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テーマ『無人駅にて』
二本立てです。
『無人駅にて』
「あ、通過した」
「したね」
「うちらの電車、ちっとも来ないよ」
「ほんとに、来ないな」
「まさか、事故とかで止まってない?」
「そんな、止まったりしないよ、今、通過したのも普通だったし」
『無人駅にて』
ところどころ、かすれた線路。
赤いチョークで描かれている。
私が座っているこのベンチは、さしずめホームになるのかな。
このまま、線路を追いかけてみる。
滑り台を越えて、ジャングルジムをのぼり、ブランコに寄って、鉄橋さながらに、砂場に架かった雲梯を渡って、またベンチに戻ってきた。
小さな公園をめぐる、なかなか素敵な路線だったけれど、ひとつだけ駅になっていない遊具があるのに気づく。
シーソーだけが、駅には、なっていなかった。
その理由を考えて、少し、寂しい気持ちになって、斜めにかしぐシーソーを眺めていると、不意に声をかけられた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
赤いチョークを握るその子に笑顔を向ける。
「あのね、電車を待っているの。」




