8 スキル作成使いは戦場に立つ(前半)
「では、皆さん。くれぐれも気をつけて、大人の魔術師の方の指示に従って行動してください」
俺たちは、魔物レベルSSの討伐サポートとして要請された。
正直SSは厳しいだろう。この街に現れるのは今回でまだ2回目だ。
しかも、そのうち一回は何千年前かの話。
「みんな揃ったか? 今日は練習でも試験でもない。実際の戦場になる。勿論、全員無事なのがいい。だが、はっきり言おう、それは無理だろう。できるだけ、被害を少なくしろ。いいな?」
「ちなみに、すでに街の被害は大きい。今現在の位置は東の方だ」
俺はみんなを守る。
決して、魔物を倒そうとは思わない。
俺はできる限り、今のうちにスキルを作成しておく。
「はっきり言おう。今回の魔物は勝てるかも危うい。なんせ、何千年もの前、史上最強と呼ばれた天才魔術師がいた。そいつはスキル作成を主に使っていたが、結局勝てず、死んでいった。それくらい魔物レベルSSは強い」
俺と同じスキルを持った奴が負けたのか。まずいな。
もっとも、天才魔術師と呼ばれたくらいだ。俺なんかよりもずっと強い。だから、俺の勝ち目はない、か。
「では、指示を出す。まず、学生諸君、君たちは囮になって貰う」
「は?」
「おい! ふざけんじゃねぇよ!」
「何が囮だ! そんなんないぜ!」
そんな声が闘技場の中をかい巡らせる。
「静かに! ただ、例外もある。それはこの学院のランキングのベスト五までは俺たちと同じ行動をとって貰う。それ以外ははっきり言って俺たちの動きをできたない。だから、餌になってもらうだけだ。異論は認めん」
なんて言うか、この国ってやばいな。
「まあまあ? お前らみたいな雑魚はそれがお似合いってわけよ!」
「まあ、君たちは僕のパーティーには一度も勝てていない。身を弁えろ」
あれは、アンドレア一行だ。
また、大きく出たもんだな。
「全くその通りだ。とにかく囮は囮らしくしていてくれ。これが魔術師団からの命令だ」
「ではそろそろ準備するぞ。指示する場所で待機していろ」
「ジャン、リナ、ローラン。渡すスキルがある。《飛行》だ。これは普通のとは違って永遠に飛び続けられる」
「また、チートスキルっすね……」
「まあ、でも実際助かるし……」
「うん! ありがとう」
「感謝! 感謝!」
「くれぐれも、不注意のないように戦うぞ」
「「「「おー!」」」」
こうして俺たちは魔術師団の人の指示を受けて行動する。
だが、なぜかそこに違和感がある。
俺たちが今向かっている方面には森しかない。
そんなところにいては囮にはならない。
「あの……どこに向かってるんです?」
俺は尋ねた。
「森だ。お前たちは、いても囮にすらならない。だから避難しろ」
そう言うことだったのか。
最初から戦わせる気も無ければ囮にさせる気もない。そう、そもそも戦場に立たせる気がなかったようだ。
「そんなのおかしい、俺に行かしてください」
「僕も行くっす!」
「ダメだ、お前らじゃ勝てない」
「じゃあ、勝てる見込みがあるか見てください。あったら行かせてください」
「……いいだろう」
と言われたので、俺は本気で《中火ヲ玉》を打った。
続けて、ジャンも同じことをした。
「なっ……!? なんで威力だ!?」
あまりのことに、魔術師団の人も声が出ていない。
「いいですね?」
「……ああ」
「俺も行くっ!」
俺とジャンの間に入ってきたのは、エミリオ。
だが、行かせるわけには行かない。
「ダメだ、エミリオはもし何かあった時ように、そこで守ってほしい」
「わ、私は?」
「リナは、護衛だから今回は危険だ。だからお願いだ。ここで待っててくれ」
「わかった。待ってる」
「僕はまあ、行かない……」
「相変わらずだな」
ローランはいつも通りだった。
「じゃあ、ジャン。行くぞ」
「はいっす!」
「「《飛行》!」」
俺たちは空を飛んで移動する。
俺たちは急いで魔物がいるところに行き、援護する。
✳︎✳︎✳︎
しばらくして、魔物がいる場所にたどり着いた。
そして今、激しい戦闘が行われている。
「前衛! 次はこっちに攻撃!」
「はい!」
「後衛は、回復魔法で援護!」
「ダメです! 全く効きません!」
「何!? どうするべきか」
どうやら魔法をどれだけ打っても、当てても効かないらしい。
まるで魔術師団の人たちでさえ、敵わない。
恐らく、皮膚が硬い。
これが原因だろう。
「なぁ、俺の弱点索敵使えると思うか?」
「分からないっす。でも、やる価値はあるっすね」
「分かった。《弱点索敵》」
そういうと、俺の目の前に一つのポインターが現れて、それがさした場所は、目だ。
「目にポインターがささった」
「なるほどっす! なら弱点は「目」すね!」
俺たちは目を狙い続ける。
が、しかし目の周りの筋肉が多すぎて目にうまいこと当たらない。
「うわあああ!」
また被害者が出た。
早くしないと、まずい。
そんなとき、聞き覚えのある声がした。
「何してるんだい? 君たち」
アンドレアだ。
「囮としてきたのかな? なら早く食べられてよ」
「そうだよっ! さぁ、アタシ達のお・と・り!」
ここにきてこんな奴に絡まれるかぁ……。
「うわああ、たすけて……」
また被害者が。
「ちっ、君たちには構ってられそうにないね。とりあえず、囮として囮らしく働いてくれたまえ」
「やっぱり腹立ったすね」
「まあ、今はそんなことは忘れろ」
俺たちは再び目を狙い続ける。
一方、アンドレア達は俺とは真反対の方で最前線で戦っているようだ。
やっぱり、目に当てるのは厳しいようだ。