2 スキル作成使いは新たなスキルを作る
「まずはどんな感じの魔法を作るかだな」
俺は今、自習時間を利用して近くの森まで移動し、新しい魔法スキルの作成に取り掛かった。
「ただ、既存の魔法は作れないのが難点だよな。ちょっと変えれば作れるんだが」
実際、俺が今まで愛用してきた、《中回復魔法》も、元々からある《回復魔法》の改良版でしかない。
「今度の試験で使えそうな魔術を作るのが最適か……?」
自分勝手の魔法を作るか、最低限度のスキルをまた作成するか。これは、俺にとっては難しい選択。
「何をそんなに悩んでるの?」
「いやぁ、スキル作成する上でコスパ重視にするかどうかを……って、はぁ!? なんでセシア、なんでお前がここに!?」
セシアはアンドレアのパーティーのメンバーだ。
なんでそんな奴が俺に声をかけたのか。
「いやぁ、たまたまアタシの近くでぶつぶつ声が聞こえてさ」
「聞いてたのかよ」
「そりゃ、あんだけ大きい声で独り言を言ってたら嫌でも聞こえるよ」
そんなに大きな声だったのか。恥ずかしい。
そんなことより、
「そんな事よりお前、なんだ? 俺を馬鹿にしにきたのか?」
「いや、まあ落ちこぼれ雑魚は今、何をしてるのかなって思ってさ?」
セシアは俺を馬鹿にしながら言った。
「……それだけか? 他にないなら俺は試す事があるから場所を変える」
「試す事? もしかして、あの雑魚スキル作成のこと? そんなのやめときなって! 時間の無駄!」
お前も勘違いしてるのか。アホだろ。
「お前には、関係ない」
「まあ、そうだよね! もうアタシとはただの他人。雑魚とは無縁! だからもうあんたに何をしてもメンバーに迷惑がかからない!」
「そうか、よくわかった。でも、この状況を見られたらお前まで追放されるかもしれないぞ」
「あー、それはないない。さっきはアンドレア様に口を出すなって言われてたから我慢しただけ。本当はアタシもあんたのことボロクソに言いたかったんだよね! だから、さっきアンドレア様に許可をもらって、来たってわけ!」
やっぱり、セシアとかもそう思っていたのか。
「そうか。ならもう気が済んだか?」
「……やっぱりしょうもない男。だから全員から嫌われるのよね!」
「……ああ、そうだな」
「んまあ、本当はまだまだ言い足りないけど、アタシはこの辺で。せいぜい底辺で頑張りな?」
話し終えると、セシアは別の所に行ったようだ。いや、本当に何しに来たんだよ。てか、洗脳受けすぎだろ。アンドレア様って。
俺はと言うと、さっき言った「試す事がある」ってのはただの口実。まだ何も決まっていない。
「はぁ……取り敢えず、アンドレアのメンバーになるべく遭遇しないように《索敵》を作っておくか。《スキル作成》」
俺は《スキル作成》を展開する。
「作成、《索敵》」
と言うと、それに必要な魔力が表示される。
「げっ、魔力を一〇〇〇も使うのかよ。飛んだぼったくりか」
俺が前作った《中回復魔法》は確か、三〇〇くらいだった。
「でも、まあこれから使うとなると痛くない出費だよな。……だよな?」
後は「完了」と言うだけで作れる。
俺は悩みに悩んだ末、作ることにした。
「完了。そして終了」
「終了」と言うと、《スキル作成》が閉じる。
俺は実際に出来ているか、ステータスを確認した。
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アラン・フランツィー メルト
魔力 37500
スキル 『スキル作成』『中回復魔法』『身体強化』『索敵』(対象:半径200メートル以内のアンセシマリメンバー)
無所属
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「よし、ちゃんと作れたみたいだな。良かった、良かった」
それにしても、違和感があるな。今までアンドレアのパーティー『アンセシマリ』とステータスには書かれていたんだが。
この名前の由来をさっき知ったんだが、俺以外の名前から取ってきて組み合わせたらしい。
よくよく考えたら、最初から期待されていなかったのが分かるな。
「取り敢えず、今日は新しいスキルを獲得したことだし、良しとするか」
その時、ちょうど授業の終わりの鐘が鳴った。
「そろそろ戻るか。次の授業に間に合わせないとな」
俺は全力で森の中を走った。
ここから、学院までは本気で走れば五分といったところか。
その帰り道の途中。小さな声が聞こえた。
「……けて。たす……け、てっす」
俺は足を止めた。明らかに「助けて」と言う言葉が聞こえた。ただ、聞こえるのは結構遠くの方だ。
「これじゃあ、どこに居るか分からない。だから助けにいけない。どうする」
俺は頭をフル回転させ、導き出した答えはこうだ。
「よし、《索敵》の対象を増やすか」
俺は急いで《スキル作成》を展開させると、さっき作ったスキルに上書きで「半径百メートル以内の困っている人」を追加した。
「よし、これで反応が見える。どこだ?」
反応をまずは見つけ出す。
「あった。ここから東に五〇メートル位先のところみたいだな。急ごう」
俺は全力でそっちの方向へ向かった。
そして、五十メートル先に居たのは学院の制服を着た数人と、なんだあれ。
俺が見るにあれはレベルBの魔物。ただ、見たことないからただの憶測だ。
「大丈夫ですか!?」
「た、助けて、下さい」
「分かりました。取り敢えず、傷を負った人を魔物から遠ざけてください! 遠ざけたら《回復魔法》を使える人が居たら対応してあげて下さい!」
「わ、分かりました!」
俺がそう指示すると、まだ傷を少ししか負っていない人が怪我人を魔物から離す。
「では、他の人たちも離れていて下さい! 万が一魔法が当たると危険です!」
「で、でも。あなた一人で大丈夫っすか!? あの魔物レベルBっすよ!?」
「まあ、離れて見ておいてください」
「わ、分かりました」
俺はみんなが離れた事を確認すると、攻撃用の魔法スキルを瞬時に作り始めた。
「この魔物は見る限り火に弱い、だから……《スキル作成》、作成《中火玉》、完了!」
俺は今回はコストは気にせずに速さを求めた。
「そして、《中火玉》」
俺が放った魔法は魔物にダイレクトに当たって一発撃沈だった。
「なんだ、初めて魔物と戦ったけどこんなもんか。それならもっとコストを意識すれば良かった」
と、俺はちょっとだけ後悔していた。
そのあと俺はすぐに、さっきの人たちの方を確認する。見た感じ、何ともなさそうだ。ただ、口を大きく開けて、かなり驚いているようだ。
「怪我人はどうなりました!?」
「あの、はい。一応私が《回復魔法》を使って治しておきました」
「そうですか、はぁ……良かった」
なんとも無かったようで俺は安堵感に浸っていた。
「あの! 助けていただき、ありがとうございました! あの……貴方は一体?」
「俺はアランです。パーティーは……お恥ずかしながら、ついさっき追い出されちゃいました」
この学院の風潮として何故か、名前の後にパーティー名を言うことになっている。
「何でですか!? あんなにお強いのに!」
「どうやら、俺は期待外れだったみたいです」
「貴方みたいな強さでも期待外れって、どんなパーティーにいたんだろう……あ! 僕はジャン・シルヴァっす。一応このパーティー『ルーディラス』のリーダーを務めてるっす。そして、右から順にリナ、エミリオ、ローランっす!」
紹介されると、皆んな俺に一礼。
「よろしく……」
「よろしくな!」
「よろしくお願いしますね!」
最初に言ったのがローラン。次がエミリオ。そして最後に言った、緑髪のロングが似合う美少女、リナだ。
どうやらこのパーティーは男三人女一人のパーティーのようだ。
「ジャン、リナ、エミリオ、ローラン。はい、覚えました」
「「「「ありがとうございます」」」」
「ところで何でなんすが、さっき、みんなで話し合ったんすけど、もし良ければで良いのですが……」
ジャンがやたらと低姿勢で話しかけてきた。
「ど、どうしました!? そんなに低姿勢になって」
「あの、もし良かったら、僕達のパーティーに入って頂けませんかね?」
「ルーディラスにって事ですよね? ちょっと待ってください」
俺はすぐに学院のランキングを見る。
下の方から見ていき、狙いである四〇〇付近まできた。
そして『ルーディラス』を見つけた。四一〇位。
俺が狙う所に居た。
となれば俺の返事はもう決まっている。
「俺なんかで良ければ、是非」
「マジすか!? やったぁ!!」
「やったね!」
「やるなぁ、ジャン!」
「これで退学も取り敢えずは心配しなくて良いか。良かった」
俺が入ると言った瞬間、ルーディラスのメンバー全員が喜んだ。
なんだか、そこまで喜ばれるとなんだが魔力を使ったこともどうでも良くなってきた。
「では、取り敢えず俺は登録しますのでハンコだけ後で押してもらえると」
「もちろんっす! いつでも言ってください!」
「分かりました。では、俺は一旦ここで」
「はい! 楽しみにしてるっす!」
俺は再び全力で走り出した。
だが、もちろん間に合うはずはない。俺が走り始めてすぐに次の授業の鐘が鳴った。
「やべ、間に合わなかった。まあ、いいか。人助けできたし。パーティーにも入れたし」
結局、学院に着いたのは、ルーディラスの皆んなと別れて三分後くらいだった。
「おい、普通に遅刻だ。何やってた」
「いやぁ、ちょっと道に迷っちゃって」
「一本道だろうが。何寝ぼけたこと言ってるんだ」
「す、すみません」
「はぁ、まあいい。次は気をつけろよ」
あれ? 意外と怒られなかった。
あの教官厳しいから、もっと怒られると思ってたのに。
俺は直ぐに自分の席に座った。
俺のクラスにはアンセシマリのメンバーが一人もいなくて良かった。おかげで気まずくならなくて済む。
そういえば、ジャンってどこのクラスなんだろう。
読んでいただきありがとうございます!
初めて書く小説という事で、慣れないことも多く、、って感じです!
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