テーマ『ささやく』
主人公は女性です。
大原さやかさんの声を想定して書かせていただいております。
声が大きな人は苦手。
人を慮るより、強引に自己主張を通す印象があり、進んで関わりたいと思わなかった、けれど。
そんな離れた席から私の名前を呼ばないでほしい。
呼びつけるのではなく、側に来て優しく声をかけてくれたら良いのに、と一瞬よぎり、羞恥を覚える。
自ら寄り添い耳を傾け、人のために行動できる思いやりを好ましく思っていたから。
でも!
「私の名前を大声で呼ばないでください、恥ずかしいではありませんか」
隣に座りながら抗議すると、彼は、しどろもどろになって、『大きな声は、癖が抜けなくて』と言い訳している。
彼の大きな声は、耳の遠い祖父のためと知ったあの日、私は恥た。
以来、彼が気になる。
今もしょげかえる彼がおかしくて、つい。
「そんな調子では、二人の内緒の話をする時に困ってしまいます」
驚く彼が『もう一度言って――』と言うのを遮り、
「聞こえませんわ」
両手で耳を覆う。
だって、隠さなければ、きっと赤くなっているもの。
"でも"より前の部分は、ダブルミーニングとミスリードを駆使した叙述トリックとなっております。読み終わった後でもう一度読むと文章の意味が変わっておりますれば、嬉しいです。




