目覚まし時計が鳴らなくて
目が覚めた時は、朝7時半だった。
マズい。これは、このままでは遅刻だ。
私は、慌てて飛び起きた。
階段を駆け下りると、台所の方から、
「あらあら。そんなに慌てて。階段から落っこちたら、大変!」
という、能天気な母上の声が聞こえてきた。
「朝ごはんは、ちゃんと食べないと駄目よ。」
自業自得とはいえ、起こして欲しかった。
私は半ば投げやりになりつつ、テーブルの席に座る。朝食を食べずに出かけるなど、母上が見逃してくれるわけがないのだ。これが我が家のルールだから、仕方ないのだ。
私の前には、湯気を立てたご飯とお味噌汁、そして焼き塩鮭にひじきの炒り煮という、ごく普通の日本の朝ごはんが置かれた。
時計代わりに点けられたテレビは、ニュースと昨夜のスポーツの結果と天気予報を流していた。
どっかのサッカーの試合でハットトリック達成だそうだ。おめでとう! 天気予報では、北海道に雪だるまのマーク。お気の毒!
私は、母上の機嫌を損ねない程度に、スピードアップを試みる。
はあ、昨夜遅くまで、映画なんか見たりしなければよかった。密室殺人の謎とか、期待したほどの中身じゃなかったし、何より探偵の助手役の演技が酷くてイライラさせられた。しかも、舞台は第一次世界大戦直後のヨーロッパなのに、なぜか海辺のシーンで、遠くにサーファーが写り込んでいるというオマケ付き。トリックに使われていた超ミニのカセットテープだって、当時はまだ無かったんじゃないの? オーパーツだよね。まあ、正確な事は分かんないんだけど。
私の睡眠時間を返せ! と声を大にして言いたかったが、深夜だったのでぐっとこらえましたよ。
なんて、余裕こいている場合じゃなかった。
私は、どうにか朝食を片付けると、ご馳走さまの挨拶もそこそこに、そのまま、洗面所へダッシュ。鏡の前で歯を磨いたり、前髪を整えたりと、最低限の身だしなみを終わらせた。
カバンを掴んで、玄関を飛び出し、バス停まで走る。
交差点で、信号に邪魔され、さらに遅れる。
今日は、運がないなあ。
寝坊しちゃったから、占いコーナー見れなかったんだよね。
今日のラッキーアイテムだけでも確認しとかなきゃ。
そしてバスに乗り込む時、最悪なことがポケット内で起きていたことに気付いたのでした。
昨日、クラスの子から貰ったサイコロ型のキャラメルのお菓子が、潰れて、溶けて、定期にくっついちゃっていたの。
今日の占い、絶対、最下位だったんだ。
もう、最っ低~!