テーマ『恋』
『待ち合わせ』
「おーい、お待たせー」
「おう、って、あれ?、後の二人はどうした?」
「にひひ、撒いてきた」
「おいおい、置き去りにしてきたのか」
「だ・か・ら、恋の種を撒いてきた♪」
『金魚』
「元気にしてた?」
腰を落として水槽をのぞくと、赤い金魚が見つめ返している。
「私のこと覚えてるの?」
ぽわぽわしながら、口をパクパクして、ふふふ、可愛い。
「この子達って、あの縁日のだよね?」
「そうだよ」
ふーん、もしかして、案外大切に思ってくれていたりするのかな。
「ねぇ、名前つけてる?」
「そいつの名前は、ヒレ」
付けてた!
「あはは、金魚だから、ヒレって」
でも、そっかそっか、名前つけてたかあ、結構、大切にしてくれてるんだ。
「じゃあ、あっちの子は?」
「ロース」
そうでもないのか?
首をかしげるそぶりがガラスに映り、それが、ふと目にとまって、つい前髪に手を伸ばしたら。
「髪、切ったの?、似合ってるよ」
後ろからかけられた声に、振り向けず、ひたすら水槽をみつめてしまう。
んーっ!
あっ、こらっ、なにを笑ってるんだよ、こいつめ。
水槽からこっちを見ている、その鼻先を、ピンっと指ではじく。
なにさ、赤い顔なんてしちゃってさ。




