テーマ『雨の独り言』『つばさの行方』『カメラの向こう側へ』『私をくるむもの』『特別な一皿』『秋風と眼鏡』
200文字以下の作品の詰め合わせです。
『雨の独り言(ぽつり、ぽつり)』
ぽつり。
嵐が来るぞ!
ふふふ、言ってみただけ。
ぽつり。
砂漠に、花を咲かせましょう。
ぽつり。
おおっ、少年が、少女に傘を渡して走っていく。
いやー、良いものを見てしまった。
ぽつり。
さ、子供たち、早くお帰り。
ぽつり。
ぽつり。
『雨の独り言(多分こんな感じだと思う)』
傘を、せめて、傘をくれっ!
落下傘なしのスカイダイビングとか、悪い冗談にしか聞こえねぇぇぇ!!
私は鳥、私は鳥、私は鳥、私は鳥、私は・・・
きゃあああぁぁぁぁぁぁ・・・
『つばさの行方』
人の背に翼はないけれど、どこにあるのか、その行方を、私は、知っている。
地を蹴り、前に進む、繰り返してきた努力と思いは、きっと、そこに宿ってるから。
「あらら、君の靴、泥だらけだね。」
「うん。」
私の魔法の靴には。
「ハネがついてるからね。」
『カメラの向こう側へ』
”カメラは、カメラの垣根を越えた! 今、カメラの向こう側へ。”
これまでのカメラには、撮影者は写らないという欠点がありました。
しかし、それも過去のものとなりました。
このカメラで撮った写真は、時代のニーズにお答えします。
”この写真は、私が撮りました。”
どうですか、生産者の顔が見える安心のカメラは?
『私をくるむもの』
「お、お嬢さんを僕にください!」
「はい、お包みしますか?」
コ、コノォ
「よくぞ言った、バカ親父、あたしがお嫁に行く前に、一発殴ってく!!」
『特別な一皿』
「これ、デザート。」
「えっ、お皿しかないけど?」
「食べて。」
ニコニコ。
とっておきの一皿をすすめる。
もちろん冗談。
でも。
「さては、一服盛ったな!」
「これで通じるとか、あなたも大概、私に毒されてるよね。」
『秋風と眼鏡』
「本なんて読んじゃって、どういう風の吹き回し?」
背もたれを挟んで声をかけられた僕は、そっと彼女を仰ぎ見る。
「まあ、読書の秋って言うだろ。」
「ふーん、で、何を読んでいるの?」
肩越しに彼女がのぞき込んでくる。
「ちょっ、近いよ。」
言いながら、本を読むために外していた、眼鏡に手を伸ばす。
その手を彼女がおさえた。
「おっと、眼鏡になんて邪魔させないから。」