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テーマ『新しい鍵』
明けまして、おめでとうございます。
一斗缶から油の匂い。
「危ないなあ」
つぶやいて、蹴倒す。
「誰だ!」
悪党どもの誰何の声。
場所は廃ビル。
「お探しの鍵は、ここだ」
姿と鍵をさらす。
「それを渡せ、コイツがどうなってもいいのか」
「人質と交換だ、警察には連絡した、考えてる時間はないぞ」
「チッ、良いだろう」
「よし、拘束を解き、その場から下がって人質から離れろ、鍵は投げるから受け取れ」
「ああ」
人質に向かって叫び
「走って、こっち」
鍵を窓から外に投げつける。
「野郎、逃がすな」
人質を促して非常口へ、置き土産とばかりに、倒しておいた一斗缶にライターの火を投げ込む。
「こいつ!」
吠える悪党に構わず外階段に飛び出すと
「下じゃなく、上へ」
と指示を出し、踊り場を越えた所で
「隠れて」
追っ手が階段を降りる気配をやり過ごして、屋上へ向かう。
「ここで救援を待ちます」
「ありがとう、でも鍵を渡して大丈夫ですか?」
空のキーホルダーを見せて。
「家の鍵、新しくしないとですね」




