表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/12

7 スキル作成使いは忘れたい

 清々しい気持ち。

 俺はそう言う気持ちに取り憑かれたい。だか、それは叶わないのだろう。


 そう、全てはアンドレアのせい。


 俺の心には消えかかっても消えない存在がある。そう、アンドレアだ。


「くそっ……! まただ、またアイツのことを思い出してしまう」


 俺は新しい生活に満足はしている。ただ、どうしてもアイツが頭から離れない。もうあの日から1ヶ月は経とうとしてるのに。


「こんなやつ、俺のスキルで消し去ってもいい。だが、出来ない」


 何故なら、そう言う類の魔法は死のリスクを伴う。

 容易に出来ない。


「こんな気持ち、どう落ち着かせたらいいんだ……」


 そんな時だった。

 後ろから手が伸びて何かに抱きつかれる。


 いい香りがする。


「どうしたんですか? そんなに思い詰めて」


 リナだ。


「……いいえ、何でもないですよ。気にしないで下さい」


 嘘だ。何でもないはずがない。でも、俺は絶対にパーティーメンバーの前で弱音は吐きたくない。


「そうですか……でも、本当に何にかあったら、ちゃんと相談してくださいね」


 と、リナは優しい声を耳元でそっと掛ける。


「は、はい……」


「リナ? ちょっと手伝ってくれないか?!」


「あ、はーい。じゃあ、またね」


 そうして、リナは行ってしまった。


 俺はこういったところで、よくリナに助けられている。

 あと、かわいい。


 明らかに、今の方が楽しい。

 でも、何故だか前の記憶が頭に強く残る。期間が長かったからとかそう言う話ではない。


「やっぱり、スキルで消すべきか……?」


「削って、何をだい?」


「うわっ! ……全く、びっくりさせないでください、ジャン」


「あはは、悪気はないっす」


「そんな事は、分かってます」


「もしかしてさ、前のあれ。今もその事で悩んでるんすか?」


「……違いますよ」


「違わないっすよね」


「……」


 前のあれと言うのは、学院試験の後にアンドレアに会ってまた、罵倒された。忘れようとしても、アイツが必ず何かしらで絡んでくる。


「あのー、本当のこと言って欲しいっす。何でそんなに思い詰めてるのか、そして、アンドレアさんとの詳しい関係」


「……俺が思い詰めてるのは、間違っていない、アンドレア達のことだ」


「やっぱり」


「俺は、アイツらのことを忘れたい。でも忘れようとするとむしろ出てくる。絶対に忘れられない。スキルで消そうとも考えた」


「そうっすか……」


 ジャンは俺を否定するわけでもなく、肯定するわけでもない。相槌を打ちながら、理解しようとしてくれているのが分かる。


「でも、それは出来ない。死のリスクがあってまでする事じゃない」


「そうっすね」


「なあ、俺は一体どうしたらいいんだ?」


「簡単っすよ、楽しい思い出を作りましょうよ!」


「楽しい……思い出?」


「そうっす、アイツのことなんか、ぜーんぶ忘れるくらい楽しい思い出っすよ!」


「なるほど。楽しい、思い出か」


「そうっす、僕たちが沢山つくってやるっす! だから楽しみにっす!」


「ふ、あはは! そうですね! そうします! 楽しみに待ってます!」


「うーん。やっぱり敬語は嫌っすね。さっきの方が良かったっす」


「そ、そうですか? いや、そうか?」


「そうっす! そっちの方が距離感が近くで接しやすいっす!」




 そうして、俺たちは楽しい思い出を沢山作りに行った。


 ダンジョン攻略、商売、それに魔法師団に見学に行ったり。


 沢山の思い出を作っていった。



「今日も楽しかったっすね〜」


「本当だな」


「うふふ、なんだかアランさん、ここ数ヶ月で変わりましたね」


「そ、そうかな?」


「ええ、だいぶ」


「なんか、丸くなったと言うか、思い詰めなくなったっすよね」


「そ、そうだね……」


「そうだな! そうだな!」


「あはは……まあ、これも全部、ジャンのおかげだけどな?」


「そう言われるとなんだか照れるっす」


 なんだか、もう俺は楽しくて仕方がない。

 明日の楽しみを探す自分が楽しくて仕方がない。


「明日は、何するっすか?」


 そんな会話すら、心地よいと感じていた。

 ずっとこんなのが続けばいいのに。


 でも、そう言うものは、突然に終わりを告げるもの。

 

『速報、速報。学院の皆さんは、直ちに第一闘技場に集まりなさい。この街に魔物レベルSSが現れました』




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ