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テーマ『花火師の憂鬱』
『花火師の憂鬱』
「あ、もしもし、今、電話いい?」
常に危険と背中合わせ。
そこに、わずかな影がさすことも許されないほどに。
遮るものは何もなかった、いや、あってはならないことだった。
それは、いっそう輝きを増した、あの太陽の光さえも例外ではないということで・・・って。
暑すぎるだろう!
そりゃあ、花火の打ち上げ場だからね、影を作る物なんか、あっちゃあダメってことくらいわかる、わかるんだけれど。
今すぐ、どうかせんと、燃えちまうから!
わあ、笑えない事態。
仮にも納涼とうたっているのに、言葉の意味を小一時間ほど考えたかった、ところ・・・で、携帯にかかってきた電話だった。
電話の向こうからたずねられる。
「作業の方はどう?」
「ん?」
「すすんでる?」
「すずんでる」
『花火師の憂鬱』
「たーまやー」
「どうしたね、親方、大声張り上げて」
「あ、うちのネコを見ませんでしたか?」
昼間の花火師ですね。




