テーマ『素敵なすき間』
『素敵なすき間』
「社長、この格好で歌うのは、恥ずかしすぎます」
「大丈夫だ、よく似合ってるぞ」
「うう、穴があったら入りたいです」
「いいぞ、来週の土曜もステージが空いてるから、スケジュールを埋めといてやろうな」
『うちの猫』
「お前、絶対に二人の間に割り込んでくるよな」
『当家のお嬢様は、よわよわで、すきだらけであらせられます』
当家のお嬢様は、よわよわで、すきだらけであらせられます。
「みて、可愛い赤ちゃん」
「お嬢様、危のうございます」
「きゃぁ〜」
赤子の手で軽くひねられておられます。
弱っている動物の頭上には鳥が集まるそうですが。
「みて、可愛い雀」
「お嬢様、逃げてっ」
「きゃぁ〜」
雀に涙目にされておられます。
悪事千里を走ると申しますが、お嬢様には無縁でございます。
「自分で靴を履いてみるわ」
「あ、いけません」
「きゃぁ〜」
千里の道の一歩目すら。
目は口ほどに物を言うと申しますが、お嬢様からは片時も目をはなせません。
「きゃぁ〜」
知らぬ間に仏になりかかってしまわれます。
悟りすら湛えた眼差し、既に仏の顔も寸止めの域でございます。
私の自慢のお嬢様は、常に衆目を集めてしまわれます。
「おい、あの子、暖簾に跳ね返されて倒れたぞ」
「あ、今度は、猫に手を貸してもらってる」
奇蹟の存在です。
当家のお嬢様は、よわよわで、好きだらけであらせられます。




