちっとは気遣ってくれてもいいんだがな。』


『じゃ!これからもイチャイチャしてあげる!』


『意地でもお前だけは当ててやる。

 覚悟しろよ。』


『やだこわーい。』


『…』


『ちょっとー!置いてかないで!』


あぁ、今日も世界は騒がしい。

こういうことを思うだけで、きっと人生はもっとくだらなくなる。


『はく、ちょっと待って。』


やはりこの緩急が気持ち悪い。


『…なんだ。』


『真剣に聞いて。


 きっとこの先ろくでもないことが起こる。

 …約束、忘れてないよね。』


『あぁ、ただあんなガキどもに力なんざ使わずとも、どうとでもなると思うけどな。』


『いや、それもだけど。

 なんか…嫌な感じがするの。』


藪から棒に、そんな曖昧なことを言われても信じ難いが─


『…というと?』


私も何かしらを感じないかと問われると、嘘になる。

残念なことに、私はそれを言葉にできない。


『何もわからない。ただ、なんとなく嫌な感じがするの。』


『…と言われてもだな。

 私たちが建てられる推測っつったって─』


『私たちはまた周っているのかもしれない。』


『だな。


 ただ、んなことを探ったって、私には分かりっこないんだな。

 前みたいにお前はどうなんだ?』


『今回も周っているとしたら、残念ながら私も記憶を飛ばされてるみたい。』


『んまぁそもそも論でいくらだって語れる。

 いくら探ったって仕方ない。

 今はとりあえず、成り行きに合わせるだけだ。ドッジもだけどな。』


『あなたのことだから、成り行きで力を使いかねないって話。』


『さあな、それこをまさに成り行き次第だ。』


『…やめてね。

 もうこれ以上は─』


『わかってる。自分が一番、わかってる。

 ただ、私もなんとなくだが、力を使う気がしてる。』


『…!ならやっぱり…!』


『ただ、それはきっと誰かを守るためだ。

 決して誰かを傷つけるためじゃないと、ここに誓おう。

 

 破った時には、私のことを好きにしていいし、お前も好きにしていい。

 キスでも交際でも、嫌いなファンを無視したって、なんでもだ。

 これでいいだろ。』


『…あくまで自分第一も追加で。』


『あいあい。』


結局私は、未来だって、自分以外のことだって、案外わからないことばかりだ。



『うーーーー!

 にーーーなちゃーーん!』


『えちょ、えっ─』


まさに「どすん」というような効果音が適すような状況に、思わず呆れてしまう。

色々話すべきこともあっただろうに、まるで遠い昔のことの様。


『仁南、ドッジボールのエースだ。

 今のうちに潰しといてくれ。』


『わ゛…私が潰される…』


『ちょっとー⁉それは私が重いってことですかー!?』


『…』


おや、何やら静かだ。

さっきまでは古波蔵が一言こういうことを言えば、どこぞのスカーレットが飛んでくるはずだが…はてさて、なんでやろなぁ…


『ふん!皆してそういうこと言うんだら!』


『はぁ…はぁ…』


まさしく「ふんす」というような顔だ。

非常に面白い。


『そ、そうえいば狛枝君…

 上白沢先生がぁ…探してたよ…』


『上白沢…』


あぁ、あの人。

ぶっちゃけた話、主に教師だが、いまだに誰が誰だかわからん。


『んま、後でいいだろ。

 どうせ時間はいくらでも余る。』


『大丈夫かなぁ…大事じゃないといいけど。』


『まぁ─』


『おー狛枝ー!

 ようやく復活か!ダイジョブ?』


『あぁ、もうバッチリだ。』


さっきの話とは打って変わって水々しい柏木と、いまだカチカチしてる町田。

古波蔵に隠れがちだが、この柏木という男も、中々に年中うるさい。


とはいえ、数少ないまともに話せる友人だ。

きっと大事にしなければならなのだろう。


『あれ、ローラちゃんは?

 一緒じゃないんだったら、狛枝に用とかないんだけど。』


『おいこら。』


あぁ…こいつがチームメイトであることを、これほど憎むことになるとは思わなかった。

まぁ、こんなくだらない平和を見せられると、一周回ってほっこりする。


にしても…スカーレットが味方かぁ…

まぁ別に私はいいんだけどさ。

いきなりほぼ知らんガキに説教され、そのガキとも同じチームにされ、おそらく被害者になる。

いやー、あいつも可哀そうだなと。


『うわーなんか敵いっぱい集まってきたんですけどー

 助けてはくー』


『私も敵だろ。

 それに、行きたいなら行けばいいじゃねぇか、愛しのお仲間さん方に。』


『意地悪だねぇー

 競技中はほんとどうなることやら。』


『そりゃお前がずっとボール貢いでもらえば解決だろ。』


『きっと私の意図したことじゃないけどね⁉

 ただまぁ、あんまそれって良くないじゃん?

 皆で頑張ろうねーみたいな感じじゃん?』


『高校生ならガチで勝ちに来るとは思うけどな。

 どうせお前が投げたほうが強いーって言って。』


『それはそれでさー、勝てるかもしれないけど、ぜーったい楽しくない人出るじゃん!

 それがやなの!』


『高校のチーム競技何てそんなもんだろ。』


『そういう固定概念が、現状を生み出してるんだと思いますー!』


『はいはい、お宅は好きにやってくださいな。』


騒がしいこいつと私の会話は、他の奴らの介入を許さない。

故に広げられるこの展開は、逃げられず、少なくとも私の意志では止められない。


『やっぱ両チームが、そーゆースポーツマンシップを持ってるからこそ、いい試合ができるんですー!』


『できればいいけどな。』


残念ながら、世界は残酷だ。

もし過去に一度でもそんな試合があれば、まさしく運命の悪戯だろう。


『ま、祈るのは自由だな。』


『もー、ほんと嫌というほど現実主義だねー

 たまには理想を語ろうよー』


『悪いな、夢は嫌いなもんで。』


『狛枝…いつかお泊りでもして、いい夢見ような…』


『なんかお前にそんなこと言われると癪だな。』


『なんでぇ…?俺、結構いいこと言ってたと思うけど。』


いつか、そんないい夢をかなえてみたいものだ。



降り立つ戦場。律儀に引かれた境界線と、立派に掲げられた形だけのルールは、戦場と呼ぶには不愛想であり、欠かせない。


横にも正面にも、相変わらず見たことのあるような、ないような顔たち。

きっとどの戦場に降り立ったとて、誰と降り立ったとて、変わることはないだろう。


『─、礼!』


─お願いしまーす‼


そんなこんなで、戦いの火ぶたが切って落とされた。


『では、ジャンプボールの代表選手はこちらへ。』


そんなこんなで、切られた戦いの火ぶたは切って落とされていなかった。

仕方ないじゃない。ドッジボール何て、いつぶりかすらわからないくらいだ。


こっちからは小倉が。

こう見ると、やはり異次元にでかいというか、圧がすごいというか。

それとも、世の男子学級委員長は皆、背が高くなければならないという規制でもあるのだろうか。


『…』


改めて、わざわざクラスを分断してできたチームを見てみると…

なるほど、まさしく一軍とそれ以外。

僕たちの考えた最強チーム、といったところか。


今の時代、容姿だの雰囲気だので判断するのは浅はかなのだろうが、実際その通りだった時には、納得できてしまうのがほとんどだ。


『狛枝…覚悟しろよ。

 俺はここで大活躍をし…スカーレットさんを振り向かせてやるからな…!

 

 お前のアイドルハーレム天下が、そう長く続くと思うなよ!』


『あそ、勝手にやってくれ。』


となれば、こいつはその数少ない例外だろうか。

私個人の感想を言わせてもらえば、こいつは明らかにあちら側(一軍)だ。


『…お前は、こっちでいいのか?』


『んー?何がー。』


『私の勝手な印象だが、お前はあいつらと気が合うんじゃねぇかって思ってたんでな。

 ほら、あいつら楽しくお仲間集めしてるだろ?』


『あーそゆことね。

 別に?俺あいつら嫌いだし。』


『そうか。』


改めて、運命的というか。いや、運命の思し召しだな、この出会いは。


『それに…俺は…

 ローラちゃんにボールを投げられないし…!

 ローラちゃんと一緒がいいし…!

 

 そして何より!味方としてローラちゃんと勝ちたい!』


『あんま本人居る前で言わない方がいいだろ。

 そいういうこと。』


『へっ!今更だぜそんなこと!』


『別に誇りにすることじゃ─』


私が気づく間もなく、案外あっさりと、やっと火ぶたは切って落とされた。


『これって触っていいやつ?』


『あー大丈夫のはずだけど。』


空中を漂ったボールは、綺麗な軌道を描き、見事こちらに飛んでくる。

小倉の功績を称えたくもありながら、あまり触って目立ちたくないのもまた真実。


『活躍すんだろ、お前取れよ。』


『いや─』


言い分を聞き切る前に、もう重力は私たちに襲い掛かってくる。

無視してもいいが、私は場の盛り上がりを結構大切にしたりする。

ここで興を削ぎたくないというのもある。


『ほらよ。』


たかが重力だけのはずが、受け取った腕からはひしゃげそうな衝撃を感じた。

やはりこう…隙間が多くなればなるほど、衝撃は…痛い。

いつしか薬の恩恵も受けられなくなった今の私は、いったい何ができるのだろうか。


『んもーしかたないなぁー狛枝君はー!

 

 ねね!ローラちゃん!ぜひ投げてください!』


『情けねぇ…』


『…』


諦めたように、これまた一切知らない外野に、ぽいっと回された。


『…!』


それでもこいつは満足げだ。


『いやー、やっぱり何をさせても、推しというのは素晴らしいものですなぁ…』


『さいで。』


『いやほんと、お前にもこの素晴らしさをわかってほしいものだ…』


『いやいや狛枝君!いい場所にいるねぇ!君は。』


『それも、でかすぎるお前のおかげだな。』


『やっぱこいつだけなんかおかしいよな⁉

 っく…俺も今でも十分とは言え、まだまだ身長は欲しいものだ…

 ちょっと譲ってくれよ。』


『はは!それは難しいな!』


私の思っていた以上に、こっち(1軍以外)はいいものだ。

…案外、いい試合というのを実現できるのかもしれない。


『…お前ら、ちゃんと集中しとけよ。

 特にお前は、恥かくわけにはいかないだろ?』


『そりゃもちろん!というか、俺は油断とかしないし─』


ボコッ


『…』


手本のような、あんぐりとした口。

こいつは…本当にどうやったらここまで感情豊かになれるのだろうか。

今のところそれだけは見習いたい。


『ほーら言わんこっちゃない。』


『ははは!油断大敵だな!

 大人しく外野に行きたまえ!外野は外野で活躍できるだろう!』


『お前ら…!一応仲間だろ!

 もうちょいさぁ!温情とか無いわけ⁉』


ぶつくさと文句を言いながらも、柏木は大人しく外野へ行った。

小倉も、落ちた球を外野と回すことで忙しいらしい。

仁南は…最初から外野にいる。


なんとも寂しくなってしまったものだ。


そう、今の私はとても暇だ。

…たまには、面白いことを起こしてみようか。

そう、今の私は暇なのだから、同機はきっとそれだけで十分だ。


『なぁ、スカーレット。』


『⁉な、なに。』


後ろから、話しているとは思われない角度、声量で。


『お前、あの後古波蔵となんか話したか?』


『…お前には関係ないだろ。』


『まぁ私は別にお前らがどうなってもいいけどよ、一つ教えてやる。』


顔は見えずとも、相変わらずな態度。

残念ながら、今の私でも声の揺れは見逃さない。


『古波蔵はお前の違和感に気づき、そしてお前のことをあまり良いようには思ってない。』


『…』


わかり切っていたことであろうが、それでも当人にとって残酷な事実は、誰でも肩を落とすものだ。


『やはりお前ら互いの友人である私としては、仲直り、してもらいたいわけだ。』


『お前と友人になった覚えはない。』


綴る言葉を遮られないということは、概ねその意思はあるのだろう。


『ところでお前、男の友情についてどう思う?』


『は?何いきなり。』


素っ頓狂な声は、これ以上変に長引かせることは、悪手であるとしみじみ伝えてくる。


『男同士はな、喧嘩だの食い違いだのあった時、女子に比べて仲直りすることが多いらしいな。

 女子からはよくバカだから、なんていわれるが、ちゃんとした理由がある。


 それは…』


『…』


呆れるため息も、反論の言葉も、すべて飲み込んで、仕方ないようにじっと待っている。


『正面からぶつかる、だな。

 単純で、ばかばかしくて、実にくだらないが、結論はこれだ。』


『いや─』


『そしてお前がすべき結論は、全力で古波蔵とぶつかる、だ。』


『…』


『私が言いたいことはそれだけだ。

 余計なことばっか言ったが、あとはお前次第だ。』


色々言いたいこともあるだろう。無茶苦茶な理論だろう。

だが人の心は時に、理論を超越する。


それは誰も完全に理解することはできず、もっとも利用しやすい、そんな概念。

色々と虫の居所が悪いが、たまには逆にあいつにも、私の暇つぶしに付き合ってもらうことにした。


『…』


何も言わないこの少女のことは、この少女の心のことは、私にはいまだよくわからない。


『ちょっとあなた。

 ボール、よこしなさい。』


『おお!意欲的に参加するのは素晴らしいな!

 安心しろ!僕はこの程度のことなら、何も思わないさ!』


『…るさい。』


『いっけぇー!スカーレットさーーん‼』


『…』


歩みだしたまま、止まることはない。

よく広げられた腕、世にも美しい踏み込みから、周りへ風をまき散らす。

長く長い、一瞬の振り切り。

その腕は、一瞬異形と思えるほどにしなる。

それは、見事なまでに古波蔵を捉えた。


十分だった。これだけ要素があれば、その威力は、遊戯として決着をつけるには、十分すぎた。


『!』


古波蔵は声も出ぬまま、見事に当たる。


『うおっ…』


『うおー‼やったぜスカーレットさん!』


大きな歓声が起きたわけではない。

しかしこちら側は皆、内心妙な高揚感に包まれていたように思う。


特別関わりがあったわけではないだろう。

古波蔵に恨みがあったわけでもないだろう。


ただし、我々は皆人間だ。

目立たず、日陰者側の我々からしてみれば、自分たちとは違う存在が、敵として立ちはだかったのなら、ないはずの敵意は湧きあがり、その敵がやられれば、心は高まるというものだ。


…やはり、スポーツというものは不思議だな。


『…』


何も言わず、どうだ、という様子でこちらを見てくる。

…すがすがしいほどのドヤ顔で。


『思い切りがいいな。

 想像以上だ。』


『当たり前でしょ。私はいつもあなたの想像以上だから。』


『確かにそうだな。』


この少女は今まで逃げられたのだろう。

それか、何にも乗り越えずに済んだのだろう。


そんな少女が今、逃げられない、乗り越えなければならないこの状況へ至ったこと、まずはその幸運を喜ぶべきだろうし、私が無理やり押し込んだとしても、そこを自分で超えたということは、きっととても重要なことなのだろう。


まぁ…思ったより強引な方法だったが。


『まったく…』


敵を背にして、堂々と隙を晒すのはあまり感心しない。


『─いたっ』


『警戒心のなさも、私の想像以上だな。』


『…は。』


高すぎる威力は、避けられるものではなかったが、威力故なんとも高々と打ち上げられていた。

投げれられた球は取れずとも、落ちてくる玉程度なら、格段に容易だ。


『ふふふ…そういうことね…はくの仕業かな?

 そうだね…とっても驚いたよ。

 しかも、ここまで思いっきり投げられるとはね…』


そこには不敵にうつむいている、少女がいた。


『ただ…この古波蔵こいしが、たかが一発でやられると思ったら─』


バッ、と顔を上げ、嫌というほどの叫ぶ。


『大間違いなんだからー‼』


怒りとか、驚きとか、混ざって混ざって。

まだ何も処理できていない頭で、頭角を現したのは─


『んー!久々に楽しー‼』


共に、子供のころ遊んでいた楽しさ。

…だと思う。知らないけど。


『こいしちゃん…!』


当たったはずのスカーレットも、愉悦に浸ったかのように、古波蔵と見つめあいながら外野へ向かう。

当人たちからすれば、さぞ熱い展開なのだろうが、はたから見れば中々シュールだ。


『はは。』


本来はあそこ二人で永遠と殴りあってもらうつもりだったが…まさか調子に乗ってあそこまで隙を晒すとは思わなかった。

どうせすぐ戻ってくるだろうが、それまでは中々苦しい未来は見える。


うーん…まぁ何とかなるだろ。

今はとりあえず、成り行きに任せるかぁ…



…こうやって少し外側から見てみると、青春というものをようやく実感する。

案外、そういうのは当事者にはわからないことで、部外者が騒いでいるだけなのかもしれない。


にしても…


『…』


長いなぁ…


取った取られたを繰り返しているうちに、スカーレットは戻ってきていて、古波蔵はまぁ…そうそう当たるような奴じゃない。

先ほどの先制攻撃と違って、正面からこいつらが向き合うと…


『ふははははー!甘い!甘すぎるぞローラちゃん!』


残念ながらうるさいだけではないあいつは、力負けしているはずだが、見事にスカーレットを攻略して見せている。

何度もあの凶弾に耐える肉体と精神は、目を見張るものがある。


とはいえ相手はスカーレット。

たとえ簡単に当てられずとも、その凶弾を何度も受け続けるのは容易ではない。

そしてまた、こいつに当てるのもまた容易ではない。


ざっと言ってしまえば、拮抗している。


一応スカーレットのほうが有利というか優勢なのだが、古波蔵も、古波蔵も…

いやなんで拮抗してんだよ、あいつ。

普通に考えたらおかしい話だが、喧嘩別れの旧友と全力でぶつかるとかいう胸アツ展開で覚醒でもしてるのだろうか。


…長い。


他の奴らは完全に蚊帳の外。

いい加減飽きてきているように思える。


はぁ…そろそろなんかした方がいいのだろうか。

ん?

…ふふふ、私に責任はないぞ。

恨むなら、運営と、視野の狭い自分を恨むんだな。



あの二人は…

方や、あれよあれよと投げては受け、興奮のあまり叫び散らし、投げては受け…


『あははははー‼』


方や、騒がず狂気的な笑みのまま、えげつねぇ送球ばかりしている。

軽々しく受けているようだが、古波蔵の球だってそれなりには、というかかなり、それはまぁ強い。


『…‼』


見ているだけでも痛々しいことこの上ないが、そこはまぁ、ドーパミンというかアドレナリンというか。

人の体は本当に恐ろしい。


『─あだっ!』


そういう訳で、私は優しき心の持ち主なので、止めてやることにした。


『?

 …』


『は?』


どこからともなく、というか、ただの彼女たちの視界と蚊帳と陣地の外から、いつしか現れていたもう一つの凶弾が、見事なまでに隙だらけな古波蔵を打ち抜いた。


『?』


二人とも、まだ状況を飲み込めていないように見える。

古波蔵なんて、落ちてゆく球を、ただぼーっと眺めている。

そりゃそうだよなぁ。

普通に考えたらこんな激アツ展開に水を差すなど、空気が読めないのもいいところだ。


全く…誰だ?そんな常識のないやつは。


『おい…』


…スカーレットから途轍もなく睨まれているが、なぜだろうか。

全く…今はそんなことより、空気読めないどこぞのバカタレを探しに─


『ちょっと仁南ちゃん!?

 あーいや違うね、はく!どうせあんたのせいでしょー‼』


当てたはずの仁南ではなく、なぜ私を糾弾するのだろうか。

全く、冤罪をかけている場合ではない。

さっさとその真犯人を─


『…』


びひゅん、という恐ろしい音を立てて、私の居たところに見事なまでの右ストレートが飛んできた。


『ひゃー、怖いねぇ。

 何するんだか。』


『なに…あんた。

 せっかくいいところだったのに。』


『そーだそーだ!

 ぶん殴ってやれー!』


外野から飛んでくる声に呼応するように、再び空気を切る拳。


『おわっと危ない。』


そういや相手の陣地にあった球まで同時に躱すとなると、そこそこ怖い。


『…よく避けれるな。』


『んなこと別にいいだろ。

 

 それより良かったな、仲直りできたみたいで。』


『…別にお前にとっちゃどうでもいいでしょ。』


『いやー?案外そんなことないけどな。

 ま、なんだっていいけど。


 んじゃ、後は頑張れー。』


『ちょま─』


酷く狙われるスカーレットの近くになんていたら、流れ弾だの、どさくさに紛れての私怨攻撃とか、たまったものではない。

ひえー怖い怖い。


『…』


現在スカーレットを狙う凶弾は二つ。

一つは古波蔵と、何も考えずにとにかく古波蔵に回す奴ら。

一つは件の二人三脚のペアが、古波蔵の陰に隠れながら、中々の速度で回している。


正直私からしてみれば、古波蔵の方はタイミングは読める。

どちらかといえば、目立たないあいつらの方が厄介だ。

とはいえ、古波蔵も一瞬でも隙を見せれば、とんでもないのが飛んでくる。


そんな中でも、こう耐え凌いでいるスカーレットは、ほんと大したものだ。


『…』


…んー、あの二人三脚共、スカーレットを狙うように見せて、周りを狙っているように見える。


『いっ…!』


ほら見たことか。

名も知らぬチームメイトが一人犠牲に。


勝負とはいえ、不意打ちであれほどの速度でぶつけられれば、それなりに痛い。

スポーツマンシップなど、ないのだろうか…全く。


『…!』


…と、見捨てたスカーレットを横目にこんなことを言う私も、どうかしているのだろう。


こう客観的に見れている私だから、スカーレットを狙う球は実は一つだけとはわかるのだが、当事者になってみるとやはり難しいのだろう。

文句ばかりを言う観戦勢は、一度その場に立ってみてほしいものだ。


どこかパスが失敗するタイミングを探っても見るが、残念なことに嫌というほど上手い。

私が休んでいる間に、こんなことができるようになるとは、国民意識というか集団意識というか、そういう力は恐ろしい。


かと言って大人しく負けてやる気もない。

一矢と言わず、三矢くらい報いたい。



もう少し落ち着いてから行動したかったものだが、まさかスカーレットがここ数分をも凌ぐのは、流石に予想外だった。

人間の底時からとは、本当に恐ろしい。

特に、気持ちが入った時は。


気づけばこちら側も二人三脚らに当てられ当てられ。

こちらが外野に回したとて、帰ってくれば当てられの繰り返し。


そんなあいつらの狙いは、勝ちとかもそうだが、私を最後まで残して、恥をかかせるように勝ちたい、負かせたいらしい。

元外の仁南も戻ってきたが、焼け石に水。


時間が進むにつれ、二人三脚のスピードは上がり、当然威力も増していく。

さっき当たった人は、目に涙すら浮かべていた。ほんとに可愛そう。


そんでもって、最悪なことに私の予想は当たっていた。

恐らく徒競走の方が速度関係のなんかで、その相方は適応というか真似というか。

とにかく、同じような動きをしている。

どれだけ威力が高かろうと、速度が早かろうと、パス回しが成立するのはこういう仕組みらしい。


ボルテージの上がり切った古波蔵は、勢いのあまり関係ない人に当てて、いつの間にか戻っていた。


二人三脚は元外とないやのせいで、見事なまでに崩れることはなさそうだ。

もう一つはというと、なんだかんだで外野でぐるぐると…こっちが当ててもあれやこれやで外野に戻されている。

盛り上がってはいそうだが、こうやって少し外から見てみると結構退屈である。


『ちょ…狛枝君…

 死ぬ…』


パスが一度回されるたびビクビクしている仁南を見るのは、少し面白い。


『もしかしたら、お前が狙われてるかもな。』


少し冗談交じりにそんなことを言うと、余計に震えは増している。


『おわわわわ─』


のんびりと眺めている私と、そのそばで怯えている仁南。

何も知らない子供と、ドッキリに巻き込んだ親みたいな、そういう構図だ。


『んじゃ、私はこれでー。』


『えちょ!ま、待って…』


私がノコノコと逃げようとすると、ペタリ、と腰が抜けてしまったらしい。

見事なまでに座り込んでしまった。


『はは─』


特に考えずこんなことをしてしまったが、あの冗談はほとんど真実と言っていい。

そんな狙われている奴が、目の前で転んだりなんかしたら、そりゃ絶好のチャンスというやつだ。

そして、その投手のあらゆる横行を見てきた。



流石に私だけだとは思いたいが、信じきれと言われれば無理な話だ。


『…まさかな。』


そう呟きつつも、体は逃げたはずの現場へ戻ってしまう。


『あっあっ…』


仁南は気づいていないようだが、球の一つはもう後ろの内野のガキが持っている。

パス回しをするような動きだが、その視線は仁南も捉えている。


『クソがっ…』


振りかぶった時にはもう遅い。

これなら古波蔵だって許してくれるだろう。


実際は、そんなことを思うよりも先に、私の体は青く包まれた。


『った…』


…せめて希望だけは残さないとな。


『なんだよ、かっこつけてんのか?主人公か?』


仁南を守ったはずの私は、なぜだか糾弾されている。


『少なくとも私は、腰抜かした女子に、全力で投げる奴は主人公だとは思わねぇな。』


とまぁ、私はよさげなところで当たって、外野に逃げられたわけだが─

あいたたた…

あいつ…才能力もガチガチに盛って投げやがって…


当てられた左腕を、それっぽく振る。


『仁南ちゃん!早く立って!

 まだあなたには働いてもらうんだから!』


『ひゃあっ!』


仁南を引きながら、再び飛び始めたパス回しを、隙のないように避け始める。

私の当たった球は、こちらの陣地に落とすようにしておいた。

上手いことして外野へ回せれば、まだ可能性はある。


というか、才能力の副作用の方が痛くはあるのだが。

まぁ…これは過去からの積み重ねだろうなぁ…古傷の悪化というのは本当に。

肉体的にもだが、過去を嫌でも思い出され、精神的にも苦しいものだ。


『はく…あれ、ほんとどうすの…』


『…流石にこれ以上の先延ばしはなぁ…

 今だって冷え冷えだしなぁ…』


今もなお展開に変わりはないが、あのスカーレットが、仁南と協力している。

原因や過程はどうでもいいとしても、変わったのだ。


こいつこと古波蔵だって、なにはどうあれ変わった。


仁南も、妙に素直というか色々いうようになったというか、まぁ変わってはいる。


たった数か月の中で築かれた、本当に薄っぺらい友人らに、ここまで肩入れをするのはどうかと思う。

あぁ、実に非合理で私らしくもない。


『どうしようかな…私が言って貰えるかな…』



『古波蔵…』


『ん、なに。』


…バッカだなぁ。

こんなことに命かけるなんて。


『これは…仁南と、スカーレットと…

 ついでに、お前のためにってことにしといてくれ。』


二人三脚共に視線が行っている間に、仁南にはしっかり働いてもらった。


『え。』


音すら立てず、本当に優しく、本人も気づかぬほどの力で、古波蔵を当てた。


私は、戻らねばならない。

変えるだけ変えて、後は放っておくほど、無責任なことはしたくない。


…こういう変に情に厚い、昔のことなんて完全に消せたと思っていが、案外こういうのは嫌いが故に忘れられないものだ。


『んじゃ、なんかあったら頼んだわ。』


丁度当てられた仁南と、そしてスカーレットと入れ替わり、戸惑う古波蔵を置いていく。

ここまで人を想って、自分の情に動かされ戦場へ赴くことなんて、後にも先にもないだろう。


…たまには、最強の自分を演じてみて、現実に絶望しておこう。

何をやったって、結果は変わらない。

私のせいでもあるのだが、別にそれは彼らの意志でもないのだから、構わないだろう。


あ゛ぁ゛…仕事が舞い込んできた。


…話す気が失せた。


またいつか会おう。

今度は君たちの世界で会いたいものだが、まだ先だな。


本当に運がいいな、君たちは。


ただ、私からすれば時間稼ぎでしかない。

いつか必ず、君たちから解放する。


ま、その話はまだまだ先だな。


           次回 第26話 ─完敗─


─────────────────────────

第25話 ─戦争─


意味は『激しい競争や混乱』。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


ここでは、前書きみたいな独り言や、ちょっとした裏話だとか、そんな感じのことを適当に書いています。

興味がなければ読んでいただなくても結構です。


前書きからずいぶん時間が空いてしまったもんで、自分で前書きを読み返すとかいうバカみたいなことをしてました。


そうそう、正月の話ですね。

とはいえ残念ながら、観客全員大爆笑!みたいなお話はないんですよね。


しかも、特に何かしたわけでもないんで、これと言って話すこともないんですよね。


んー…おみくじって皆さん引きましたかね。

私はー(おみくじ確認中・・・)


あー…吉ィ…本当になんの面白みもない…

まぁおみくじに面白要素を求めるのは、底辺Youtuberくらい─

おっと、これ以上はいけない。

怒られちゃいますから。


つってもなぁ…年越しは一人で、なんなら小説めちゃめちゃ書いてましたし…

うぅ…なんだか悲しくなってきた。


うん…ほんとに何話せばいいかわからないから、びっくりするくらい支離滅裂ですねぇ…


ま、次回こそはまともになっていると信じて、一か月くらい待っててくださーい。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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