5 スキル作成使いは学院試験を受ける(後半)
「さて、今回の実技試験は、同じくらいの魔力量のパーティー同士で、戦って頂きます」
女性教官がそう説明する。
「事前に測定してもらった魔力量を元に、我々の方で組み合わせの方を作らせてもらいました。全部で三試合してもらい、何回勝てたかを競っていただきます」
至ってシンプルなルール。
要するに相手を叩き潰せばいいと言う事だ。
「但し、ルールとして相手を死なせるような魔法は今回禁止とさせていただきます。勝利条件は相手のパーティーのリーダーを戦闘不能にさせるか、リーダーのギブアップ宣言によって勝敗を決めます」
「よっし! 絶対勝つ!」
「あたし達に勝てるとでも思っているの? 一応学院五位なんだけれど?」
そんな風に相手を挑発する言葉が会場で飛び交っていた。
「さて、早速対戦の組み合わせを発表します!」
と言うのと同時に、正面にある大きな液晶にリーグ戦形式で振り分けられた表が表示された。
「僕たちはっと……Cグループっすね!」
「ええ、そうみたいですね。落ち着いていけば勝てるでしょう」
「「「……」」」
俺とジャンがそう話している中、三つの沈黙があった。それは他でもない、リナ、エミリオ、ローランのだ。
「皆んなどうしたんすか? そんなに固まって」
「どうしたもこうしたもねぇよ! なんで俺たちがCグループなんだ!?」
「そうだよ、普通ならEグループがいい所なのに……」
「私たちでCグループなんて勝てるのでしょうか?」
どうやら、予想以上のところのグループに振り分けられていて戸惑っているようだった。
「てか、寧ろなんでジャンはそんなに落ち着いてるんだよ!?」
「いやぁ、実はさアランが思ったより強すぎるっす」
「いや、だとしても!」
「まあまあ、とにかくアランに着いていけば大丈夫っす」
「ジャンがそう言うなら僕はいいかな……」
「私も、ジャンさんがそう言うならよっぽどアランさんはお強いのでしょう。それに私もさっき見ていましたから」
と、リナは笑みを浮かべながら言った。
かわいい。
「……まあ! みんながそう言うなら俺も信じる!」
ローランがそう言った。
「じゃあ、アラン。どう言う作戦で行くっすか?」
「そうですね……取り敢えず、皆さんに渡しておきたいものがあるのですが」
「「「「渡したいもの?」」」」
みんなは声を揃えて言った。
「はい、俺が渡したいのはスキルです」
「スキル? スキルって人に渡せたりするものなのですか?」
リナが首を傾げながら、俺にそう聞いてきた。
「ええ、普通なら不可能でしょう。でも俺ならできます」
「俺なら?」
「はい。実は俺、スキル作成使いなんです。だから、それ用の魔法を作れば」
「スキル作成、スキル作成? 僕は聞いたかなないっす!」
「僕も……」
「俺もだな」
誰も聞いた事ないようだった。
「私は、少しだけ聞いたことがあります。なんでも、古代の天才魔術師が作った最高傑作であり、お荷物スキルでもあるって」
「ええ、その通りです。本当に使いこなせる人のみ、力を発揮するスキルなのです」
「へぇ〜なんか凄そうっすね」
ジャンはスキル作成について感心していた。
対して、ローランは興味がないようだった。
「ちょっと待ってください。今から作ります。
《スキル作成》、作成《付与》、完了。終了」
「初めて見た、あんな魔法……」
「なんだか綺麗で、すごかったです!」
「それで、俺が渡したいのは、まず全員に《脳内伝達》、これで脳内で会話できるようになります。渡しますね」
俺はさっき作った魔法でみんなに渡した。
「あ、それさっき僕に使ったやつっすか?」
「そうです。そして、リナさん。貴方にはもう一つ。俺のオリジナル魔法、《中回復魔法》を渡しておきます」
俺はリナに《中回復魔法》を渡した。
「《中回復魔法》? 《回復魔法》とは、何か違いがあるんですか?」
「はい。回復効果が二倍になっているはずです」
「えええ!? 二倍ですか? そんなの私の魔力量で使えるかどうか分かりませんよ!?」
「大丈夫です。普通の魔法と違って、俺が作った魔法は発動させるのに魔力は使いませんから」
「そ、そんなのあり得るんですか?」
「試してみますか? では、俺にかけてみて下さい」
と言うと、俺は自分の腕にちょっとした傷をつける。
「きゃっ! もう……急にやめてくださいっ! 取り敢えず、分かりました《中回復魔法》……!」
リナは少し疑いながらも《中回復魔法》を俺にかける。
「わぁ、すごい。回復スピードが段違いに速い……!」
「いい感じで使えていますよ」
「えへ、ありがとうございます!」
「いえいえ、では後衛として頑張って下さい!」
「はい! 頑張ります!」
そう言うとリナは拳をぎゅっと握りしめ、すこし笑みをこぼす。
「そして前衛は俺とジャン、そしてエミリオで行きます。後衛はリナとローランでお願いします」
「「「「はい!」」」」
「では、そろそろ一回戦が始まります。準備しましょう」
✳︎✳︎✳︎
「では、そろそろCグループ一回戦、『ルーディラス』対『バンジャグ』の戦いを始めます。今回の土俵は森。各自の指定の位置につき次第始めます」
「よし! じゃあ行くっすよ!」
「「「「おー!」」」」
「もし何かあったら、《脳内伝達》を通して伝えてください。その時にしっかりと誰に伝えるか意識して下さい」
「分かりました」
「おっけーっす!」
「おう!」
「はーい……」
「では、両チーム指定の位置に着いたことが確認できたので、開始したいと思います。では、コール」
『Cグループ、第一回戦、『ルーディラス』対『バンジャグ』の試合を始めます。開始』
機械音のコールを合図に、実技試験が始まった。
「取り敢えず、行くっすよ。《索敵》。なるほど、相手は105メートル先の正面にいるっすよ」
「へぇ、ジャンは《索敵》を使えたのか」
「はい! でも欠点があって、誰が誰だか考えないといけないんすよね。敵味方関係なく索敵されちゃうんで!」
「へぇ、普通の《索敵》は区別できないのか」
俺の《索敵》は区別ができる。
もちろん、ジャンが使う《索敵》は使えないが。
「お、どんどん来るっす! 五、いや、四十メートルまで来てるっす!」
「おっけー! ならここで俺の出番だな!? 《火玉》!」
「あ、ちょっと! まあいいっす」
エミリオが打った《火玉》は敵に当たらず、寧ろ俺たちの居場所がバレてしまった。
「マジすか、当たらなかったのはやばいっす!」
「じゃあ、ちょっと俺もサポートしますね。《身体強化》」
俺が今使ったのは自分用ではなく、指定した人に与えることができるスキル。
多分これで少しは戦えるようになっただろう。
少し皆んなの動きを見よう。
「やばいっす! もうこっちに来てるっす!」
そしてついに、相手から攻撃が飛んできた。
相手が使ってきたスキルはエミリオと同じ《火玉》。ただ、命中率がかなりいい奴が使ったようで、当てづらい位置にいたジャンに命中。
「うわわ! 熱いっす! 負けちゃうっす!」
「まあまあ、落ち着いてください。よく見てみてください」
「ん……? あれ? なんか、怪我してないっす。なんで?」
「俺がみんなにかけた身体強化《》で全部のステータスが三倍になってるはずです」
「なんだか、なんでもありですね」
リナがそう言う。
確かにその通り。俺が少しサポートするだけで勝ててしまうだろう。
実際、これからの相手の攻撃を食らったとしてもあの程度だと余程のことじゃないと傷一つもつけられない。
そして、皆んなの攻撃力は三倍。多分瞬殺だろう。
「じゃあ、エミリオ。相手にさっきと同じで《火玉》を使ってください」
「お、おう。《火玉》!」
今度は至近距離だと言うこともあり、しっかりと当たった。
「うわわわ!? なんだ、こ、れ」
完全にやられたのが見てわかった。
ただ、今倒したのはリーダーではなさそうだ。
「は? なんだよあれ! 反則魔法じゃないか!?」
「おい! 教官! あれアリかよ!?」
『規定に則った魔法です』
「マジかよ!? なんだよあれ!」
敵の生徒はだいぶ混乱しているようだ。
それも仕方がないか。身体強化は目に見えないからな。相手からわかるのは《火玉》見たいなのを使ったと言うことだけだ。
「やばいっすね……恐るべしアラン」
「なんだこれ!? 楽しすぎる! 《火玉》! 《火玉》! 《火玉》!」
「あ! ちょっと! あんまり使いすぎると土俵がぶっ壊れる!」
俺が止めた時には遅かった。
身体強化した《火玉》が一個だけなら恐らく壊れないが、三つとなれば話は別。重なってしまったら確実に壊れる。
まず、玉の矛先は相手パーティーの残りのメンバー全員。
「よし! これで勝利だ!」
だか、敵が全員かたまっていたから、一点に玉が集中してしまった。
「あ……これまず、いっす……」
案の定、大きな爆発が起こった。
だが、怪我人、および土俵破壊は起きなかった。何故か。
そう、俺が瞬時に《超魔法障壁》を作成し、爆発場所全体を囲ったおかげで爆発はそこの中だけで終わったと言うことだ。
「ふう……気をつけてくださいね、エミリオ」
「お、おう。悪かった」
『勝者『ルーディラス』、『ルーディラス』一回戦の勝者は『ルーディラス』です』
「うおおお!! やったっす! 取り敢えず一勝出来たっす!」
「マジかよ!? 夢か? 夢だろこれ!?」
「初勝利……」
「ふふ、やったね!」
みんなも嬉しかったようだ。
良かった。
✳︎✳︎✳︎
そして、俺たちのパーティーはその後も負けることなく、圧勝。
これで、退学はないだろう。
だが、事件が起こった。
それは、俺たちが学院に戻る時だった。
話に熱中して、俺は気づくことができなかった。奴らの存在に。
「あれ? 君はアランではないか。元気にやってますかね?」
「……」
「あれ? 元気がないようですね? どうしたんでしょうか??」
俺の表情を見て、ジャンが俺を心配する。
「どうしたんすか、なんでアンドレアさんになんか言われてるんすか」
アンドレアは学院一として名が通っている。
一方で、俺は当時でも全くだった。
「それより、なんですかそのパーティー。見るからに雑魚じゃないですか」
「雑魚? 僕たちのことっすか!?」
「他に何があるんですか?」
「ちょっ、流石にそれは許せないっす! 前言撤回求むっす!」
「うるさい。やれ」
アンドレアは後ろにいるごっつい体つきの生徒に何かを指示すると、その生徒がジャンの前に立つ。
「な、なんすか!? って、ぐはっ!!」
「ジャン!」
「おい!? 大丈夫か!?」
俺とエミリオがジャンに駆け寄る。
「はっ、身の程を弁えるべきです。君みたいな雑魚パーティーに雑魚という言葉は相応しい。絶対に撤回はしません。では、私は用事があるのでこれで」
と言うと、アンドレアは俺たちの横を通ってどこかに行って何処かへ向かっていった。
リナが急いでジャンの手当てをする。
「……くそがっ!」
「なんか、やな奴だね……」
「全く、酷いですっ!」
「ああ、あいつはそう言う奴ですよ……」
「一体、どう言う関係なのですか? なんか普通じゃないっていうか……」
リナが心配そうに俺に聞いてきた。
「俺は、あいつ、アンドレアの元メンバーだったんですよ」
「なるほど、どうでもいいな!」
エミリオがそう言った。
「え?」
「いや、そうですかで終わりっすね」
続いて、ジャンも言う。
「うんうん、なんかもっと嫌な関係だったらアレだったけど、元メンバーってことなら別にどうでもいい!」
続けてリナもそう言った。
「……僕は何も言わないよ」
ローランは何も言わなかった。
「それに、私むしろアンドレアさんに感謝です!」
「感謝?」
「はい! アンドレアさんが追放してくれたおかげで私はアランさんと同じパーティーになれてるんですから!」
そういうと、リナは「えへへ」と笑を浮かべる。
可愛い。
「あ、もし今ので傷ついたらごめんなさい!」
今度はあたふたとする。
かわいい。
「いいえ、気にしてませんよ。むしろそう言っていただけて嬉しい限りです」
「えへへ、それなら良かったです!」
「なんか、二人いい感じ……?」
「「そんな事ないです!」」
「まあまあ、取り敢えず打ち上げいくっすよ!」
「そうですね」
「そうそう!」
「今夜は大盤振る舞いだなっ!!」
「お金足りるかな……」
俺たちは一度学院に戻ってから、準備をして打ち上げをする為に店に行った。
読んでいただきありがとうございます!
初めて書く小説という事で、慣れないことも多く、、って感じです!
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