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キスで結ぶ冬の恋(募集テーマ『恋』)
「こんな寒空に呼び出して何の用なの?」
「えーそろそろご機嫌を直してはいただけないものかと。」
「別に―、私は何とも思ってないし。」
おおう、すねてらっしゃる。
「私に用があるんでしょ、早くしてくれるかな、寒いし、ひまじゃないんで。」
「今日は、受け取ってもらいたいものがあるんだ。」
「なによ。」
「給料3か月分のを用意したから。」
「ふ、ふーん、それで?」
「受け取って、それで――」
「目をつむってくれるかな。」
「ちょっ、馬鹿なこと言わないで!」
うあ、失敗し――
「そういうことは、もっと雰囲気を重視して言って。」
右手で手袋を外すと、そっと彼女の手が差し出される。
「だから、今は、口にしてはダメなのよ。」




