テーマ『お気に入りの家電の話』
『扇風機』
僕は、君を独り占めにしたいのに、君は、ただ首を振ってばかりで。
『冷蔵庫』
ピーッ、ピーッ、ピーッ
省エネが売りの冷蔵庫。
他にも、イオンで脱臭、除菌をしてくれるとか、霜がつかないとか、色々な機能がついているらしいけれど。
ピーッ、ピーッ、ピーッ
そんな、冷蔵庫の整理中、"扉を閉めて"と催促されている母の返事が怖すぎた。
「ないてもダメなのよ、ピーピーうるさいわ、後でしめるからね」
『これで安心』
年寄りが一人でいなくなったら心配させるかもしれませんからね。
書き置きを残していきましょう。
”ちょっとコンビニまで行ってきます。”
これで良しと。
あ、でも、書き置きに気がつかれないかもしれないし…
そうそう、こんな時こそ携帯電話ですね。
近頃の年寄りは、携帯電話くらい使いこなせないといけません。
えっと、携帯電話、携帯電話は、どこに…あ、ありました、ありました。
さあ、これでもう大丈夫。
お出かけしましょう。
「あれ、おばあちゃん、いないよ」
「またふらふらと、携帯に電話をかけてみろ」
「わかった」
トゥルルルル、トゥルルル
リリリーン、リリリリリーン
「家の中から聞こえるぞ」
「もう、おばあちゃんたら…」
「あっ、ここにあったぞ携帯電話、何かメモの上に乗ってる」
『やかん』
「そんなに湯気をたてて熱くならなくても」
「ポッと出の奴に負けるわけにはいかないんだ」
『パソコン』
「ちょっと貸してもらっても?」
「俺とコイツは一心同体だ、寝るときも、お風呂もずっと一緒だ」
「なるほど、水没による証拠隠滅を計る気か」
『神の祭壇』
「願い事は何だ?」
「このミスったコピーの証拠を隠滅してください」
「よかろう、シュレッダー様にミスコピーの用紙を捧げなさい」
「ありがとうございます」
「ねぇ、二人してさっきから何をやってるの?」
「「紙の裁断」」
『有線のヘッドフォン』
「これ、まだ使えるかな?」
古いステレオのヘッドフォンをつけると、コードの先のジャックをこちらに差し出して。
「はい、歌って」
『ロボット』
わぁ、めっちゃ虚無ってる。
円な目がちょこんとついているだけのシンプルすぎるロボットの顔に。
「少しはデザインにもこったら?、せめて、もうちょっと愛嬌のある顔にしてあげればいいのに」
「この無表情なのがかわいいの!」
さようですか。
僕は、心のなかで肩をひとつすくめてから。
「それで、このロボットは言葉がわかるって、本当?」
「話しかけてみたら?」
それでは、まあ、失礼して。
「僕とおしゃべりをしてくれるかな?」
ロボットは、コテン、と小首をかしげる。
「いや、このコ、わからないって顔してるけど?」
「もう一度、試してみて」
「君は、本当に人の言葉がわかるの?」
ツーっと、目をそらすロボット。
「ねぇ、なんかさぁ」
「何かな?」
「やたら表情が豊かなんだけど、このコ」
『音声式リモコン』
「ねえ、音声入力のリモコンを買わない?」
「私は、あなたさえいれば、それだけでいいわ」




