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テーマ『しゅわしゅわ』
「死因は毒物による中毒死。死後、三日ほどです。」
よれよれコートの警部は、いつも遅れて来て、皆の報告を聞く。
「第一発見者は、友人がシャンパンを飲んで死んでいると通報してきました。アパートを訪ねると鍵は開いていて、部屋にあがり、遺体を発見したと供述しています。」
「テーブルのカップの残留物から、シャンパンに毒物が混入しているのが確認されました。」
「遺書は無く、また、自殺と断定するには不審な点があります。シャンパンの瓶が発見されていません。」
「ただ、二日前に不燃物の回収が行われているため、自分で瓶を捨てた後、自室に戻り服毒することは可能です。」
ボサボサ頭をかいて警部が言う。
「瓶がない、ふーん、あ、第一発見者、まだ帰してないね。」
「はい。」
「にしても味気ないね。」
「えっ?」
「カップがさ。」
「ああ。」
「しゅわしゅわもない。」
「まあ。」
「これ、シャンパンと白ワインの区別つくかい?」
「ああーっ!」




