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テーマ『ときめき』
腐った女の子の話です。
「ファミレスに寄ってく?」
こくり。
部活終わり、二人の少年に誘われて井原さんは小さく頷いた。
席に案内されるやいなや、先頭を切っていた少年がさっそくという感じで席に陣取ると、すぐ後ろにいたもう一人の少年が声をかける。
「もう少し詰めてくれないか」
「何、隣に座ろうとしてんだよ」
少し面食らった様子で答える少年。
「そりゃそうなるだろう」
少年達が振り向けば、井原さんとちらり目が合う。
「しょうがないなあ、ほら」
まさに今、テーブルを挟んだだけの所に男子が二人並んで座っている。この状況で井原さんに頬が緩むのを止める術のあろうはずもない。
「いやに締まりのない顔をしているな」
それは淑女に向かって何たる暴言!
少年の失礼千万な物言いへの憤りを、しかし、ぐっと飲み込む。井原さんは思った。ここは落ち着いてきちんと言うべきことを言っておくべきだろう。
「ごちそうさまでした」
「注文もまだだよ!」
井原さんは今日もこじらせている。




