第7話
すいません、二週間振りの投稿です。
先週は、気分転換に別の短編小説をあげてました。よろしければそちらもどうぞ。
第7話
海上での戦闘を終え、再び地上に戻った私は岸辺に佇んでいた。
理由は至極簡単なもので、私のこれからの行く先である。
そもそも、何がどうしてこの様なことになったのかすら分からない私が、これから先どうすればいいかなど到底わからない訳であり、この身体では家に帰る事も出来ず、そもそもまだ家が残っているのかすらも怪しい。
最早、私が取るべき手段はもはやロボットホームレスしか無いのでは無いのだろうか...
と私は(物理的に)存在し無い頭の中を回転させながら思案していた時に何か足元で動きがあった。
それは、数人の小さな人間であった。
それらは、先程此方が殲滅した自衛隊員等では無く本当にただの何処にでもいる民間人であった。
そして彼らは、特に個性を出すわけでも無くひたすらに此方を見上げているのであった。
しかしその顔には、悲壮や絶望と言った悲しみでは無く、明らかな怒りが浮かんでいる事に私は言い知れない不快感を持った。
そして、此方を見上げる一人が急に動き出す。
それはあまりに惨めで原始的な反撃であった。
人類が、食物連鎖の頂点に立つ為に行った原初の行為。
そう、投石である。
そして、その一人に続いて周りにいる人間もまた、同じ様に石を投げた人間に続くように私に石を投げた。
海中にいた時より起動していなかったプラズマフィールドは、今更この様な攻撃に対処する為に起動させる気にもなれないほど私は疲れ果てていた。
彼らの投げる石は、私の爪先に当たり虚しく小さな音を立てるのみであった。
しかし、そのか細く惨めな音は私の装甲を通じて頭の中に響きわたる。
更には、突如として起動した外部マイクは正確に寸分の狂いも無くピンポイントで、彼らの声を私に届け始めたのであった。
「死んじまえっ!」「馬鹿野郎!!」「あの人を返して!!」「お前なんか存在しなければ良かったんだ」「どうして俺たちの前に姿を現した!!」
その顔に浮かべる表情と違い、彼らの罵声は非常にレパートリーに富んでおり、いくつもの声が重なって私の頭で反芻される。
こいつらは、何を言っているんだ。
私は、私に降りかかる火の粉を払っただけなのに。
私は、ただ今までの人生の意趣返しを少しでも出来ればと思ったのに。
私はどうしてこうなった。
誰も助けてくれなかった、だから自分の力でどうにか対処したんじゃないか。
俺は、誰かの幸せの為に人生を捧げて生きてきたのにその終着がこれなのか。
最後は恨まれて、蔑まれて、否定されて、石を投げられる。
目の奥が熱を帯びる。
人ならざる機械の身体となった筈なのに。
視界が滲み、前が、敵の姿がぼやけてわからなくなる。
熱を帯びた瞳から、何かが溢れそうになる。
それを私は、必死に押し留めようとするが、溢れようとする何かは、濁流のように押し寄せ今にも堰を切ろうとする。
そして、私が見えない濁流と争う最中でも、私の足元では醜い何が汚い言葉と石を投げつけ私を否定する。
彼らの背後にある街は、息を潜めたように静かな中に騒がしく動き回る影がある。
私の目には、それが火事場泥棒を働く醜い者達だとわかる。
私は、こんな者達の助けとなる為に自らの人生をドブに捨てて助けてきたのだと、再び目の当たりにする。
私の中の濁流を押しとどめる何かがその力を弱める。
私の視界に、新しい画面が開き何かを写し出す。
それは私の実家であった。
その映像が、なんらかの手段でスキャンされると家の中には二つの生命が居る事が表される。
その瞬間に、私のメインの視界にはロックオンマーカーが表示され、実家があるであろう場所に重なり音を鳴らす。
そしてそれを皮切りに、いくつもの画面が視界に表示され何かの存在を確認するとロックオンマーカーを重ねていった。
私の認識できる範囲で解ったことは、それが先程私の走馬灯に現れた人物の所在である事
私はそこに何かを届ける術を持ち合わせている事
そしてその何かが今まさに私の背後で作り上げられている事であった。
それは先程の戦闘で用いられた全てより、巨大な筒であり、その規模に比例した時間を要して私の背後にゆっくりと形成されていた。
そして、私の中の濁流も最早限界を迎え今にも溢れ出しそうになっていた。
そして最後に、私の足元にいる敵が私の背中を押してくれた事により、その全てを実行に移す事が出来た。
「貴様の様な物が
生まれて来なければ
俺たちは幸せに暮らせたんだっ!」
そして私の中の濁流は身体の外に溢れ出した。
次回、第一章最終話です。