因幡の白ウサギ事件?中盤
火傷は嫌いです。(笑)
あのね。一応俺は友達多いと、思う。毎日、ラインとかくるし、週末の約束とか入るし。
ただ野郎に現状対応出来そうもないって事です。
3コール目で、繋がった。
前に、飲み会の席で「緊急通報があるので、携帯を手放せないんです(笑)」
あれってほんとだった(笑)ありがとうございます。
余裕がない俺はとにかく事情説明する。迷惑かけてごめんなさい。パートさんや、専務のレベルではない。
でも本気で辛いです。
助けてください。
「わかりました。対応します。ただ、お時間ください。」
俺の住所を聞くと、電話は切れた。
その1時間27分後。
…刻むなぁ。時計眺めてたけど(笑)
インターホンが鳴り、両手に荷物を持って彼女が登場した。
「遅くなりました。大丈夫?地図アプリに慣れなくて(笑)」
と、苦笑いする彼女は、慣れた手付きで俺にスポドリと痛み止めを渡す。
そして、そこらに散らかしていたタオルやTシャツ短パンをまとめはじめる。
「キレイなTシャツは、どこ?」
と、聞かれ棚を見上げると新品のTシャツを選び出し。俺に言った。
「ハイ。今着てるものをぬげる?」
あの?男として認識されてない?
ペットのチワワ?せめて、豆柴?出来たら、ラブラドールレトリバーが希望です。
まて彼女は大の猫好き!確か三毛猫好き!にゃおん?
いや、落ち着け。夏休みにわざわざ同僚の面倒を見に来て頂いている身に、こういう妄想は失礼だろ!
俺の脳内会議に当然気付かない彼女はテキパキと、荷物から薬とクッキングペーパーを取り出していた。
クッキングペーパー?
俺の怪訝な表情に、
「これから火傷の薬を塗ります。お話だと、胸も背中も酷いみたいなので、ガーゼをテープで止められないでしょ?体に貼付けようと思って。」
その上からTシャツを着たら、横になれると思います。と、痛みで腕が上がらない俺のTシャツをスルスルと脱がした。あまりの手際にびっくりしたら、
「男兄弟に従兄弟も男のみ。ご近所さんも兄と同年代の男性方。父は土建業。年中、父のお仕事仲間の方がいらしてました。怪我なんて日常茶飯事です。」と、この薬は、効きますよ。ちょっと高いですがオススメです。置いて帰りますから、必ず塗り直してくださいね。
と、笑いながら俺の上半身に薬を塗ってくれる。確かに効きます。痛み激減!
一瞬、ワルイモノ?って、思いました。ごめんなさい。だってあの地獄から、あっという間にこの小康状態。
その後、疑惑のクッキングペーパーを貼付けられる。ガサゴソしてそう?厚めに塗られた薬がTシャツにつかないように、貼られたのがわかった。
ゆっくりTシャツを着せてくれる彼女。
「これなら横になれる?」
ゆっくりと、俺をベッドに横にする。確かに楽になった(笑)
因幡の白ウサギも真水で洗って蒲の穂でケアしてもらったんだよな。ってことは、彼女は神話の人?小学生の学芸会の葉っぱではなく?
そんなお莫迦な脳内会議の俺を放っといて、彼女は「冷蔵庫開けていい?」と、声を掛けてきた。
「すぐに食べれるものを適当に買って来たので、後で食べれそうなら食べてね。。」
…俺のたまごサンド、いつも飲んでる缶コーヒー。隠してたけど、大好物のツインシュー。その他スポドリ諸々。両手に荷物のはずだ。
…おかーさんと、呼んでいいですか?
今なら、彼女に頼るパートさんの気持ちがよくわかる。呆れててごめんなさい。
一緒にファンクラブを作りましょう!会長は、俺が頑張ります。
痛み止めと火傷の薬、ほとんど眠れなかったのもあり、俺は布団と一体化しました。
まだ熱はあるし、火傷は痛いことは痛いけど、あの地獄からほど遠く、爆睡。
目が覚めたのは2時間後。
机の上にメモが乗っていた。
『耐えきれず余計なお世話をしてしまいました。ごめんなさい。帰ります(笑)お大事に。』
意味がわからなくて周りを見回す。
あれ?俺の部屋だよね?散らばっていた、ゴミや空き缶がないぞ。同じくタオルとかワイシャツとかパ、パンツとか。とにかく、動けるようになった今、自然に呼ばれて個室に移動した。
びっくりした。ハウスクリーニング頼んだっけ?個室ピカピカ。もう少しで切れそうだったペーパーも新しいパックがある。そっか、ずぼらでごめんなさい。彼女が使うには、汚すぎて掃除をさせてしまったらしい。もう少しカッコいい同僚でいたかったんだけどなぁ(笑)無理か(笑)着丈身丈って言うし、身に合わない背伸びとか良くない良くない。
個室から出た俺は、某お姫さま映画の魔法使い?の手腕を見た。
洗濯機にたまっていた汚れ物がパタパタとベランダで揺れてた。シンクで使ったままにしていた皿や鍋が洗いカゴに入っている。ゴミは、どこにも見付からない。捨ててくれたらしい。
…すみません。俺の格好悪さもずぼらさも、一緒に捨ててください。
最後までお読み下さってありがとうございます。